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火夏星 3
「ちょっと待ってて。これ借りてくる」
スタスタと貸出カウンターに向かい、あっという間に亜樹のもとに戻って来た。
「お待たせ。どこ座る?」
図書室の中を見渡すと、窓側の一角のテーブルが空いていた。
「あそこで、どう?」
亜樹の提案に彼は「ん」とだけ言うと窓側の席に向かい合って座った。
しかしすぐに立ち上がると、亜樹の隣に座った。
「桐生くん?」
「このテーブル大きいから教えて貰いづらいじゃん?」
隣に座るのは…別にいいけど。
再び亜樹が周りを見渡すと隣り合って座っているのは明らかにカップルとわかる人達だけだった。
なんだか落ち着かない。
これはもうさっさとテスト勉強を始めてしまった方がいい気がして勉強道具をテーブルに広げる。
「んーと…数学?」
「そう、数学」
「私、数学得意じゃないんだけど…」
「大丈夫、たぶん俺より得意だと思う」
「そうだといいんだけど…」