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死した竜の物語  作者: 獅子貫 達磨
第四章 帝国を目指して
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29話 近道の方法

先週もとぎれとぎれの更新で申し訳ありません。

今週も毎日更新は厳しいです。

可能な限り更新いたしますので今後ともよろしくお願いいたします。

何にしても帝国に行くしかない。

俺とヴァゴスの結論はそう出た。

まぁ、最初とあまり変わらないな。

元から何かしらプラスで情報が出れば…って感じだから予定通りと言えば予定通りだが。


「さて、待たせたな。

 そっちの情報には満足だ。」


ヴァゴスが俺の喉を動かしてそう返事を返した。

えっと、次は向こうに情報を渡すんだったっけ?


そう思ってテーブルに視線を戻すといつの間にか追加の料理が来ていた。

気が付かなかったな。


「そっちは皇帝牛の肝臓煮込みよ。

 私は結構好きだけどちょっと独特の味がするから吸血鬼でも苦手な人はいるわ。

 反対の皿のは猛血赤汁って言われる血のスープよ。

 普通の人でも食べれるように結構辛めにして血生臭さを消してるから辛いのが苦手なら注意してね。

 中央のはさっきとは少し味の違うブラッディソーセージよ。

 肉の種類が違ってシーシープの肉と血を使ってるらしいわ。

 私達はあまり食べないから好きなだけ食べるといいわよ。」


料理に気が付くと同時に正面のイザヨイがそう声をかけてきた。

やったぜ。

旨そうだ。

それじゃ、遠慮なく貰おうかな……。


掴むように前足を皿に伸ばす。

そのまま前足の近くで魔領法を展開し掴んだように見せかけた。


「じゃあ、食べてからでいいから教えてね。

 改めて言うと貴方たちからする懐かしい匂いの元に心当たりがあるなら教えて欲しいわ。

 心当たりがないなら貴方たちの出自を教えて欲しいかしら。

 もちろん、問題が無ければ、だけど。」


うーん、出自か。

ここで俺の経緯を話すのであれば帝国の事を話さずに居るのは難しいよな。

ま、ヴァゴスの経歴は何を話したら拙いのか分からないし俺は黙ってよう。


おっ、この料理…肝臓煮込みだったか?旨いな…。


そんな事を考えてるとイザヨイの隣に座ってたアカツキが声をかけてきた。


「匂いはねー、身体の外からは2人分、中からは1人分匂ってくるよ!

 えーっと、外側に居るのはどっちなの?」


うぐ、そんな事まで分かるのか。

あー、まぁ、既にばれてる以上言っても問題は無いのかな?


『まぁ、そうだろうな。

 何にせよ下手な事を言われちゃかなわねぇ。

 悪いが引き続き俺が話すぜ?』


分かったよ。

俺は飯食って聞いておく。


『いや、食われちゃ話せないんだが…。

 ま、知ってる匂いって事は十中八九ばれてるからいいか…。』


ヴァゴスはそう言うと俺の頭から新しく触手を突き出した。

グネグネと動くとその触手は暫くすると横に広がって横に裂ける。

最初に俺と話した時と一緒だな。

口だ。


あー、まぁ俺は食ってるからな。

確かに話す様に口が要るわな。

バレてるってのは身体の元がショゴス細胞で変異が効くかもって事かな?

確かに身体が自由に動くって事は隠しておけばいいアドバンテージだろう。

ばれても優位な事には違いないけど。


「あ、あ、んん。

 よし、聞こえてるな?

 グリムルは飯に夢中だから引き続き俺様が話すぜ。

 まずそっちの問いに答えるなら外側に居るのが俺様だ。

 んで中に居るのがグリムルだ。

 つまり俺様からは2種類の匂いがするって事だな?」


「うん、そうだよー。」


「最初、誰の匂いがするって言ってた?」


「たちにぃとロムおじちゃん!」


だから誰だよ。

愛称で言うな。

…いや、フルネームを言われても分からないけどさ。


「だからアカツキ、それじゃ分からないでしょって言ったじゃない。

 ……一人はゼンカ・ソーデストロ。

 もう一人はウタレフソン・ジヨンド・クロムウェルよ。

 心当たりあるかしら?」


あー、何処かで聞いたな。

どこだっけ?


『俺の触媒と核の材料だ。

 成程、そんな名前だったのか。』


ああ、そうだった。

確か『ウタレフソン・J・C』と『ゼンカ・S』だったか。


『ああ。

 俺様も器の元になった瓶のラベルでしか知らなかったからな。』


「それだったら知ってるぜ。

 俺様の器の材料になった奴らだ。

 ショゴス細胞と神祖吸血鬼ディミティ・ヴァンパイアだろ?」


ヴァゴスが俺の頭の上の口でそう返すと、イザヨイが首を傾げる。


「器…?」


「ああ、俺様は元は錬金で作られた生物でね。

 その素体にその二つの細胞が使われている。

 材料の元になった瓶のラベルにそう書いてあった。」


「……成程ね。

 因みに問題なければ答えて欲しいんだけど、貴方が作られた場所はどこ?」


一瞬ヴァゴスは迷ってたみたいだがイザヨイの問いに口を開く。


「……エレガンティアだ。」


「そう…。

 エレガンティアね…。」


「悪いが実験をしたやつらはもう死んでるぜ?

 俺様が作られたのは300年近くも前の話だ。」


「いえ、それは気にしてないわ。

 ありがとう。

 貴方の言う通りよ。

 ゼンカがショゴス細胞。

 クロムウェルが神祖吸血鬼ディミティ・ヴァンパイアね。

 そう、彼らの身体が貴方の材料として使われてたのね。」


頷きながらイザヨイがそう言った。


「因みにグリムルについても答えておいてやる。

 さっきの問いで言うなら中からは1人…つまり、グリムルからも1人分の匂いがするんだよな?

 どっちの匂いがするんだ?」


「ロムおじちゃん…クロムウェルおじちゃんだよ!

 まぁ、ヴァゴス君に比べるとすごく薄いけど!」


何度か注意されたからかアカツキが言い直しながらも元気よく答える。

神祖吸血鬼ディミティ・ヴァンパイアの方か…。

俺から。

何でだ?


「ふむ、そっちは悪いが分からねぇ。

 グリムルに聞いても特に神祖吸血鬼ディミティ・ヴァンパイアと関わった記憶はねぇみてぇだしな。

 ま、俺様と混じったからかもしれねぇが。」


「うーん、混じった感じじゃないかな。

 混じったならたちにぃの匂いもするはずだし。」


まぁ、だろうな。

確かにヴァゴスは普段は俺の血管の中を液体として巡ってるから匂いが混じっても不思議じゃない。

と言うか寧ろ自然だ。

そんなレベルで混じってるのに嗅ぎ分けられる嗅覚の方がどうにかしてる。


ただ、逆にそのレベルで高度な嗅覚を持ってる奴が俺自身に交じってるって言うならそうなんだろう。

全く身に覚えが無いけど。


「……そう。

 まぁ、そっちは何となく分かるわ。

 グリムルさんってえーっと…今は何て言うんだっけ?

 因子保持者…じゃなくて、対象者?

 えーっと、……ああ、呪いの祝福だったわね。

 呪いの祝福持ちでしょ?

 どちらかと言うとゼンカさんの匂いがする方が不思議だったから。」


うん?

実際に呪いの祝福は持ってるがそれと俺から神祖吸血鬼ディミティ・ヴァンパイアの匂いがする事に何の関係があるんだ?


「いいわ。

 経緯が分かったし。

 納得できた。

 これで特に私達から聞きたい事は無いわ。

 そちらも聞きたい事は無い?」


俺が混乱してるとイザヨイがそう告げた。

混乱してる俺を置いてヴァゴスがそれに対して口を開く。


「ちょい待ち。

 さっきの言葉はどういう意味だ?

 呪いの祝福持ってる事と神祖吸血鬼ディミティ・ヴァンパイアはどう関係がある?」


ヴァゴスがそう聞くとイザヨイはしまったといった表情を一瞬浮かべた後にバツが悪そうな顔をする。


「あー…。

 ごめんなさい。

 それは私の口からは言えないわ。

 クロムウェルさんに会う機会があったら直接聞いて。」


ぬう。

気になる…。


「……分かった。

 じゃあ次だ。

 さっきその二人について聞いたときに同僚と恩師って言ってたな。

 恩師ってのは神祖吸血鬼ディミティ・ヴァンパイアの方か?」


「そうよ。」


じゃあ、ゼンカ・ソーデストロが同僚か。


「じゃあ、もう一つ。

 話の内容は変わってそっちのアカツキに質問だ。

 イザヨイが返ってくる直前に言ってたインジェノス帝国へ早く行く方法。

 それについて聞きたい。

 途中だったからな。」


アカツキのヴァゴスが呼びつつ俺がそっちに視線をやるとピクッと反応をする。


「ああ。そうだった!

 んーと、正確にはインジェノス帝国にって言うよりプリマイブ大陸に行く方法なんだけどね。

 それでもいい?」


「ああ、構わねぇよ。」


「じゃあ、簡単だよ!

 迷宮≪永劫なる種族の眠る墓ノスフェラト・グレイブ≫の100階層にある転移陣から101階層に行けばいいよ!

 その後、行きたい大陸の100階層に戻るの!

 あの迷宮は全部の大陸にあって100階層以降は全部同じ場所に通じてるの!

 だから100階層まで行っちゃえばどの大陸にも簡単に行けるんだよ!

 便利だよね!」


永劫なる種族の眠る墓ノスフェラト・グレイブ

有名な戦闘迷宮だ。

主に極悪の難易度的(・・・・・・・)な意味合いで。

階級は最高の一級戦闘迷宮。

一級の中でも最高峰と有名。

エヴァーンの愛剣もここの60階層で入手したものだった筈だ。

その100階層か。


……成程な。

あまりその情報が出回って無い訳だ。

一級戦闘迷宮の100階層なんざ行ける奴の方が珍しい。

同時に合点もいく。

あの迷宮の管理人は死神(レフソ=ウェル)だ。

死神の司る権能は血、復活、次元。

その中の次元が反映された迷宮って考えりゃ納得も良く。

さっきイザヨイが戻って来る前に空間魔術って言ったヴァゴスに、惜しい!って返したのもそれが理由か。

そりゃ、神なら空間術式の距離の制限なんて関係ないわな。


「あの迷宮か……。

 ああ、情報助かった。

 ありがとよ。」


「どういたしまして!」


笑ってそう返すアカツキにやや逡巡しながらヴァゴスが問いかける。


「毎回移動の際に通ってるって言ってたな?

 一級戦闘迷宮の100階層をそんな移動感覚で使ってるって、お前ら二人の位階は何だ?

 …答えたくなければ答えなくていいが。」


そうヴァゴスが尋ねる。

するとイザヨイとアカツキは目を合わせて困ったように首を傾げる。

その後、イザヨイがこちらに向き直って口を開いた。


「同族のよしみで言うけどあまり吹聴しないでね。

 と言っても私達は二人とも厳密にはこっちの位階に当てはまるような感じじゃないんだけど…。

 それでも単純な能力で言うなら始祖吸血鬼オリジン・ヴァンパイア神祖吸血鬼ディミティ・ヴァンパイアの中間と言ったところかしら。」


思ってたよりかなり上の位階だった。


いつもお読みいただきありがとうございます。

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