第23話 久しぶりの森
昼食をとった後は、直ぐに部屋に戻ってきた。
さて、この後は何をしようか。
毎回、やる事は午前中に終わってしまうので、午後はその日の気分で決めているのだ。
「今日は……………久しぶりに、森にでも行くか。Lv上げも、そろそろ再開したいし」
てな訳で、今日は森に行く事になった。
庭に出て、黒鴉之紋翼を使って、空に飛び上がる。
どんどん上昇し、ある程度高くなったら、森に向かって飛ぶ。
速度はとても速く、直ぐに森の上空に着く。
あの湖に降りて、スキルを解いて元の姿に戻る。
「あ、顔も隠しとかなきゃな」
買ったばかりの魔道具を取りだし、口に巻いて後ろで縛る。
通気性……OK、結び目……OK、うん、不便は全く無いな。
「じゃあ、魔物は……居た!」
小太刀を二つ共抜いて、気配があった方向に走る。
直ぐに魔物は見つかった、あれは、コボルトか?
「まあ、あいつなら、俺のステータスだから大丈夫だろ」
俺は後ろから近づき、一気に飛び出してコボルトの首をはねる。
「ありゃ、こんな簡単に終わっちゃったよ。つまんないなぁー」
物足りない俺は、魔石だけを回収して、次の魔物のところに向かった。
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あれから数十分経った後、俺は魔物を更に四匹倒して、湖に戻ってきていた。
畔に座り、ステータスを確認する。
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【レミアーク・ファル・リューナー】
【種族・人間】
【職業・暗殺者/道化師】
【Lv6】
体力 ∞
魔力 5719
筋力 137
耐久 194
敏捷 671
【固有スキル・吸収/不屈/黒鴉之紋翼】
【特殊スキル・無音行動/天駆/二刀流/闇化/道化/仮面】
【通常スキル・小太刀術/気配察知/魔力感知/魔力操作/隠蔽/礼儀作法/闇魔法/看破/詐術/無魔法/時空魔法/操糸術】
【称号・勇者/闇の化身/転生者/公爵家三男/嘘つき/麒麟児/紋翼の使い手】
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「結構上がったな、五匹倒しただけなのに。やっぱり称号の効果か?まあ、早く強くなれるのは別に良いんだが」
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【特殊スキル・仮面】
【まるで仮面をつけたかの様に、本心を顔に出さない様に出来る。】
【通常スキル・看破】
【見たものの情報を、鑑定よりもより詳しく視る事が、出来る。】
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この二つのスキルは、前のスキルの強化版みたいだな。
スキルを確認したら、俺は立ち上がって身体を伸ばす。
「んーっ、さて、もう充分休んだし、再開するか!って言っても、流石にもうちょっと強い魔物と戦いたいな。もっと奥に行ってみるか」
俺は小太刀を抜きはなって、木の枝を渡りながら、奥に進んでいく。
奥に進むにつれて魔物は強くなっていくが、数は少なくなっていくので、どんどん奥に進んでいく。
同時に、冒険者の数も少なくなっていく。
そのまま進んでいくと、探知に反応があった。
しかし、これは………………………。
(何かを追いかけているのか?追われているのは………魔物人間みたいだ)
別に、森の奥に人間が居ても、おかしくはない。
だが、それは、その人間が冒険者だった場合だ。
探知では、この人間は冒険者どころか、戦いを全く知らない様な、弱々しい反応がする。
行くべきか、行かざるべきか………。
(まあ、行くに決まってるよな。気になるし、見ないふりをするのも、後味が悪いし)
その反応が通りそうな場所に移動して、隠れながら待つ。
そいつらは、直ぐにやってきた。
追いかけている魔物は、赤い肌の、巨大な鬼だった。
鬼の額には、立派な角が二本上に向かって、生えている。
あれは、多分オーガという名前の魔物だろう。
探知の反応や実際に感じる雰囲気からしても、あの魔物はかなり強く感じられる。
鬼に向けて、鑑定を使う。
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【種族・オーガ】
【Lv17】
【通常スキル・威圧】
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種族はオーガだった様だ。
種族的には普通の部類に入る強さみたいだな、いくら強くても、俺からしたら簡単に倒せそうだし。
追われていたのは、エルフの女の子だった。
薄汚れていてよく分からないが、エルフなのだから、綺麗な顔立ちなのだろう。
女の子にも、鑑定を使ってみる。
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【エアリル・カルシャン】
【種族・エルフ】
【職業・精霊術師】
【Lv1】
体力 38
魔力 519
筋力 26
耐久 31
敏捷 42
【特殊スキル・精霊視/精霊魔法】
【通常スキル・家事】
【称号・族長の娘/精霊の友】
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エルフで精霊か………なんか、定番みたいな感じだな。
あ、エルフの女の子が転んだ。
オーガは、女の子に近づき、腕を後ろに引き絞っている。
エルフの女の子は腰を抜かしているのか、震えるだけでその場を動こうとしない。
仕方ない、助けるか。
俺はオーガとエルフの女の子の間にとびこんで、繰り出されたオーガの右腕を肩から切り落とし、蹴ってオーガの顔面に当てる。
オーガは自分の腕をぶつけられ、4、5m程、後ろに下がった。
俺は後ろを向いて、エルフの女の子を見る。
突然俺が現れた事にビックリして、震えは止まったみたいで、今は目を見開いて俺を見ていた。
「あ、あの、貴方は……?」
「それは後でな。安心しろ、直ぐにあのオーガは、倒してやるから。そのまま、動かないで待っとけ」
「えっ、ちょ……………」
エルフの女の子が何か言いたそうにしていたが、オーガがこちらに近づいてきたので、構えて臨戦態勢になる。
俺は一旦エルフの女の子の事は忘れて、顔に笑みを浮かべて思う。
(お前は少しは楽しませてくれよ、オーガ)
俺は視線をギラつかせて、オーガを睨む。
…………気のせいか、オーガが萎縮した様な気がした。