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火夏星 4
「だから、ここはこの公式を使って…」
「なんだ、それだけの話だったのか。佐藤の話が眠過ぎて全然わかんなかったよ」
「…α波出てるって噂だしね」
「完璧出てるだろ」
思いの外、テスト勉強は順調に進んでいた。
この人、ちゃんと勉強するときはするんだな…。
そもそもこの高校、中学でそこそこ成績取れてないと入れないところだし。
派手な風貌とは裏腹に、案外真面目に勉強する姿に亜樹は単純に驚いていた。
時々、お互いの肘が触れてしまっている。でも桐生くんは気にしていないようだった。
一方亜樹は落ち着かない。
何度も肘が触れているけど、彼に悪気が無いのはわかるし、だからといって嫌そうでもなく。
何よりも亜樹自身が嫌だと感じない事に驚いていた。
「…新城さん?」
そわそわして、上の空になってしまっていたらしい。
気付けば桐生くんの整った顔が至近距離にあった。