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四六時中ご一緒させてください。

 ◆◆◆↑立成17年5月◆◆◆

 ◆◆◆↓立成18年8月◆◆◆



 立成18年の、夏休み。


 窓の近くでは、扇風機に揺られた風鈴がチリンチリンと鳴っている。


 その風鈴の音色に耳を傾けながら、アタシ、政所弓稀まんどころゆきは仏壇の前で手を合わせた。


 ……そう。「彼女」に身も心も救われたあの日から、アタシ達二人の時計は動き始めた。

 忙しなく動いて、それでも原動力になってくれる「長針」の彼女。

 そんな長針に振り回されながらも、ゆっくりとそれについていく「短針」のアタシ。

 疲れるけれど、悪くない。そう思えた一年と三ヶ月だった。


 ……なんだかんだ、楽しかったよ。


「………………つくし」

「ん? なに?」

「いい加減……離れて。……暑い」


 後ろから抱きついている彼女に不快感を伝えると、不満そうに「えー……」と言いながらも離れてくれた。


「まったく……。せっかくおばあちゃんの仏壇に手を合わせていたのに、つくしのせいで暑くて台無し」

「えーそれあたしのせいなのー? ……あ。あたしの精なのー?」

「うるさい。いいから、ほら。……今日は、アタシの親に挨拶しに来てくれたんでしょ?」

「はっ! そうだった! ラブラブしちゃいられない!」


 口元に手を当てて大げさな動きで驚くやいなや、つくしは和室を出てアタシの両親と祖父がいるダイニングへと走っていった。


『すみませーん! 娘さんの全部をあたしにください!』

『『『「はぁっ!?」?』?』?』


 ダイニングから響いてきたつくしの声に、政所まんどころ一家は見事なハーモニーを奏でた。



 ◆◆◆↑立成18年8月◆◆◆

 ◆◆◆↓立成?年?月◆◆◆



「起きて。ねえ、起きてようっ!」

「ん……揺らさないで。……つくし」

「もうっ、もう家に着いたよ! はい降りて降りてっ!」

「…………今日は予選で疲れてるのよぅっ……」


 今日は、大事な水泳の大会を終えたばかりだった。心身ともに疲労はピークに達し、思わず帰りの車中で眠ってしまっていたようだ。一通りアタシを揺すっていたつくしは、アタシが起きたことを確認するとアタシが座っている方と反対側の後部座席の扉を開け、置かれていた買い物袋を持ってアタシ達の家の玄関へと向かっていった。


「ママー、さっき買ったお菓子食べていいー?」

「これから夜ご飯食べるからダメだよー」

「えー」

「ほら、つきちゃんも食器の準備手伝ってよー!」


 まだ重い身体を引きずって家の中に入ると、居間の方からつくしと、あともう一人。もう一人の、可愛らしい声が聞こえてきた。


 ……そうだ。長針と短針のアタシ達には「秒針」もいるのを忘れちゃいけない。

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