最悪の日
「ここはこうして...」
今日は台風が来るとの予報なのでビニールハウスの点検や、換気扇をつけて強風に備える。
「もう少しで終わりっと...」
これが終わったら私はお母さんの南瓜の煮物を食べるんだ...なんて馬鹿な事を考えながら作業をしていた。
今思えばこの時から私の運命は決まってたのかもしれない。
「ん...?」
何か少し気配を感じた私は外に出てみることにした。
「何あれ...?」
黒猫が道を歩いていた...それだけならば何も違和感は抱かなかっただろう。しかし私はその黒猫に言い知れない恐怖を感じた。
「風が強くなってきたな...」
私はその黒猫のことを忘れようと独り言を言う。
しかし、その時だった、黒猫が車に向かって走り出したのは。
「危ないっ!!!」
自分の悲鳴ながら凄い剣幕だったと思う。黒猫を助けるために飛ぶように走る。農業で鍛えられた足だ、間に合う!そう思った瞬間だった。
「ニャー」
猫がこっちに向かって鳴いたのだ。何もおかしくは無いだろう、しかし私は足を一瞬止めてしまった。それでも猫を見捨てるという思考は何故かうまれなかった
「うわあああ!!」
猫の脇に手を入れ、投げた。その瞬間私の視界は弾き飛ばされたかのように切り替わりブラックアウトした。
『ニャー』
何も考えられない頭にその猫の声だけが響いた。