29/168
火夏星 2
梨沙と梓と別れ、荷物を持って図書室に向かう。
松田さん達が校庭を門に向かって歩いているのが窓から見えて、亜樹はホッとした。
良かった。
ごちゃごちゃ言われるのは好きではない。
図書室に入ると、彼は本棚の前で何やら熱心に読んでいた。
「…桐生くん?」
「新城さん!」
彼の大きな声に慌てる。
「桐生くん、ここ図書室だから…声小さめで!」
「あ、ごめん…」
彼も小声になる。囁くような声だ。
「何読んでたの?」
彼の手にある本を覗き込む。
見ると、魚の釣り方のコツのような内容が事細かに書かれたものだった。
「釣り…の本?」
「これ…借りようかな」
本の貸し出しは1週間。
期末テストは1週間後。
テストまでの間、釣りの本を読むらしい。