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勇者召喚!かと思ったら転生!?こうなったら精一杯生きてやる!!  作者: 冷星 夜姫
勇者召喚~勇者としての日々~
7/25

6話 犯人、そして勇者の最後


 それから更に数日が経った。

 煉城も今はちゃんと前に進んでるみたいだ。

 俺は、近接戦は今は教える事は無いとアグマスさんに言われ、煉城や雅と一緒に、キュシアさんに魔法を教わっていた。

 雅も、最近は皆と普通に喋れる様になっている。

 ある日、俺が訓練を終えて部屋に戻った後の事だった。

 部屋の扉がノックされた。


 「はい、今開けるよー、て、あんた誰だ?」


 俺が扉を開けると、そこには全身黒ずくめの人が立っていた。


 「マンゲツ様、ギルスガ王からの伝言です。犯人の目星がついた。数日前に、宰相が勇者召喚の間に入っていたらしい。詳しい証拠はまだない。確かに伝えました。失礼します」


 それだけ言うと、その人は去っていった。

 俺は、扉を閉めて考える。


 「やっと分かったか。宰相……、行動は早めの方が良いよな」


 俺は、訓練服は今は無いので、学生服に着替える。

 これを着るのも久しぶりな気がするな。

 小太刀を持っているのを確認して、部屋から出る。

 部屋から出た俺は、宰相の部屋を探した。

 少し時間がかかってしまったが、部屋を見つけ出す事に成功する。

 宰相の部屋からは、一度も感じた事の無い気配があった。

 さっき聞いた騎士さん達の話から、宰相は今、会議中だと分かっている。

 俺は部屋に入り、その気配がある部屋へ続く扉へと進む。

 扉を開けると、そこには見たこともない生物が立ち並んでいた。

 見たこともないが、あっちの世界で聞いた事はある、実在しない筈の生物。


 「ゴブリン、オーガ、って、これってもしかして……魔物………?」

 「正解だ」

 「っ!!?」


 部屋を見ていたら、後ろから声が聞こえてきた。

 驚いて振り向くと、そこには会議中で居ない筈の、宰相が立っていた。


 「ん?確か君は、勇者の……マンゲツ様だったかな?まあ、これを見られたからには、殺すしかないんだが」

 「宰相、何故お前がここにいる?」

 「なに、会議中に嫌な予感がしたから、早めに終わらせて帰ってきたんだ。まあ、帰ってきて正解だったな」


 くそ、見つかった。

 せめて情報だけでも引き出して……。


 「宰相、ここにいる魔物は、一体どういう事だ?ここで何をしていたんだ?」

 「ふむ、良いだろう。冥土の土産に教えてやる。ここにいる魔物は研究用の素材だ」

 「研究……?」

 「魔物の力を得る為の研究だよ」

 「っ!ま、魔物の力を?」

 「ああ、そうだ。魔物の力は凄いぞ?溶岩を平気で泳ぐ魔物も居れば、一撃で大岩を粉砕出来る魔物も居る。この力を私が使えれば、他の奴等よりも、一歩上を行く事が出来る!」

 「俺達を奴隷にしようとしたのも、同じ理由か……?」

 「ん?何故その事を知っている?確かに私は術式に細工を施した。だが、何故だか知らんが、失敗したのだ。勇者という強大な力を持つ存在を実験台にしたかったのだが……」


 やっぱり、そうだったか。

 しかし、俺達を実験台だと?

 やはり、こいつは殺しておかないと、危険だ。


 「おっと、少し話しすぎたな。もういいだろう?せめて、最後に私の研究成果を見せてやる」


 宰相がそう言うと、周りの魔物達が一斉に動き始めた。

 宰相が腕を振り下ろす。

 すると、魔物達が一斉に襲いかかって来た。

 俺は、攻撃を避け、時にカウンターを加えていく。

 宰相が笑いながら言ってきた。


 「クハハハハッ!!どうだ、凄いだろ?研究をしていく内、魔物の死体を強制的に動かす方法を見つけたんだ」

 「へー、じゃあこいつら、死体なんだ」


 でも、流石に頭と胴体を分断すれば、動かなくなるだろ。

 俺は、攻撃を避けながら、一匹、一匹と、着実に動かなくしていく。

 そして、遂に最後の魔物が動かなくなった。


 「ば、馬鹿な………」

 「さて、お前の番だ……」

 「わ、私をなめるなぁぁ!!お前など、これを使えば一瞬なのだ!ひれ伏せ!この私の研究成果の前に!!!」


 宰相はそう言って、薬の様なものを飲み込んだ。


 「ぐ、グワァァァァァォォォォォオオ!!」


 宰相は叫び声を上げながら、どんどん身体を変えていった。

 年老いた身体は膨れ上がり、3m以上大きくなり、頭からは牛の様な大きい角が生え、口からは大きな牙が、背中には蝙蝠の様な翼と鰐の様な尻尾が生えていた。

 


 「ば、化物………」

 「グババババ!ドウダ、オドロイタカ!ワタシハ、カンセイサセテイタノダ!マジュウノチカラヲ、ワタシハテニイレタノダ!!」

 「っ!!」


 宰相が拳を横に振るってくる。

 俺は、それを後ろに下がり避けた。


 (今の速さは普通の人間が出せるスピードじゃない!だが、今の動きは…………)


 宰相はがむしゃらに俺を狙って、殴り付けてくる。

 その攻撃は部屋を破壊し、戦場は中庭に変わる。

 しかし、その拳は一撃も俺には当たらない。


 (やっぱりそうだ!宰相は戦闘に関しては全くの素人なんだ。これなら……!)

 「ヌワァァ!ナゼダ!ナゼアタラナイ!?」

 「はっ!」

 「ッ!?ぐ、グワァァァ!!!??!?」


 俺が背後から振るった一撃は、宰相の左腕を肩から断ち切った。

 大きな片腕が中を飛んでいく。

 宰相は怒りに満ちた視線をこちらに向け、言った。


 「キサマァァァ!!ユルサン!ゼッタイニユルサンゾ!!!」


 また怒濤の攻撃をしてくるが、先程と同じ様に、背後から今度は右足を膝で断ち切った。

 宰相は叫び声を上げながら、崩れ落ちる。

 こちらを睨みつけてくるが、その身体は魔物のものから人間のものへと戻り始めていた。


 「まあ、これでもう動けないだろ」


 俺が一息つくと、向こうから誰かが近づいて来た。

 あれは、御夏達か?


 「おーい、満月ー!」


 その時。

 満身相違の筈の宰相が、懐から何かを取り出した。


 「せめて、勇者、だけでも……!」

 「!?皆!避けろ!」


 宰相が皆に向かって何かを投げた。

 皆は混乱してその場から動けていない。


 「くそっ!我慢しろよ、皆!」


 俺は、ダークボールを六つ放ち、皆にぶつける。

 威力を最小限に留めたダークボールをくらった皆は、後方に勢い良く吹き飛んだ。


 「ぐっ!?」


 皆を避けさせた俺は、宰相の投げたものを避けきれずに、くらってしまう。

 すると、足元に魔法陣が現れ、光出した。

 それと同時に、とてつもない痛みが襲いかかってくる。


 「あぁぁぁぁぁ!!!」


 自分の身体が、別のものへと変えられていくのを感じる。

 これは、まさか……!


 「ま、満月?お、おい!お前!これはどうなってる!?満月はどうなるんだ!!」


 皆が宰相に武器を向け、御夏が宰相に疑問をぶつけている。

 宰相は薄笑いを浮かべながら答えた。


 「クフ、クフフ。わ、私が投げた、のは、人を魔物化させる、魔法を、込、めた、魔道具、だ……。あ、あれをくら、うと、身体に、激、痛が、はしる。身体、の、変化に、耐え、られなけ、れば、死、ある、のみ………」

 「なっ!た、助ける方法は無いのか!?」

 「ふ、ふふふ、そ、んなも、の、つくる、ものか………」

 「そ、そんな……」

 「ま、満月……………」


 宰相の言葉に皆がこっちを見るが、それに反応を返す余裕は無い。

 だが、皆が心配してくれているのだ。

 ここで敗けれる訳ねぇだろ!


 「オォォォォォォオオオ!!!」


 俺は最後の気力を振り絞って、魔法に対抗する。

 すると、魔法の力が消えるように無くなった。


 「耐えきれた、のか?………っ!!?!」


 気を緩めた瞬間、身体中から血が吹き出した。

 俺は地面に倒れ込み、血を吐き出す。

 俺が倒れると、皆が駆け寄って来てくれた。


 「満月!大丈夫か!?」

 「鏡君、生きてる!?」

 「満月、大丈夫なのか!?」

 「満月君、大丈夫ですか!?」

 「満月、平気!?」

 「ま、鏡君、その傷……」

 「へへ、皆、なんて、顔、してんだよ」

 「だ、だって、お前……」

 「ああ、ゴフッ、せ、精神は、耐えきれた、が…、肉体の、方が、耐えきれ、なかった、みたい、だ……な」


 あー、情けねぇ。

 もっと鍛えときゃ良かったかな。


 「お、おい、御夏。最後に、伝え、とく、ぞ。あい、つ、宰相、が、俺達を奴隷化、しようと、した、犯、人、だ……」

 「最後なんて言うな!おい、雅!治癒はまだ終わらないのか!?」

 「まだ!なんで!?なんで治らないの!?」

 「そ、りゃあ、俺、が、もう、気力だ、けで、生きて、るから、だろう、な…。おい、皆………、最後に言っておく………」


 俺の言葉に、皆が俺を見てくる。

 ふっ、結構面白いの思いついたぜ。


 「俺は必ずこの世界に戻って来る!」


 どうだ、会心の出来だろう。

 はは、気が遠くなってきた。

 じゃあな、皆。


 「何言って………満月?満月!?」

 「え、嘘、嘘でしょ………?」

 「満月……、くそぉぉ!!」

 「ま、満月君………」

 「満月君が、し、死ん…………」

 「い、嫌ぁぁぁぁぁ!!」


 こうして、俺、(かがみ) 満月(まんげつ)は死んだ………筈だった。



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