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永遠の白い布

作者: 雪丸

暇を持て余した若者と幽霊の出会いが人生を変える。人生の幸福とはどこに在るのか…

 昔々、ある町に若い女の幽霊がでると恐れられている町があった。その町の教会墓地周辺に十一時になると、でると言う話だそうな。その町に一週間前から稼ぎに出てきている1人の若者がいました。

その若者はこの町から遠く離れた田舎の村から仕事を求めてやって来た心優しい若者でした。若者はつい先日、教会の墓地周辺にでる若い女の幽霊の話を聞き少し見てみたいと考えやってきたのです。その教会は遠くの町からくる人々のためにも礼拝堂を開けていたので、夜の遅い時間でもチラホラ人がみえる、大きく立派な教会でした。十一時になり若者は墓地の前の大きな木に隠れ様子を窺っていました。

すると墓地の入り口に白い布を纏った女が立っているではありませんか、青白い顔には元気が無く痩せていて、左腕は折れ曲がっています。いきなり現れたものだから若者は驚き、尻餅をついてジッと見つめていました。すると近くから男たちの声が響いてきました。

その4人の青年は度胸試しと、その墓地に立っている女に石ころやら枝などを投げ挑発した言葉を浴びせ得意げに去っていったのです。それを見ていた若者は幾ら幽霊でもこれは不憫だと強く思い、次の日また来たら幽霊になっておどかしてやろうと考えました。

次の日の夜、昨日と同じ場所に隠れていると、女の幽霊が何処からともなく現れ、また昨日の青年達の声も近づいて来ました。またもや女の幽霊にその辺の物を投げ、からかっています。

若者は用意した白い布と火を使い幽霊に扮し脅かしました。すると青年達は驚き、情けない声を上げて逃げていったのです。ザマァみろと笑っていると背後から、

 もし、助けてくれたのですか?有難う御座います。

と高く柔らかい声が届きました。若者は、見ていられなかっただけ、助けたのは自分がやりたかったからだと謙遜しました。

その日から若者はよく女の幽霊と話すようになり、いつの間にか若者は心惹かれていました。

仕事も無かった若者は日課になり、いつもの様に出かけたある晩、若者はいつもの様に現れた女の幽霊の様子が違うことに気付きます。

何と言う事でしょう、女の幽霊の身体が半分消えかかっていたのです、慌てふためいた若者はたずねました。

「なぜ、消えかかっているんだい?」

「もう私の心は満たされてしまったのです」

「そんな・・・君と会えないなんて悲しいよ」

「私もです。私は恋と言う気持ちを始めて知りました」

「俺も初めて知ったんだ、君と出会って」

「貴方は末長く、幸せに生きてくださいね」

見つめあった二人はキスを交わし抱き合いました。

すると女の幽霊はしおしおと泣きながら笑顔でありがとう、ありがとう、と消えていったのです。

若者も涙を堪えながら立ち竦んでいると足下に白く綺麗な布が一反落ちている事に気が付きました。若者は白い布を拾い上げ、あの子の形見だと大事に持って帰りました。次の日男はその白い布で自分の部屋着を作り、着て、書き物をしていました。

若者がいったん休憩しようと立ち上がった時、インクをこぼしてしまいました。滴り落ちたインクは白い部屋着を黒く染めます。慌てて拭き取ったが落ちる筈もありません、若者は諦めてその日は寝ました。

翌朝、起きて見るとなんと、こぼした筈のインクが綺麗さっぱりなくなっていたのです。これに驚いた若者はその日もインクをこぼし確かめてみることにしました。

すると翌朝、綺麗さっぱりインクの跡はなくなっていたのです。男は町中の仕立て屋にこの布を売り、稼ぎを得ました。残りを僅かに残し後は形見として大切にしようと考えていました。

次の朝、若者は起きて、布を見ると何と残り僅かになっていた白い布が元通りになっていたのです。若者はこの布を沢山の町や村に売って巨万の富を得ました。


 月日は流れ、若者はお爺ちゃんになっていました。お嫁さんも取らず、ずっと独り身でいました。そこへ財産を奪おうと若い女がメイドとしてお爺さんの屋敷へ来たのです。さぞ、良い生活を楽しんでいるだろうと考えた若い女はお爺さんに取り入ろうと夜の寝室へやって来ました。

すると何やら寝室から声が聞こえてくるのです、若いメイドが寝室の声へ耳をそばだてると・・・


「早く死にたい、早く死にたい、会いたいよ」


と言うお爺さんの声が聞こえてくるではありませんか、ゾワッ…っと気味が悪くなった若いメイドはそそくさと屋敷を立ち去りましたとさ。

                                                                      終わり



最後までこの作品を読んでいただき有難う御座いました。

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