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死した竜の物語  作者: 獅子貫 達磨
第四章 帝国を目指して
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37話 報酬の選定

不定期な更新ですみません。

もうしばらくこの形式が続きます。

地面に横たわって再生していると、ガコンと周囲で音が鳴った。

まだ敵が出てくるのか?と思って辺りを見渡してみると俺の周囲の地面が徐々に地面から尖る様に盛り上がる。

正確には俺を中心として円状の範囲で点々と地面が盛り上がるって言うのが正しいのか?


辺りを警戒したが、時期にそれぞれの盛り上がった地面が箱の形を取った事で階層主の討伐報酬だってわかった。

なんだよ、脅かすなよ。


にしても……見渡すと俺を中心に7つも箱が出てる。

何でこんなに多いんだ?

こんなに貰えるのかな?


『最初に俺様が言っただろ。

 この階層の討伐報酬は選べるって。

 それぞれの箱に文字が書いてあるだろ。

 それに中に入ってるものの説明がある。

 それを読んで一つ選べって事だな。』


ああ、そう言えばそんな事を最初に言ってたような気がする。

それじゃ、それぞれの内容を見ていくか。

えっと……。


取り敢えず適当な箱に近付いてみる。

成程、ヴァゴスの言う通り箱の表面に文字が彫られている。

知ってる言語と知らない言語で。

俺の知ってる言語の全てで書かれてるから、多分知らない言語は他のほぼ全部の言語を網羅してるんだろうな。


さてと、知ってるヒュマス共通語を読んでみると≪魔金の竜杖カオスメタル・ドラゴンスタッフ≫と彫られている。

ああ、さっきの術師が持ってた杖か。

強かったよな。

実際に術師がかなり手ごわかったのもあの杖のせいっぽいし。


『だろうな。

 最後にお前が耐魔結界を使わせたのに雷槍の術式を使っただろ?

 あれも恐らくは杖の『術式保持』ってやつの効果だろう。

 多分だが詠唱中の術式を途中で一旦保存できる…か若しくはあらかじめ術式を保存しておき好きなタイミングで発動できるか、のどっちかだろうな。』


成程ね。

術師に対しては杖の効果を知らないと術後の硬直か詠唱中を狙いたくなる。

けど、逆にそこを狙われた時にカウンターが出来るって事か。

確かに普段は剣士に守って貰う必要のある隙が多い術師からしたら、緊急避難としてあると嬉しい効果だな。

んじゃこの杖強そうだったし、これがいいのかな?


『お前な、せめて他の報酬を見て決めてもいいだろ?

 他に有用な物出てるかもしれないんだからよ。

 それに考えてみろよ。

 確かに効果の高い杖なのは間違いない。

 ないが、お前がその有用な杖を手に入れてどうする?

 お前はまだ簡単な術式すらに十全に発動できずに魔術を使いこなすなんて到底言えない状況なんだぜ?

 そんな状態でこんな杖持っても宝の持ち腐れってもんだ。』


ぬぅ……。

いや、将来必要になるかもしれないじゃん。


『かもな。

 ただ、直近の戦闘はもう間近だぞ。

 そんな悠長な事言ってる暇はねぇな。

 手に入ってすぐに使えそうなものにした方がいいだろ。

 特にお前は人間と違って道具を使う事を前提とした戦闘スタイルじゃねぇんだからよ。』


分かったよ。

まぁ、急に杖持って戦うのは……いや、別にヴァゴスが身体に固定してくれてもいいんだし魔領法でも持てるんじゃないか?

まぁ、ヴァゴスの言う通り取り敢えず残りの箱を順番に見てからでも遅くは無いか……。

どうにも敵対してその効果を肌身で感じてるからか杖に引っ張られる。


さて、他には何があるかなっと。

杖の入った箱から右回りで順々に名称を見ていく。


1,≪魔金の竜杖カオスメタル・ドラゴンスタッフ

2,≪永劫鉱(ノスフェラティウム)のインゴット≫

3,≪不死王の聖遺骨≫

4,≪決壊魔石:詳細鑑定≫

5,≪加護:血なるレフソ=ウェルの酸加護≫

6,≪真祖吸血鬼トゥルー・ヴァンパイアの血液≫

7,≪魔剣ヴァムダルピン≫


以上の7つだ。

基本的には素材とか武器とかだな。

無形の報酬は加護の1つだけか……。

決壊魔石ってなんだ?


『決壊魔石は中に術式の込められた魔石の事だ。

 魔石を砕くことで中の術式が発動する仕組みになってる。

 普通なら中の術式を見て反復させりゃ自分でも使えるが、迷宮で手に入るものは中の術式が見れない…と言うか迷宮産の決壊魔石は基本的に効果が独特で術式での再現がほぼ無理な物が多い。

 要するに実質的には完全に使い切りの幻想遺物(アーティファクト)だ。

 内容は詳細鑑定……恐らくは俺の持つ鑑定の能力の上位互換だろうが、問題はどこまで見れるか…だな。

 基本的に出てくる報酬はそこまで価値に差が激しくない事を考えれば使い切りのデメリットの代わりにそこそこ詳細な情報は見れそうだが。』


ふむ、この中から一つか…。

確か加護ってレアなんだっけ?


『ま、そうだな。

 迷宮の階層主の攻略報酬や戦闘系以外の迷宮でも基本的に報酬の最上位が加護だ。

 確かに誰かに取られるものでもないし、ある意味一番順当に自分を強化できると言えるからな。』


ふーむ、じゃあ加護がいい気もするけど。

……ヴァゴス的にはどれがいいとかあるの?


『正直なところを言えば加護か幻想遺物(アーティファクト)だな。

 素材系は魔道具の作成や錬金に用いるが俺様にもお前にも必要ねぇ。

 どうせ互いに加工する技術なんざ持ち合わせてねぇんだからな。

 ただ、武器系の幻想遺物(アーティファクト)も手に入ったところでお前が使いこなせる訳じゃ無ねぇしな。

 となると消去法的には加護が妥当なんじゃねぇか。

 ま、詳細鑑定も気になるけどよ。』


うーん、何が見れるかなんだよな……。

これで全能力の詳細が見れるなら俺かヴァゴスに使って互いに未知な能力の細かい情報を見るんだけど。


『だな。

 ……ただ名前が上級鑑定、上位鑑定、高級鑑定とかの位階を示す訳じゃなく詳細ってのがやや気にかかる。

 細かく見れるんだろうが何となく範囲が限定されちまうような気もする。』


難しい所だな。

んー、じゃあ取り敢えず加護でいいか。

いいかってのもなんか贅沢な感じだけど。


『ま、無難な選択だな。』


加護の書かれた箱の前に行き、前足でポンと叩くと箱の蓋が独りでに開き始める。

箱が開き切った状態で中を覗くと、箱から冷たい風が吹き身体に纏わりつく。

以前に怒れる自然の大遺跡の10階層で初めてデカい狼を倒した時の箱と一緒だな。

あの時の風は暖かかったけど。


『さて、どんな効果かな。

 ま、名前的に何となく分かるが。』


まぁ、確かにね。

ヴァゴスの眼を借りて自分に鑑定を発動させる。


▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

名前:グリムル

種族:グロリア・アローサルオリジン

能力:

『吸血』

『闇なる復活』

『怪力』

『不老』

『猛毒の溶血』

『四尾なる命』

『脳髄再生』

『隠遁存在』

『酸耐性』

加護:

『血なるレフソ=ウェルの溶毒加護』

『復活なるレフソ=ウェルの貯加護』

『龍なるエンディガーの脳加護』

『謀なるメルロイの隠加護』

『自然なるムーマーの往加護』

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲


加護が追加されてる……かと思ったがそんな事は無かった。

あれ?と思ったけどよく見ると1つの加護が前に見た時と効果が変わってる。

そして能力も『酸耐性』が追加はされて更に一部変わってるな。

確か前に鑑定した時は『猛毒血液』って能力だったはずだ。

それが『猛毒の溶血』に変わってる。

加護も『血なるレフソ=ウェルの毒加護』が『血なるレフソ=ウェルの溶毒加護』に。

加護と能力が混じり合ったって事か?


『まぁ、やや想定外だが概ね想定通りだな。

 血で酸とくれば何となく察しはつくってもんだ。

 恐らく普通なら『酸化血液』とかだったんだろうよ。

 元からお前が同じ死神であるレフソ=ウェルの血系統の加護があったからそれが混じったんだろうな。

 『酸耐性』は単に耐性がねぇと人間の場合は自分の身体が焼け爛れて死ぬからだろ。

 多分元からセットで手に入る様に成ってるんだろうぜ。』


えっと、これヴァゴスの身体も酸性を帯びたって事?毒だけじゃなくて。


『多分そうじゃねぇか?

 ま、俺様は特に変化はねぇよ。

 っと、物は試しだ。』


ヴァゴスはそう言うと俺の前足から液体を覗かせ、一滴地面へと飛ばす。

飛んだ一滴は地面と接触するやジュッっと軽い音を立てて泡立つ。

時期に飛ばした血液は蒸発して爛れた感じになった地面だけが残った。

成程こんな感じか。


『今飛ばしたのは俺の体液なんだがどうやら加護からもお前の血液って認定らしいな。

 ま、使い勝手のいい能力だ。

 敵からすりゃお前の外皮である俺様を斬ってダメージを与えたら武器が使い物にならなくなるしな。

 しかも身体にかかったりしたらそれだけで大事だ。』


言われてみればそうだな。

ヴァゴスは自分で血液生成して飛ばせる訳だし攻防一体で良い能力か。


『ん?』


新しい能力の確認をしてるとヴァゴスが疑念の籠った声を上げる。

どうかした?


『いや、報酬を取得したはずなんだが。

 辺りの箱が消えねぇ…どころかいつの間にか加護の箱も元に戻ってるぞ。』


え?

言われてそっちに眼をやるとさっき確かに開いてた箱が元に戻ってる。

んん?

えっと、どうしよう。


『うーむ。

 お前が言ったように複数貰えるのか……?

 んな事はないはずだが。』


貰えるならいいんじゃない?

次取るとしたら加護は重複しても意味なさそうだし次候補だった決壊魔石でいいかな。


『あー、まぁ、そうだな……。』


何か納得いかなさそうな声でヴァゴスが答える。

≪決壊魔石:詳細鑑定≫と書かれた箱の前まで移動すして、さっきと同じように箱に前足で箱を叩く……がさっきと違って箱の蓋が動く気配はない。

む?

軽く押すけど反応なし。

ならばと魔領法で力を籠めたがビクともしない…。


うーん、ダメだ。

開かないよコレ。


『二個目の報酬が貰える訳じゃねぇのか?

 だが消えないだけならともかく丁寧に加護まで復活してるってのはな……。

 ああ、いや待てよ。』


何かを思いついたのか、さっきと同じ様に俺の前足からヴァゴスが身体たいえきを伸ばす。

そして俺がやったのと同じように箱へと触れた。

するとさっきまで俺がどれだけ押してもビクともしなかった蓋が嘘のように独りでにスルッと開き始める。

何でだよ。


『あー、成程な。

 単純な話だ。

 ずっと一緒だから気が付かなかったが俺様とお前はあくまで別人格だ。

 故に迷宮からすりゃ2匹って認識されてんだろうよ。

 だから報酬も2つ出た訳だ。

 そして1つ報酬を受け取ったお前には開ける権利が無く、俺様に権利が残ってたって話だろうぜ。』


ああ、成程ね。

そう言う事か……分かりにくいな。

いや、普通の人間同士だと直ぐに分かる事か。

互いに好きに箱を触るだろうしな。

俺達だとヴァゴスが俺の体内に居るから分かり辛かったってだけの話か。


開き切った箱の底を覗き込むと人間の掌ほどの大きさの赤く濁った石が転がっていた。

期せずして欲しかった報酬が2つとも手に入ったのか。

僥倖だったな。


いつもお読みいただきありがとうございます。

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