表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死した竜の物語  作者: 獅子貫 達磨
第四章 帝国を目指して
61/104

6話 帆船奪取

あけましておめでとうございます。

バシャン。


船の甲板に出てきた人間を魔領法で海に吹き飛ばす。

ふう、多分これで最後かな?


海底を歩いて渡って船の真下に来たら重りを外し、魔領法で一気に甲板まで上昇した。

そのまま、船のど真ん中に着地すると周りに数人の人間。

俺が攻撃しようとするよりも早く、目の前にいた子供がこっちを振り返って、その近くにいた別の人間が大声で警戒を周りに伝えた。

思ったより反応が早いな。

戦闘に手慣れてる印象を受ける。

いや、戦闘と言うか魔獣に襲われる事にかな?


警戒の叫びの後に鐘の音が響いた。

多分タイミング的にあの鐘の音は陸の連中に危険を知らせるものだろう。

多分陸の連中が異変に気が付いてこっちに来るより速く船の中は制圧できるだろうけど、気分的にちょっと慌てる。

魔領法の腕を伸ばして鐘の響きを止めて鳴らしてた奴を掴んで放り投げようとする。

が、焦ったのか力の入れ具合を間違って鐘を鳴らしてた奴の頭を握り潰してしまった。

殺すと後始末に時間取られるから適当に船外に追い出せって話だったんだよね。

いくらどんな環境でもある程度平気だと言っても腐った死体の近くで航海はしたく無いからな。

ま、一人位殺してしまってもヴァゴスが後始末してくれるだろ。


そのまま、船内で襲い掛かってくる奴を片っ端から殴り飛ばして船外へ叩き落す。

幸い騒ぎを聞きつけたのか船の甲板に居なかった奴らも船内から続々と出てくるのでそいつらを次々に吹っ飛ばす。

なんかちょっとした遊びみたいで楽しいな。

こう、丁度いいタイミングでリズムに合わせてポンポンと吹き飛ばす感じが。


そうこうしてると船内から誰も出てこなくなって甲板が静かになった。

今いる甲板自体がゆらゆらと波に揺られて面白い感じがするな。

今まで船自体乗ったことないから不思議な気分だ。

いまだに変な匂い…ヴァゴス曰く潮の香りだっけ?はするけど段々と慣れて、意識しなと気にならない程度になって来た。

さて、じゃあどうしようかな。


『さっさと船を動かすぞ。

 さっきの鐘の音自体は海岸まで響いただろ。

 人間が来ないとも限らない。』


はいよ……。

って船自体どうやって動かすんだ?

そもそも俺は船がどうやって動いてるのか知らないぞ?

馬車みたいに何かに引っ張られてるわけじゃなさそうだし。


『船、今回のこの船なら帆船タイプだ。

 お前の言う様に海魔獣に船を曳かせるタイプの物も無い訳じゃないが極めてレアだぜ。

 そもそも船を曳ける程の力を持った魔獣を人間が手懐けるのは至難の業だ。

 今回の帆船タイプであれば風の力で船を進めるのさ。

 一番一般的な船の形だ。

 あー、取り敢えずさっきの鐘の鳴ってた場所まで行ってくれ。』


風の力ね。

言われてる意味は良く分からなかったが取り敢えずヴァゴスに言われるままに鐘の場所まで行く。

さっき殺したヒュマスの死体が地面に倒れこんでる。

頭部がひしゃげて地面に血と脳液がぶちまけられてるな。

近付くと徐に俺の前足の鱗を突き破って赤い液体状のヴァゴスが溢れる様に出てくる。

一定以上の量が出てきたらみるみるうちに液体から獣の口の形に変化する。

そして、その口を大きく開いて目の前の人間の口を丸呑みにする。

もう道中で見慣れたヴァゴスの捕食だな。

あっさりと死体を飲み込んだら、また元の形に変化してそのまま俺の体内へと戻っていく。

んで?食うために移動させたのか?


『ああ?いや違うぜ。

 まぁ、それも別に間違っちゃいねぇけどな。

 美味かったぜ。

 やっぱ、人間も味は悪くねぇな。

 女の方が肉が柔らかくていいが男も食いがいはある。

 ま、主要な目的はそうじゃねぇ。

 今回は食う事よりも食った人間の知識の方が欲しくてな。

 さてさて……ちっ、お前が頭を潰すから脳にダメージがあるな。

 知識が断片的だぜ。

 まぁ、必要な情報は残ってるか。』


脳を食ったら対象の知識まで見れるのか?

それは知らなかったな。

まぁ、今まで道中で食った野生の魔獣からだと知識は習得しても大したことないか。

一緒に行動して人間を食ったのは今回が初めてだもんな。


『ああ、言ってなかったか?

 ま、あくまで知識と対象の記憶だけだけどな。』


十分じゃないか?


『んー、まぁ確かに便利なんだけどな。

 知ってる事と出来るって事は別って事だ。

 一流の剣士を食っても俺様がその剣士の使ってた剣技を十全に再現出来る訳じゃねぇ。

 術式とかだと習得できるからやっぱ便利なもんは便利だけどな。』


それでも十分強いと思うけどな。

で、今回は何の情報を取りたかったんだ?


『ああ、おおよその帆船の動かし方は分かってるんだけどな。

 細かい機材のある場所や船の癖を把握したくて食った。

 お陰で大体は把握できたぜ。』


そりゃよかった。

と言うか今更だけど俺らだけで船を動かせるのか?

人間ってこの船を動かすのに結構な大人数で動かしてるっぽいけど。


『お前の魔領法は何のためにあるんだ?

 頭を使えよ。』


ふと疑問に思ったら呆れられた様にそう言われた。

あ、それもそうか。

なるほど、言われりゃその通りだ。


『お前の魔領法の有効距離なら船全体を動かずにカバーできるだろ。

 まずは船の後方にある錨を上げろ。

 そしてマストにある帆を張れ。』


えーっと、錨ってなんだ?

マスト?帆?


『あー、そうかそもそもそれが何かを知らねぇのか。

 面倒くせぇな。』


怠そうなヴァゴスの声の後に錨や帆船に関するイメージが送られてきた。

ぐっ。

イメージの直接送信は負荷がかかるって言っただろ。

送る前に一言言ってくれよ。


『別にそんな程度で不死者は大したダメージにならねぇよ。

 痛みに慣れろ。

 昔の偉い吸血鬼が言ってたぜ?

 痛みは生者の証だ。我々死者に痛みは必要ない、ってな。』


痛みに慣れろ、ね。

いつかはな。


ま、取り敢えず錨とか帆船の仕組みはざっくり分かった。

取り掛かるか。


『急げよ。

 陸から手助けが来ても面倒だ。

 流石に慣れないお前でも陸から小舟で来る増援よりかは早く船を動かせるって信じてるからな。』


始めて船を動かす奴相手に随分と無理を言ってくれるな。

伸ばした魔領法の腕で力任せに海底から錨を引き抜く。

そのまま、マスト上部の紐を引いて帆を張る。

バサァと紐から解き放たれた布が広がり風を受けて音を立てる。

同時に船が僅かに傾いて進み始めるのを体感できる。

存外簡単だな。


『後は舵をきれば良いか……。

 っ!?

 おい!なんか来んぞ!

 陸側の方だ!』


え?

ヴァゴスの声で反射的に陸側に魔領法で壁を作る。

その数瞬後に何かが激突し爆発。

一気に甲板が明るくなった。

取り敢えず激突して爆発した魔領法の壁に穴が開いたので急いで埋める。


『上だ。

 魔領法を絶やすなよ。』


声に釣られて上空を見上げると船の横の海上、マスト付近の高さに人型の奴が浮いている。

人間か?


『ああ、人間みたいだな。

 飛行術式とは珍しい。

 いや、海上だと落ちた時の為に覚えておいて損はねぇのか?

 取り敢えず視てみろ。』


ヴァゴスがそう言って外の眼で鑑定を発動させる。


▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

名前:アドラルク・マッシュバーン

種族:ハーフ(スピリタム・エルフ、ヒュマス・ヒュマス)

能力:

『魔視眼』

『魔力徴収』

『破魔』

『怪力』

『激昂』

加護:

『神秘なるエンディガーの魔加護』

『切断なるノーテットの斬加護』

『怪力なるグアカリブの撃加護』

『憤怒なるムーマーの激加護』

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲


そういやまだ迷彩蜥蜴フォーカムスリザードの格好でヴァゴスにすっぽりと覆われてる状態だから今見てる眼で鑑定が使えるんだったな。


さて、エルフとヒュマスのハーフね。

確かエルフは魔術が得意な種族だったか?


『ああ、その代わり肉体的にはそこまで強い種族じゃない。

 まぁ、身体の強化術式で普通に並の獣人族ベスティアとかより強くはなるが…。

 それでも強化して肉体で戦うよりは遠くから魔術による攻撃を好む種族だな。

 ただ、ハーフってなるとちと分かんねぇな。

 ハーフは珍しい。』


ヴァゴスが補足を入れてくれる。

ハーフは珍しいんだな。


「さてさて、鐘が鳴ったから急いできてみりゃこりゃどういう状況だ?

 ん?

 おいおい、まさか金をかけて買った奴隷も船員も全員やられたってのか?

 迷彩蜥蜴フォーカムスリザードごときに?

 ……いや迷彩蜥蜴フォーカムスリザードにしちゃでけぇな。

 特殊変異個体か?」


上空から人間の男の声が聞こえてくる。

む、やっぱりこの船の船員だったか。

鐘を鳴らさせるんじゃなかったな。


「ったく、手間かけさせんじゃねぇよっ!」


男がそう言いながら手を振るとさっきと同じように火球がこちらに飛来する。

詠唱無しかよ!

ただ、さっきと同じように魔領法の壁を展開してるから、壁に阻まれて俺に届くより早く爆発する。


「あん?

 無傷だと?

 特殊変異とは言え第四級スライが無傷で防げるレベルの術式じゃねぇんだが。

 いや、爆発のタイミング的に事前に爆発した?

 ……なんだこりゃ?」


む、視た(・・)のか。


『おい、魔視眼持ってるの気が付いてんだろ。

 そのまま魔領法でいいのか?』


ああ、エヴァーンの時は対処を知られていたけど、普通の人間は魔領法をこのレベルで見た事は無いはずだ。

もし見た事あったとしてももっとこじんまりとしたレベルだろ。

なら早々に対処はされない。


それに魔領法は俺の一番の戦闘手段だ。

一々相手が魔視眼持ってるからってそれ抜きで戦う訳にもいかないだろ。


『ま、確かにな。

 魔視眼以外の手段で見られた場合に魔領法を見破られたら混乱することになるな。』


そうだ。

だから俺も魔領法を相手が見える前提で戦って十全に戦えるように訓練する必要があるんだよ。

今回はその練習にちょうどいい。


『そうかよ。

 ただ、気を抜くな。

 人間でも強ぇ奴は居る。

 今の目の前にいる奴も弱くはない。』


それは分かってるさ。


『ま、お前の指示で動いてやる。

 ……危なくならない限りな。

 戦ってみろ。』


ああ。

試しに無言で魔領法の腕を男に向かって飛ばすがあっさりと横にずれて避けられた。

やっぱり見えてるみたいだな。

ま、エヴァーンみたいな化け物と違って見えるからと言って全てに対応出来る訳じゃねぇだろ。


今度は一気に十本近く魔領法の腕を出して男に掴みかかる。

さて、今度は逃げ場はないが?


「斬魔!」


男が叫ぶと同時に腰に下げた剣を抜いて魔領法の腕を二本斬り飛ばす。

む、術式破壊か。


消えた魔領法の腕の場所が空いて、そこからスルッと抜け出す。

成程ね、エヴァーンと一緒で見えれば対処する手段があるのか。


男が魔領法の腕の包囲網から抜け出して飛行しつつこっちに火球を飛ばしてくる。

まぁ、俺は身体の周りを魔領法の膜で半球状に覆ってるからな。

前にエヴァーンがやってきたように耐魔結界とかで根元から無効化されると無意味な布陣だが、初見でこれを見た相手がどの程度対処してくるのかを見極めるにはこれでいい。

これを始めて見たのに正確に対処し得てくるようなら今度からは身体を魔領法で動かして動き回って戦うのが良いって事だからな。


ただ、今のところは男は飛びつつ魔術で牽制してくるだけだな。

しかも爆発する火球を飛ばすだけ。

何か思惑があるのかな?


「成程。大体分かった。」


そう考えていると飛んでいた男がボソッと空でそう呟く声が耳に飛び込んでくる。

同時にニヤッと口角が歪んだ気がする。

そして、さっきまでと同じように此方に腕を向けて魔術を発動させた。

飛来してくるのはさっきまでと同じ火球。


……?

何か策を思いついたんじゃないのか?


今まで通りに魔領法の膜が爆発で破壊される。

直ぐに膜を修復しようとした俺の横で、破壊された部分から火球が侵入し立て続けに二回爆発が響き渡った。


なっ!?


頭と右前足に爆発が着弾して吹き飛ばされる。

ぐっ!

何をされたんだ!?


『連続発動だな。

 最初の火球を撃った後に続けて小さい火球を二連続で撃ったみてぇだ。

 ご丁寧にお前から見て最初の火球の陰に隠れて死角になるようにな。

 あいつ、想像以上に腕前のいい魔術師だぜ。』


ヴァゴスがそう説明していると、上空からも声が聞こえてくる。


「やっぱりな。

 そのよく分からん魔力で出来た膜は簡単に壊れるが修復まで一瞬の時間がかかる。

 連続して術式を叩きこめば貫通できるって事か。」


……成程ね。

そう簡単にはいかないか。

いいね、人間との戦いは練習になる。

この程度は俺からすれば怪我をした内にも入らないからな。

そもそも今回の爆風も俺の身体の表面のヴァゴスの細胞を吹き飛ばしただけで俺にまでは届いてねぇよ。


再度、上空にいる男を睨む。

さて、続きと行こうか。


お読みいただき有難うございます。

今年も本作を宜しくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ