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十五の君へ

 ◆◆◆↓立成?年?月◆◆◆



「「ただいまー」!」

「おかえりー二人とも! ご飯にする? お風呂にする? それとも、あ・た・」

「お風呂」

「あうっ、弓稀ゆきったら冷たい! まるでピロートークだよ! ……あ、でもお風呂は温めてあるよー!」

「わたしお母さんと一緒に入るー!」

「ええ、そうしましょ」

「あうっ、つきちゃんまで冷たい! まるで萎えてるときの……」

「揚げ物してるなら余所見しないで」

「はい…………」


 拝啓、アタシ。

 高校一年生……だから十五歳か。その頃のアタシは、水泳に力を注いで、勉強もまあそこそこに頑張って、そして。

 つくしと付き合っていたはずだ。


「はい。前向いて、目閉じる。じゃないとシャンプー目に入るから」

「うー……」


 そのときは、まだ長針と短針の関係だった。


「大変! この人チカンです!」

「体洗ってるだけなんだから余計なこと言わない」

「ママが言ってた!」

「つくしったら、またつきに余計なことを教えて…………」


 今ではプロとして水泳を続けているし、つくしとも学生時代からずっと付き合っている。


「ばっしゃーん!」

「静かに入って」

「はーい!」


 けれど、当時のアタシは想像もしなかっただろう。


 アタシ達に二人に秒針……つまり子どもがいるだなんて。


 子どもといっても、血が繋がっているわけじゃない。

 それは、アタシ達が新婚旅行として行った沖縄での出来事だった。「拾ってください」。そう書かれた段ボール箱の中で、その子は眠っていた。まだ物心がついて間もないくらいの、小さな小さな女の子だった。

 もちろん、警察に連れていった。けれど捜索願いも出されていないし、その子に聞いてみても分からないしで、なにも進まなかった。

 暗礁に乗り上げた。

 その後、その子は児童養護施設へ連れていかれることになった。……しかし、そのうちなついてしまったらしい。その子は、つくしから離れようとしなかった。

 困り果てた警察の人と相談した上で、同棲していたアタシ達はその子を預かることにした。もちろん、捜索願いが出されるまで……だ。決してお金持ちではないけれど、アタシが水泳界の第一線で活動させてもらっていることもあって、養えなくはないくらいにはお金があった。

 その後。

 待てども待てども、沖縄から連絡は来なかった。

 すっかり「政所月まんどころつき」として育てられたその子は、アタシを「お母さん」、つくしを「ママ」と呼ぶようになった。ちなみに名付け親はつくし。「つくし」と「ゆき」から一文字ずつ取ったらしい。その結果、アタシと一文字違いの名前になった。


「……つき。アタシもお風呂入るから端によけて」

「ん!」


 ……だから、今では三人家族だ。


「たのもうーっ! さあ一緒にお風呂入るよー!」

「つくし、うるさい。というか裸で胸を張るんじゃ…………あなた揚げ物は?」

「もう出来た! 今夜はメンチカツだよ!」

「やったー! 行くよママ、せーのっ!」

「「最後に、メンチ勝つーっ!」」

「それは有名な曲」



 ◆◆◆↑立成?年?月(=立成26年9月)◆◆◆

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