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ほろ酔いの夜 6
駅の改札を抜けると愛しい人の姿があった。
「迎えに来てくれたの?」
「酔っ払って可愛くなった奥さんを一人夜道を歩かせる夫はいないでしょ」
言うなり肩を抱かれ、歩き始める。
「今日は職場の人みんないたんか?」
「志賀さんと西村さんだけだよ」
「…その中に男もいたのか?」
「いないよ。おねえさま2人に囲まれて飲んでただけだから」
抱かれた肩に力が込められるのを感じて苦笑いする。
「なるべく、男がいるところでは飲まないでほしい」
「そうしょっちゅう飲んでるわけじゃないし。忘年会とか歓送迎会は断るの無理だよ?」
「それは…わかった、妥協するしかないな」
忘年会や歓送迎会ですらちょっと嫌だという彼は、ちょっと独占欲が強めだと思う。
「ねえ優輝」
「ん?」
「私と再会する前…結構図書館通ってたのね?」
「えっ?何で?」
「私の名前をスタッフに尋ねてたんでしょ?」
「………何故それを」
「今日一緒に飲んでた西村さん、優輝に私の名前聞かれてたんだって」