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31種類のアイスクリームを。

 ◆◆◆↑立成?年?月◆◆◆

 ◆◆◆↓立成17年8月◆◆◆




「○っぱい揉みたいんだけど、いい?」


 放課後の、学校の廊下。


 アタシの三つ下の学年の彼女、板隷いたれいつくしがねだってきた。


「泳ぐ時の抵抗が増えるから駄目」

「今でも充分大きいのに?」

「とにかく駄目。……着替えてくるわ」

「……ちぇっ。……今日もグラウンドに行っているから、部活終わったら一緒に帰ろ?」

「……わかったわ」


 少し歩いてから振り返ると、つくしは手を振っていた。そんな彼女に小さく手を振り返し、水泳部員のアタシはプールへ、陸上部マネージャーのつくしはグラウンドへとそれぞれ向かっていった。




 ◆




「こんなに口に入るかな…………」

「一口で食べなければいいじゃない」

「……あれ、スルー?」

「アイスの話でしょ?」

「アイスの話だよ?」


 夕日に焼ける空の下で、アタシとつくしは帰路に就いていた。アタシは自転車登校、つくしは電車登校。アタシ達が通っている学校、星花女子学園せいかじょしがくえんの最寄り駅に着くまでの間、アタシは自転車を押しながら、二人で下校するのが日課なのだ。


「とろとろしてる……」

「喋ってばかりだから溶けただけでしょ。変な言い方しない」

「アイスのことだけど?」

「知ってる」


 ときどき……というよりもしょっちゅう、つくしは誤解を生むような表現をする。いわゆる「下ネタ」というやつだ。アタシは辟易している。

 ちなみに入学時の自己紹介で彼女が自身の名前の「つくし」をいじって下ネタを言ったところ、クラスメイトからドン引きされたらしい。当然の結果だ。


「はぁ……」とため息を一つついて、アタシは自転車のハンドルを握っていない方の手に持っていたチキンを頬張った。


「相変わらず好きだね、お肉」

「水泳に限らず、タンパク質はスポーツをする者には大切な栄養素よ」

「女子高生が下校中に食べ歩くような物じゃないけどね」

「文句あるの?」

「いやいや別にそんなアハハ…………うーん、おいしい!」


 はぐらかそうとして、つくしがアイスをペロッと一口。このアイスは、アタシ達の通学路沿いにあるコンビニ「ニアマート」に売っていたものだ。サマーキャンペーンだかで、31種類の味が選べるようになっていた。某チェーン店を意識したのだろうか。つくしはミルクピーチ味と、リンリン青銅味なるものをワッフルコーンに二段重ねしていた。余談だが、アタシがいつも食べているチキンは、そこに売っている「からあげサマ」だ。


 付き合い始めてから、三ヶ月。そんなアタシ達が初めて出会ったのは、二年前。アタシが中学二年生の頃だった。

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