4話 魔法の属性
俺は小太刀を右手で逆手に持って、アグマスに向けて走る。
その速さに自分でも驚くが、アグマスから意識は反らさない。
とはいえ、このまま突っ込んでも、御夏の二の舞になってしまう。
なので………
「なっ!?」
アグマスが剣を振り下ろし始めた瞬間、アグマスの頭上に向けて跳ぶ。
背後から空中に浮いたまま、背中を切りつけようとしたが。
「ヌワァァァァ!!」
「ぐっ!?」
アグマスが強引に剣を横に振ってきた。
小太刀でなんとかそらそうとしたが、そらしきれずに吹き飛ばされた。
まあ、予想出来たので、一回転してから着地したが。
俺は立ち上がって、アグマスに話しかける。
「アグマスさん、これくらいでいいかい?」
「ああ、充分だ。お前はセンスがありそうだな。ただ、もう少し体力の事を考えた方が良いぞ。あれじゃ、直ぐにバテちまう。」
「はい、了解です!」
まあ、俺は体力が無限だから気にしなくても平気なんだけどね。
その後も、訓練は続いた。
唐草はやはり弓を、深冬は盾と槍を、煉城は杖を、柳静はハンマーを、雅はメイスを使っていた。
皆も、最後はアグマスさんに吹き飛ばされてたな。
皆との手合わせが終わった後、アグマスさんが言った。
「えー、皆と戦った結果な。まず、ミカ、マンゲツ、ミアキ、ミフユ、リュウセイは俺が教える事になる。ミハルとチヨは魔法を主体にした戦い方になりそうだから、ある程度の使い方を覚えたらキュシアに教えて貰え。じゃあ、さっそく始めるぞ。今日は素振りだ。ミアキは端にある的に向かって射ち続けろ。」
アグマスさんが言うと、皆が散らばり、それぞれ自分の武器を振り始めた。
俺も小太刀を構え、時折蹴りも交えながら素振りを続けた。
俺は体力が無限なので、ペースを落とさずに続けられる。
それからずっと素振りを続けていると、アグマスさんが声をかけてきた。
「なあ、マンゲツ。」
「?どうしたんですか、アグマスさん。」
「そろそろ夕食の時間になるから、今日はもう訓練は終わりだ。なにより、お前以外は全員バテちまってる。」
「はい、分かりました。」
周りを見ると、確かに全員汗を流して、膝をついている。
訓練を終えた俺達は、アグマスさんとわかれて、移動する。
部屋に着くと、それぞれ自分の名前が書かれたプレートが置かれた椅子に座った。
「はぁー、疲れたー!」
俺のこの言葉に、唐草が疑問の声をかけてくる。
「鏡君、貴方、本当に疲れてるの?」
「ん?当たり前だろ?」
何でそんな事、聞くんだ?
「だって、ねぇ?」
「うん、鏡君は、全然バテて無かったし、最初の手合わせでも、鏡君だけ余裕っぽかったし。」
「そうだよね。満月は、本当に何も習って無かったの?」
煉城と柳静が聞いてくるが、本当に何も習ってなんかいない。
「本当だぞ。何も習ってない。」
「ふむ、満月は戦闘関する才能があるのかもな。アグマスさんもそう言ってたし。」
「そうかもね。御夏だって吹き飛ばされてたし。」
「い、今それは関係無いだろ!」
その日は、笑いながら過ぎていった。
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次の日、俺達は、訓練場でキュシアさんに魔法を教わっていた。
「いいですか、勇者様。この世界には、魔素というものがあります。それは火、水、風、土、無の基本属性、雷、氷、光、闇、時空の上位属性の五つに分かれています。私達の身体に流れている魔力は空気中の魔素が私達の身体を器にして、溜まったものです。人によって、溜まる魔素が違い、それがその人の使える属性になります。中には複数の属性を持っている人もいますよ。」
ふむふむ、成る程。
じゃあ、俺は闇属性は必ず使えるが、他の属性も使えるかもしれないんだな。
「魔法を使うには、魔力操作のスキルが必要です。魔力操作を使って自分の魔力を動かして、魔法を出したい場所に集めます。そして起こしたい現象をイメージしながら、魔法の名前を唱えます。では、今から実演しますね。」
キュシアさんはそう言うと、杖を的に向けて唱えた。
「<ファイアーボール>」
すると、杖の先に30~40cmの球状の火が現れ、的に飛んでいった。
火の球は、的に当たり弾けた。
「今使ったのは、火魔法の初級魔法です。今回は、魔力をそれほど込めなかったので、威力はありませんでしたが、本当はもっと強いですよ。それと、操作が上手くなれば、魔法名を唱えなくても使える様になりますよ。では、使える属性を調べますので、こちらの水晶に魔力を流してみて下さい。」
そう言って、キュシアさんは透明な球を差し出してきた。
それを御夏が受け取り、こちらを向く。
「なあ、誰からやる?」
「御夏でいいだろ。なぁ?」
俺の言葉に、皆が頷く。
それを聞いた御夏は、水晶を見つめる。
多分、魔力を流してるんだろう。
すると、水晶の中に、白い光と灰色の光と、それより少し小さい赤い光が現れた。
おぉー、綺麗だな。
皆も水晶を見て、驚いている。
「ミカさんは光属性と時空属性、それよりは弱いですが、火属性が使えるみたいですね。三属性もなんて凄いですよ!」
キュシアさんのテンションが、少し上がっている。
それだけ珍しいのだろう。
キュシアさんが言うには、火属性は赤色、水属性は青色、風属性は緑色、土属性は黄色、無属性は無色、雷属性は紫色、氷属性は水色、光属性は白色、闇属性は黒色、時空属性は灰色の光が現れるらしい。
その後、皆もやって、唐草は風と雷、深冬は水と氷、煉城は火と水、柳静は土と雷、雅は水と光を使えるのが分かった。
「じゃあ、俺の番か。さて、何が使えるのかなー。」
せっかく異世界に来たんだ。
魔法は使いたいからなー。
「鏡君の事だから、また何かあるんじゃない?」
「うん、私もそう思う。」
「僕もそう思うな。」
「わ、私も…。」
「僕もそう思うよー。」
「ていうか、ほぼ決定事項じゃないか?」
好き放題言いやがって……。
お、出た出た。
俺の属性は……黒だけ、か?
はぁ、マジか。
皆、二属性は持ってるのに…。
「マンゲツさんは闇属性ですか。これもかなり珍しいですよ!」
まあ、珍しいみたいだから良いか。
「それと、一人しか持っていない固有属性とかもあります。これは生まれつきで、最初からステータスに載ってるそうですよ。さて、皆さんの属性が分かったので、実際に使ってみましょう。使える魔法は念じれば頭に浮かぶ筈です。」
てな訳で、それぞれが的に向けて魔法を放つ。
俺が使えるのは、ダークボールみたいだ。
他の皆も~ボールを使ってる。
初級は~ボールなのか。
俺も、手を前に出して、魔力を集める。
そして、真っ黒な球が真っ直ぐ飛んでいく様にイメージする。
「<ダークボール>」
すると、イメージ通りに黒い球が現れ、的に向かって飛んでいった。
ダークボールは的に当たると弾けて、的に大きな傷を残していた。
キュシアさんのところに集まり、また話を聞く。
「皆さん、魔法を使えたみたいですね。魔法は使えたら、後はその人の訓練しだいです。頑張って下さいね。」
その後は、昼食までそれぞれ魔法を撃って終わった。