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嫉妬 6
「亜樹、いる?」
新井くんだ。
教室まで来るなんて、珍しい。
「新井くん?教室まで来るとか珍しいね。どした?」
先日優輝から「俺以外名前呼び禁止令」が発令された為、名字で良樹を呼んだ。
「え?名字で呼ばれるとか落ち着かないんだけど」
大袈裟にリアクションをする新井くん。
目立つから大人しくして頂きたい。
「別にいいでしょ。で、何か用事?」
「そうだ。化学の教科書貸して?」
「今日うちのクラス化学無いの」
「まじか」
またしても大袈裟にリアクションを取る。
もうちょっと大人しく出来ないものか。
「ごめんけど、他当たって?」
「残念。他のクラス、どこだったら化学あるか知ってる?」
意味無くにやっとする新井くん。
やっぱりちょっと苦手だ。
「ちょっとわかんない。早めに他行かないと借りられないんじゃない?」
早く去って頂きたい。
「しょうがないなあ。今日のところは、他のヤツに借りるとするか」
上からな言い方が少々苛つく。




