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葉桜 3
電車のドア近くに桐生くんと並んで立つ。
「……こわ…かった…。ありがとう…ほんとに…」
涙が出てくる。
彼は黙ったままだ。
後からどんどん涙が出てくる。
亜樹は顔を覆った。
桐生は亜樹を庇うように亜樹の前に立って頭を撫でた。
しばらく泣いていた亜樹は彼の胸で泣いているように見える位置にいるという事実にやっと気付いた。
…ん?
私、桐生くんの胸で泣いてたの…?
顔を上げると至近距離に桐生くんの整った顔。
まだ心配そうに亜樹を見ている。
我に返った亜樹は咄嗟に体を後ろに離した。
と同時に、ドアの窓に頭をぶつける。
鈍い音がした。
「いったあ…」
「なあ、本当に大丈夫…?」