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死した竜の物語  作者: 獅子貫 達磨
第二章 死肉竜の目覚め
22/104

11話 竜による書籍品評会

「ああ、そう言えば。」


「ん?」


机の上の紙を見て思い出したか、アルーダが声を出す。


「こやつのスキル欄に『連なる命』っていうのがあっただろう?

 まぁ、今は制限付きになってるがな。

 確か何かの文献で見たことがある気がしたんだが、多分お前の持っている書籍じゃなかったかと思ってな。」


「ああ、『連なる命』かね。

 恐らくファンディの研究者が以前に提示していた論文の中にあったものだったと思うよ。

 えーっと、丁度その文献ならあったと思うけどね……。

 お前が連れて帰ってくると思って、主要な書籍を一旦こっちに持ってきたんだよね。

 ……ああ、あったあった。

 これじゃないかね?」


シドが机の上に積まれていた本の中から古びた一冊を取り出して、アルーダの方へと手渡す。


「どこのページだ……?

 あぁ、これか。

 えーっと、ふむ、……学者の言葉は回りくどくてよく分からん。」


「要約すると自身の眷族と自分の魂を紐付けして、死亡の優先順位を操作可能にする能力だね。」


「全然全く要約出来てないと思うのは儂だけか?」


「……つまり、自分が滅されそうになった時に眷族の命を代わりに消費して自分は復活できる。って事だね。

 今のところ、一部のアンデットにしか確認されていない能力だよ。

 発見当初は心臓を破壊しても死なない不死身の吸血鬼が居るってずいぶん恐れられてたみたいだね。」


「成程な。唯でさえ心臓を破壊しない限り死なぬのが吸血鬼だと言うのに、頼みの綱である心臓破壊をしてさえも死ななかったとなってはさぞ恐れただろうて。」


「その時は当時の聖滅騎士団が心折れずに戦って、二十八回滅したところで終わったらしいね。

 戦闘中に親玉の心臓を破壊すると、周りで戦っていたその眷族達が全くの無傷でも消滅したって話が残ってるね。

 その経験の推測みたいだよ。

 まぁ、そこからエレガンティアの研究所でも実験が行われて、実際の能力効果の裏付けが取れたみたいだからほぼ間違ってないと思うけどね。」


「ひひひ、聖滅騎士団と言うとレリージオ法国か。

 あそこはあそこで大層アンデットを嫌っているからな。」


「そ、レリージオだね。

 レリージオの連中は市民平等をモットーに国のトップはいないって事になってるけど、実際国を動かしてるのは頭の固い利権に腐った教会の爺どもだよ。

 自分たちの金を守るために分かりやすい敵を置いておいた方が市民からの受けがいいんだろうね。」


「国教として崇拝対象にディスプレイとモモを置いている割には真理も救済も共存も愛も持っていなさそうな奴らばっかりだな。」


「ま、全員がそうとは私も言わないけどね……。」


話が逸れた、とアルーダの書いた紙をシドが指でトントンと叩く。


「ま、それはともかく『連なる命』はそんな能力だ。

 ただ、制限付きと言う言葉がどこまでの制限で何を制限されるのかまでは分からない。

 聞いたことが無いから様子を見るしかないだろう。」


「成程成程。すっきりした。

 因みに他の能力や加護に見覚えはあるのか?」


「うーん。

 私が記憶してる限りではないね。

 そもそも加護と能力は私の専門分野ではないからね。

 後で調べるつもりだよ。」


「分かったら教えてくれると助かるな。」


「分かったよ。

 特に問題ない内容なら教えるとするよ。

 ただ、この後は明日の準備で忙しいから実際に調べ物をするのはもっと後になるね。」


「ああ、別にそれで構わない。」


それからシドとアルーダは暫くの間、地下室で話し合っていた。

その後は都合の良いことに二人揃って地下室から出て行ったから自由に行動できるようになった。

と言うかもう動かないと思っているのか知らないが「待機しろ」って命令もなかったな。

外に出れるんじゃないのか?

少し試しに扉に触れてみると以前は感じた抵抗感が無く、扉が俺の力によって僅かに軋んだ。


……自分では慎重にしてるつもりかは知らないが、シドの奴は意外と抜けてるな。

まぁ、今ここから抜け出したところで上った先で身体がつっかえるとも限らないし、そもそもシドに見つかって命令を聞いた時点で終わりだから大人しくしてるけどさ。

それとも、それを見越して放置したのか?

それは無さそうだけどな。



さて、本だ本だ。

さっきシドが言ってた通り前回とは置いてある本が違っている。

読みかけの本もあったのが残念だが仕方ないか。

ふむふむ、さっきも言ってたが今回は死精霊魔術…人間の言い方では死霊魔術か…の本が多いな。

俺を調べるって言ってたからその関係だろう。

普通のアンデットに関する知識が俺にはないから助かるな。

これで少しは分かるだろう。

ざっと見た感じ基礎編みたいな物が見当たらないのは残念だけど仕方ないか。

どう考えてもシドの奴は基礎編って感じの本なんて求めてないだろうしな。


さてさて、本のタイトルは~。

『アンデット化における自我の形成について』

『アルクカタン王国の悲劇』

『アンデットの個体進化における余剰オドと周辺マナ濃度の関係性』

『九血王の痕跡』

『レフソ=ウェルと吸血鬼における加護の関連性について』

『グロリア・ヴァンパイアと吸血鬼の関連性と吸血欲求における差異』

『吸血鬼の吸血行為における対象の細胞変化について』

等々……。

色々あるな。

うーん、前回みたいに時間がいっぱいあれば片っ端からって思うけど今回はシドの話的にあんまり時間は無さそうだな。

そうなると、読めて数冊程度って思った方がいいか。

どれにしようかな。

何冊かは本と言うか紙を束ねただけの簡素なものが多いから、それはすぐ読み終わりそうだけど大体が結構分厚い本なんだよねぇ。


そういや、アルクカタンってさっき話の流れでちょっと出てきたな。

人の名前かと思ったけどタイトルを見る感じ国の名前だったのか。

九血王って言うのも聞いたことが無いな。

多分なんか強い吸血鬼なんだろう。王って位だし。

他はタイトル的に何と無く書いてあることが分かりそうだから正直結論だけ読めばいい気もするけど。


取りあえずアルクカタンと九血王の話を読んでみるか。

タイトル的にあんまり専門性がなさそうだから、久しぶりの読書の慣らしとしては丁度いいだろう。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

アルクカタン王国。

私が若い頃はまだ知る人も多かったが、今となっては当時の話はおろか、その名前すら知っている人は少なくなった。

しかし、あの脅威を風化させ過去のただの逸話の一つとして忘れ去られることは酷く愚かしい事だと私は思う。

アンデットの脅威を正しく認識させ過去への警告として残すことが私の使命だと強く考えこの本を執筆することとした。

アンデットは絶対に全てを根絶しなければ、いずれ人と言う種族全体を滅ぼしてしまうだろう。

そうなってからでは全てが遅いのだ。

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


……書き出しを読んでなんとなく巻末の著者の項目を見た。


『レリージオ法国 法王庁助司祭 アルレリック・オウギュストス』


……うん。

さっき、アルーダとシドの二人が話してた内容を早速本で実感するとは思わなかった。

ただ、アンデットの認識なんて案外レリージオに限らず生者から見ればそういう認識なのは別段不思議ではないとも思うけど。

人間とはあんまり関わっていなかった母さんだって死精霊魔術は嫌がってたんだし。

それが過度だから目立ってるってだけで、実際にシドの話だとこの帝国だって死精霊魔術は許可が無いと使っちゃダメみたいだしな。

これも生前の意識が残留したままアンデットになってる俺だから冷静にそう思えるだけかもしれない。

まぁ、書き方はともあれ事実には添ってあるようだし続きを読んでいこう。

時間は貴重だしな。


……。

………。

ふう。そんなに長い内容じゃなかったけど所々で著者の意見の自己主張が強いせいで少し読みづらかったな。

アルクカタンに何があったかが主眼においてある本かと思ったけど、どっちかって言うとアンデットがいかに危険か、って内容の方が著者は語りたかったらしい。

その引出しにアルクカタンが引用されてたってだけで。

まぁ、それでもアルクカタンについては把握できた。


読んだ内容をまとめながらザックリ振り返ると、アルクカタンって言う国が大体400年位前に存在していたらしい。

インジェノス帝国のある大陸の南側って書いてあったけど、厳密に何処に在るかまでは地形を把握してない俺には分からない。

まぁ、それはいいや。

その国は土地柄や成り立ち的にあまり強い国とは言えなかったみたいだな。

元々、土地的にあんまり潤沢に農作物が育つ場所でもなかったみたいで、結構国民は作物を育てるので手一杯。

兵士を育てる余裕もなく、周りの国と比べると兵士の数がかなり少なかったらしい。

それでもアルクカタン王国は城下町とその周辺の村が全ての土地で、国全体があんまり大きくなかった事が兵士が少なくてもやっていけた理由だったんだろう。


そこで当時のアルクカタン王が考えた政策がアンデットによる軍備強化だったらしい。

当時は今以上に死霊魔術に対する風当たりが強くて、周辺の国も研究してなかったからその面でも最先端の技術を持てるようになる。

しかも、アンデットの兵士なら維持するのに農作物を使う必要が無い。

と、そう考えたらしい。


そして、やや反対もあったみたいだけど王が押し切って数年でアンデット兵士計画は軌道に乗って、いい感じだったみたいだ。

実際にその政策から一年ほどで国はだんだん豊かになって行ったらしい。

アンデットの研究も他国で死霊魔術を研究して追放された者や野良魔術師を集めて、死霊魔術に関しては周辺諸国でトップクラスの技術と知識を持つにまでなったらしい。


因みに本の著者はここら辺でアンデットに頼ったこと自体が間違いとか、王は歩むべき道を最初から間違えた、とかアンデットを使用する発想自体を酷く非難してるけどな。

俺的にはそれで結果が出たならそれはそれでいいって思うんだけど。


まぁ、そんな感じで順調だったアルクカタンが死霊魔術に傾倒し始めて9年後の冬。

突然、王含め全国民の殆どがアンデットと化して滅んだ。

周辺諸国へ一切の応援要請、連絡が無かった事から瞬く間に滅んだのだろうって結論が出された。

慌てたのは隣接する国で急いで討伐部隊を差し向けたが、余りに多いアンデットの数に押し返される羽目になって二次被害まで出たらしい。

最終的にレリージオ法国の聖滅騎士団への依頼がなされて何とか事態は沈静化。

王国跡地に残っていたのは夥しい数の吸血鬼、屍鬼で大半が理性も自我もなく襲い掛かってきたらしくかなりの激戦だったとか。


後に隣国が数少ない生き残りの中から助けた王宮勤めだった魔術師から、何があったのかを聞いた。

アルクカタンに勤めていた魔術師が王国に来た野良の吸血鬼を町中で偶然発見し、捕えて隷属させようとしたらしい。

俺はここを読むまで知らなかったんだけど、死霊術師はアンデットを生み出すことも出来て、同じように何処にも属していない野良のアンデットを捕えて隷属させて使役させることも出来るんだと。


まぁ、後は特に捻りもない話だがその発見した吸血鬼が反抗、想像してた以上にはるかに強かったそいつは術者を吸い殺し眷族化した。

そのまま、国の中枢である王宮が乗っ取られ、更に感染が拡大し瞬く間に滅びたんだと。


一言で纏めると一人の吸血鬼によって一つの国が滅びたって事例だな。

因みに吸血鬼には大凡の力によってランクが分けられているらしくて、

下位⇒中位⇒上位⇒真祖⇒始祖⇒神祖

と位階が上がっていくらしい。

アルクカタン跡地の調査と著者の見解的には、アルクカタンを襲ったのは恐らく最低でも真祖吸血鬼だろうって事だった。

正直どの程度の事が出来たらどの程度の位階になるのかピンと来てないけど。

真祖以上は滅多に居ないとかなんとか。

ただ、たとえ一体でも真祖以上は国を滅ぼす力がある。

しかも、長生きすればより位階が上がって吸血鬼は強力になるらしい。

だから、アンデットは根絶やしにしようね。


って感じだった。

成程。

まぁ、著者の結論は結論ありきで話してる節があるから置いておいたとしても、確かに危険な側面があるのは分かる。

俺としてはアンデット滅ぼしたい側の意見で書いてある本だから、擁護派(そんなモノが有るとしたらの話だけど)視点での意見も見てみたい。

王国の魔術師が隷属させようとしなければ滅びる事もなかったんじゃないの?って思ったり。


俺だって生きてた時は吸血鬼とかのアンデットって怖くて得体のしれない何か、って認識だったよ。

母さんからの話の影響が強いだろうけどさ。

ただ、自分がいざその身になってみると、出来る事と生態(死態?)が違うだけでそこまで大差ないんじゃないのって思う。

俺自身は生前の記憶があるから置いておいても、アルーダとシドとかを見てると共存は無理だって一概には言いにくいって思ってしまうね。

まぁ、これだってアンデット視点の意見だから、やっぱり人間からすると怖いのかもしれないけどさ。

ましてや、吸血鬼には眷属化っていう感染手段があるのも怖いんだろうなぁ。

取りあえず、考察したいわけじゃないしここら辺でこの本は切り上げよっと。


さて、じゃあ次は『九血王の痕跡』って本を読もうかな。

因みにこの本はエレガンティア大学の出版だ。レリージオじゃない。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

九血王。

それは神祖吸血鬼と言われる九人の吸血鬼を指した言葉である。

いまや伝説とまで言われる位、手がかりが無く逸話しか残っていない。

子供を怖がらせるための作り話だという話や、神話に近い扱いを受ける九血王たち。

しかし、筆者は実際にこの伝説を調べていくつかの逸話から現実に残る痕跡を発見した。

そこから導き出される彼らの実態について話していきたいと思う。


まず、九血王と聞いても厳密にその九人を知る者は少ないのではないだろうか?

九血王とは以下の九人を指す。

・アリグラス

・ジン・リー

・ポヤム・クラム・ガラム

・ゼクステーター

・アズバラルム

・ヒュマニア

・ラストル

・シソンググ

・ナイトウォーカー

有名どころはゼクステーターやナイトウォーカーだろうか。

この二人は数々の悍ましい逸話に事欠かない吸血鬼だ。


まず、上から順番にそれぞれの九血王の逸話について話していこうと思う。

……………………………。

…………………。

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


……。

………。

読み終わった。

そんなに長くなかったな。


要約すると世界有数の最高クラスの強い吸血鬼達の話。

でも、読んでる感じ現実で活動が確認されてる人は一人もいない。

だから殆ど伝説だったとされてるけど、各国の逸話を調べると痕跡があるんだよ。

この国にはこんな逸話があってね、その逸話の内容のこの部分と、この九血王のこの特徴が一致するでしょ?だからこんな痕跡があったって言えるよね?

って感じ。


うーん、何個か納得できる話もあったけど大半がこじつけじゃないの?って感想を抱いた。

そうとも言えるけど、必ずしもそうとは言えないよね?っていう。

まぁ、逆に言えばこの本の逸話に書いてあるレベルの事を起こせるのが神祖吸血鬼と思えばいいんだろうな。


うん、遠すぎてイメージも沸かない。

なんだよ。魔術一発で国を覆って滅ぼすって。

必要なオド量の想像もつかない。


因みにアルクカタンの話も乗ってたな。

この本ではゼクステーターの仕業って書いてあった。

理由はゼクステーターが眷属作るのが好き、っていう伝承からだって。

こじつけ過ぎない?本人が聞いたら怒ると思うぞ。

本当にいるのかわからないけど。


まぁいいや、話半分で覚えておこう。

さて、じゃあ、次の本を読もうかな。

あーあ、時間がもっと欲しい。


話が先に進まねぇ!!!!

すみません……。

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