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火夏星 8
気にしてくれてたのか…。
あんな現場に鉢合わせたら、そりゃ気になるものか。
「…どの電車?」
「…へ?」
間抜けな声が出てしまった。
「朝。乗ってる電車」
「一本か二本早いやつ…」
「俺も電車、そっちで乗るわ。新城さん一人だとまだ危ないかもよ?」
「でも、それは申し訳ないし…」
「申し訳なく無い。俺がそうしたいだけ」
「電車、本数多いからタイミング合わないかもだし」
「じゃあ待ち合わせればいい」
…待ち合わせるんですか?
それはいよいよ、周りの視線も気になるんですけど。
「…なんかそれ、付き合ってないのに付き合ってるみたいじゃん?」
そこまで言えば彼は提案を辞めると思った。
桐生くんには申し訳ないけど、付き合ってもないのにやたらジロジロ見られるのもしんどい。
彼は自分がどれだけ目立つのか自覚があるのだろうか?
「……じゃあ付き合う?」