「天気の子」感想
「天気の子」のネタバレ有りです。
というか満載です。
是非観てから読んでください。
※このレビューを目にしてくださった皆さまこんにちは!もしくはこんばんは!
こうしてここを見てくださっている方は新海作品が好きな方ばかりだと思います。
ですのでまずはそういう方に向けて先に言っておきます。
このレビューは「天気の子」の詳細なネタバレ満載です。まだ映画未見の方はどうかこのままブラウザバックしてください。どうかよろしくお願いしますm(_ _)m
①はじめに
はい、改めましてこんにちは。Taylor rawと申します。
私、映画好きなんですよ!映画を観に行くその道のりも待ち時間も好きです。で、今夏1番楽しみにしていたのが「天気の子」。そう、「君の名は」の新海監督があのヒット作の次にどんな作品を創るのか体育座りでワクワクしながら待っていました。今回は完全ネタバレ防止のためにホームページすら開かず映画の情報をシャットアウトして準備していました。キービジュアルをみながらボーイミーツガールものだろうな、という誰でもできるような予想をしながら公開を楽しみにしていました。
で、公開直前の前日です。例の事件が起こり、更に天気の映画だというのに列島に台風が近づき全国が悪天候でした。新海監督もツイッターで声明を出していました。辛い事件ですね。この事件に関しては思考が止まります。でもね、どうしてもね、タイミングがタイミングだけに数年後この映画とセットで思い出してしまうと思うんですよ。悔しいですけど。
アニメ好きならモヤモヤした気持ちを引きずったまま映画館に向かうことになったかと思います。本当に悔しいですけど。
すいません、こんな暗い書き出しで。続けますね。
そうしてモヤモヤした気持ちで迎えた公開当日の7月19日でした。平日でしたがわざわざ計画して休みを取りました。雨が降りしきる中、午前中最後のチケットを取るために電車に乗り込みます。電車の中では「あ、この人もあの映画観に行くんだな」と見てわかる人が多かったです。なんとなく。降りる駅一緒ですしね。
映画館に着くと真っ先にチケット売り場に。さて、どの席にしようか……おっと平席はほぼ満席でした。フフッ……しかしこんなのは織り込み済み(アクシデントも楽しむタイプ、というか予想はできてました)
よし、仕方ねえなあ金出して空いてる1番良い席とろうか〜〜(ケチな性分でしてあえて自分の背を押すために事前予約はしませんでした)
・待っている時間も楽しむ
そして初めて1番高い席に座ってみました。プレミアム席とかいうやつです。うん、1番高い所にあるのでスクリーンが見やすい。遮蔽物が何もなくて最高だ……金出しただけのことはありました。
見回すとまだチラホラと空席が。観客は大学生くらいの学生が多かったです。やっぱり平日昼間ですし。
さて、まずはスクリーンには新作映画予告が次々と映し出されます。人によると思いますが、私はこの待っている時間も好きなんですよ。注意資源というリソースを使わないために目をつぶったり頭の中は他のことを考えたりして待ってるんですけどね。
CMが終わるころになると続々と観客がやってきて席が次々と埋まっていきました。みんな待ちたくないんですね。やっぱり私みたいなのはレアなのかな?
・「天気の子」はじまる!
詳細な荒いあらすじ(時系列とかはグチャグチャかもです。間違ってたら済みません)
ここからは駆け足でストーリーラインを語りながら思ったことを書いていきたいと思います。一緒に思い出しながら読んでいただければ幸いです。気持ち重視で書いてるので本当に拙い文章ですがご了承ください。
さあ、ブザーが鳴り遂に映画本編が始まりました。
雨が降りしきるトーキョー……
背景キレイ背景キレイ背景キレイ背景キレイ……
今回の作画でのテーマは「水」のようでした。圧倒的に水の使い方が綺麗で上手かったです。新海監督の本領発揮ですね。この瞬間1番いい席取って良かったわーと思いました。本当に。
さて、ストーリーのほうですが家出少年帆高(15歳?だったと思うとにかく高校生)が東京行きのフェリーに乗り込んでおり、大雨が降るというのにはしゃきながらデッキに駆け上がりバケツのような雨に降られる場面から始まります。
もうね、この時点で背景も綺麗だし雨の表現が美しいんですよ。雨の降り方が気持ち良い。
少年はデッキから落ちかけた時にやさぐれたおっさんに助けられ夕食をたかられます。家出少年にたかる大人の人って^_^;
帆高は東京に着くと生活の糧を得るためにバイトを探し始めます。しかし来る日も来る日も働き先は見つからずネカフェに寝泊まりする日々。資金も底を尽きかけます。ここもね、こういうケースの家出少年に冷たい現代社会を新海監督は描写したかったんではないでしょうか。(この辺はこの映画がバイトルとコラボしてる所以です)
で、なんやかんやあって街を彷徨いてるときに出処不明の拳銃を拾って懐にしまっちゃいます。おい、捨てろよ^_^;
そして、マクドナル○で水だけを飲み項垂れているところに本作のヒロイン陽菜ちゃん登場です。「内緒ね(はあと」と言いながら帆高にこっそりとハンバーガー奢ってくれます。マジ天使。帽子が似合っててね、可愛いんですよこれが。ここは王道のボーイミーツガールものですね。帆高はムチャクチャ感動しながらハンバーガーを頬張ります。「人生で1番美味しかったメシ」とか言っちゃいます。
で、帆高の職場探しですが結局は序盤で助けてもらった須賀さんの名刺の番号に電話して「月刊ムー」の下請け記事の校正や取材を手掛けることになります。ここでの生活は楽しそうでしたね。この世界は月刊ムーがやたら売れてる世界のようです。仕事の様子は新海監督お得意のダイジェストで見られます。相変わらず音楽の使い方が上手いです。
さて、場面は変わり東京でバイトに明け暮れる帆高は街中で女の子が如何わしい輩に絡まれてる場面に遭遇します。見てみるとなんとこないだマク○でハンバーガーをくれた天使の女の子じゃないですか……これは男の子ならなんとしても助けなきゃダメだよなあ……
ここまでが序盤の大まかな流れです。
・「お天気ビジネス」はじめました
すったもんだの末に距離が近づいた2人は陽菜が天気を晴れにする、という能力を明かされお天気ビジネスなるものを始めます。
陽菜ちゃんも小学生の弟と子どもの2人暮らしで経済的に苦しそうなのです。
帆高に料理を作るシーンは幼妻感が凄くて彼自身も頭いっぱいいっぱいっぽかったです。そりゃあこんなことされたら命賭けてこの子守りたくなるよなあ……
この世界の東京は何日間も雨が止むことなく降りしきり陽菜ちゃんがその能力を遣わないと晴れの隙間さえ見えません。2人の作ったサイトには依頼が殺到してビジネスは成立しちゃいます。こんな神秘的な能力でお金取っちゃうんだ……と私も思いましたが細かい突っ込みは置いておきましょう。依頼者の中では初代プリキュアのコスプレイヤーが印象的でした。決めポーズはあれで合ってたんでしょうか?詳しくはないですが詳しい方いたら正誤の方よろしくです。微妙に違ってた気が……
陽菜が能力使うシーンはとても綺麗でマジ天使です。この映画の最大の見どころの1つですね。
・2人の別れ〜消える陽菜
物語は進み帆高は拳銃所持と家出の容疑で追われ、陽菜は天候を操った影響が身体に及び始めます。
東京の雨は止むことを知らず異常気象の範疇をすでに超えています。
この世界のルールでは「天気の巫女」と言われる人柱と引き換えに天候を正常に戻せる、ということになってるんですね。これはこの映画最大のテーマとなっています。
この情報を手にして「人1人の命で世界が救われるんなら俺は大歓迎だ」そんなことを言う人もいます。皆さんはどんな印象を受けたでしょうか?
やがて子どもの2人暮らしはまずいということで住居を追われることになったヒロイン姉弟は帆高とともに東京の街を彷徨います。警察も拳銃所持の疑いがある、ということで帆高を執拗に追い始め緊迫感のある逃走劇が繰り広げられます。
2人が宿泊先のカラオケで名曲を歌うシーンもあります。個人的には「カルマ」も聴きたかった。某ゲームと被るしイメージが引っ張られるからダメか……
3人で楽しい一夜を過ごした後、陽菜は「帆高は晴れの方がいい?」と自身の運命を分ける質問をします。
帆高が「Yes」と答えた後陽菜は何処かへと消えてしまうのでした……
・誰かの犠牲で成り立っている残酷な世界
陽菜が消えた朝、止まなかった東京の雨は降り止み青空が広がって人々が一斉に喜ぶ様子が描かれます。
少女1人の犠牲により取り戻された青空という「幸福」。青空がとても美しい描写だっただけに私はこの構図にちょっとゾッとしました。
「誰も何も知らないで喜んで……」
帆高は泣き叫び、いなくなった陽菜を思い嘆きます。
・そしてクライマックスへ
その後あっさりと警察に捕まった帆高はやはり話をまともに聞いてもらえません。そらそうでしょう。超常現象を信じる警察がいたら世も末……
とはいえ、この辺の描写はとても意地悪で仕方ないとはいえ今作での警察は無能に感じられました。目の前の悪人(暴行犯、児童買春犯)を放ったらかして無実の少年を追ってるのはどうなん?あとリーゼントはないだろう……
警察署から逃げ出し、「天に通じる」鳥居をくぐった帆高は天の上で陽菜に再会します。
「僕は青空より陽菜がいい‼︎」
そう言い切った帆高は陽菜を呪縛から解放し取り戻します。
ここがこの映画最大の見せ場です。RADWIMPSさんの音楽と場面が完全にシンクロしていて映画史に残る名場面となったのではないでしょうか。私は心震えました。
・引き換えに失われたもの
陽菜の命は救われました。しかし今度はそれと引き換えに止まない雨は東京を水没させます。
この流れが一瞬のモノローグによって語られたので「えっ……えっ?」ってなった人が多いのではないでしょうか。私もここは思わず声を出しかけました。あっぶね〜……
数年後、再び会いに来た帆高に須賀さんはこう言います。
「気にすんなよ、世界なんてずっと狂いっぱなしなんだから」
これがこの映画の1番芯を食っている言葉で、新海監督の言いたかったことだったのではないでしょうか。
②総評
・現実世界とのリンク
公開直前に起こった事件。
頭の片隅に追いやったそれが本作を視聴中、やはり連想せざるをえなかったです。
個人のエゴと幸せ。一対多数の理論。
そのバランスが崩れた時戦争や犯罪って起こっちゃうんですよね。
作中でトランプのことにもチラッと触れていました。イギリスでもあんな感じの政治家が指導者になったそうです。
私はエゴが肥大化し過ぎたこの世界に漠然と不安をおぼえています。
はっきりいって私はトランプ大嫌いです。
もう二度と戦争が起こりませんように。この世から核兵器が無くなりますように。
・このラストは「良かった」のか?
話が逸れちゃってごめんなさい。
ではこの映画最大の引っ掛かりポイント、「東京水没ラスト」についてです。
陽菜の命は救われましたが東京の街は降り止まない雨に水没してしまいました。
作中では犠牲者については触れられていません。しかしインフラや都市機能としては東京は完全に死んだのでしょう。生活圏を追われ、職場を失った人もいるでしょう。
愛する隣人を守るために見知らぬ多数を切り捨てるか?
そういう世界の本質をこの映画は描いています。
・「セカイ系」と「知らんがな」の世界の戦い
篠房六郎先生の「おやすみシェヘラザード」という漫画をご存知でしょうか。いま、天気の子とコラボしてネタバレなし漫画を書いてるんですね。宜しければご照覧あれ!
流用させて頂いて申し訳ない。先に謝っておきます。ごめんなさい。
で、その漫画の中で使われてる表現が私にはピンときて気に入りました。
この映画は「セカイ系」と「そんなこと知らんがな」の世界の戦いである、と。
帆高や陽菜の前に立ちはだかる警察は作中で何も事情を知らず、知ろうともせずとても意地悪に見えます。
でもそれは秩序や平和や安全を守る為であって完全な悪ではないんですよね。
しかし帆高や陽菜にだって常人には理解できない事情があります。陽菜なんか世界の為に命を投げ出すくらいのぐう聖です。
エゴと公共の境界は何処にあるのか?
そのバランスが崩れたときどうなるのか?
そんな身近な、しかし重いテーマを孕んだ作品だったのではないでしょうか。
・誰かの犠牲の「おかげ」で成り立っている世界の現実
この世界は泣きを見ている誰かのおかげで成り立っている一面があります。
戦争によって経済が無茶苦茶になった貧国から買い取っている物資によって我々が口にしているお菓子だってあります。
そんなグローバルな視点だけではなくて損をしている誰かのおかげで笑っていられることだってあります。
今作では新海監督はかなり挑戦的な試みをしました。そんな世界の醜い一面を描くことにも挑んだ本作の熱量は凄かったです。
③軽い突っ込み
ちょっとここまでは重苦しく語り過ぎたので、次はこの映画について軽く突っ込みを入れて締めましょうか。
・瀧くん悟りすぎ
今作では前作「君の名は」の瀧と三葉もゲスト出演します。
瀧くんねえ、かっこいいんですけど何やら悟った表情になり過ぎてて笑えるんですよ。私は笑っちゃいました。
就活疲れかな?自覚してないけど世界救っちゃった満足感からくる余裕なのかな?、とかいろいろな考察が出来ますね。
・センパイ、イケメンすぎ
凪くんがねえ、かわいいショタで女たらしで大人びている、といういいキャラしてましてね。
重い本作での癒しポイントでした。
ショタ好き某監督の描くショタより可愛いってどうよ⁉︎
・少年に銃口を向けた無能刑事、おそらく停職処分
私ねえ、「ハコヅメ」って警察漫画が好きで警察機構の規則の細かさや煩さは少しだけ理解してるつもりです。
で、この漫画の中で銃の取り扱いについても詳しく述べられてるんですがこれがまた厳しい。
警官は拳銃に手をやっただけでも書類を何枚も書かなくちゃいけないし、万一発砲しちゃった警官は当たっても当たらなくてもその後の人生が変わっちゃうんですって。
以上の事に鑑み、少年に銃口を向けた高井と安井は停職処分でしょう。悪くて有罪。まず出世の道は閉ざされたことでしょう。ざまあ。
あ、私はハコヅメのモジャモジャ刑事は大好きです。
・けっこうヤバイ子帆高くん
帆高は家出して東京にやって来るわけですが、その理由は一切語られません。(わりと大事なポイントだと思うんですがここも犠牲者の数を出さなかった点と共にずるいな、と思いました。)顔には絆創膏だらけで何があったのでしょうか。
思い込みが激しくバイト代で陽菜のプレゼントに指輪を買っちゃう「痛い子」でもあります。
ラスト付近で他の女の子の告白に心拍数を上げていたのも如何なものか、と思いますね!お前は目移りしちゃイカンでしょ。結局これも彼の勘違いですし、実は結構ヤバイ奴です。
もし陽菜が消えていたら「ララァを失ったシャア大佐ルート」を辿りロリコンテロリスト化していたでしょう。(この辺は冗談です。聞き流してください)
④なんだかんだ言って楽しかった「天気の子」
いろいろ語りましたが、結局は観てよかったし楽しかったです。
今夏の映画界の話題を独占するんじゃないでしょうか。
ではでは最後まで読んでくれた方ありがとうございました。暑いので倒れないように気をつけてくださいね。