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葉桜 2
「あれー?おはよう」
昨日のドアの人…桐生くんが亜樹に声を掛けた。
怯えた表情の亜樹の手首を掴んで強引に違う並び列に早足で連れて行く。
亜樹が並んでいた列からはだいぶ離れた列に一緒に並ぶ。
彼が亜樹の手を離した。
「…大丈夫?」
亜樹の顔はまだ強張っていた。
顔を上げると桐生くんが心配そうに亜樹の顔をのぞきこんでいた。
「あ…ありがとう…。もう…大丈夫…たぶん…」
体の震えが止まらない。
「…電車…来たけど…。乗れる…?」
「うん…乗る…」
動かない足を何とか動かして電車に乗った。