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記憶 5
覚悟を決めて電話番号を押す。
この携帯電話の番号も見覚えがあるような…気がするのは気のせいだ。きっと。
無機質な呼び出し音が3回鳴る。
この上無く緊張感があるのも気のせいだ。そう、気のせい。
「はい」男性の声がする。懐かしいあの声に似てると思ってしまうのは、今朝見た夢のせいだ。
「県立図書館の新城と申します。桐生優輝さんの携帯電話でよろしいでしょうか」
通常なら『県立図書館の者です』としか言わない。
名乗ってしまったのは、ついうっかりしていたからだ。
「…はい」
特に私の名字に興味は無いらしい。
「貸出予約されていた本が用意出来ましたので、ご都合の良い時にお越しください」
「はい。ありがとうございます」
「では失礼します」
電話を切った。
…うん。特に異常無し。
業務完了。




