22話 五年後
あれから5年が経ち、10歳になった。
俺も成長して、身長はかなり伸びている。
まあ、同世代よりは低いし、確かに筋肉はついているのに、華奢に見えるが。
髪は肩辺りまで伸ばして、後ろで一つに結んでいる。
服も、リーエルさんに注文していた物を着ている。
お母様が俺が小太刀を使うと言っていたみたいで、和服をアレンジしたデザインになっていた。
この姿を見たら、初めての人は大抵二度見してしまうだろう。
背中の布を無くした、露出度が高い上半身に、忍者が履くような袴。
大きな腰布を巻いて、腕には忍者が着けるような小手、脚には翼をイメージしたデザインのブーツを履いている。
はっきり言って、かなり特徴的だ。
まあ、俺がなるのは冒険者だし、冒険者はそれぞれが色んな装備を着ているらしいから、大丈夫だろう。
貴族としてパーティーに出る時は、普通の服を着るしな。
あ、そうそう、ヘミル兄様は今年15歳になったので、王都の国立教育施設、不変学園に通うために、王都で暮らし始めた。
たまに帰ってくるが、学園で魔法も学んでいるので、魔法剣士本来の戦い方が身に付き、剣の腕も上がったので、かなり強くなっていた。
セリフィ姉様は剣術の腕も上がり、貴族の令嬢としての風格が出てきた。
まあ、まだ俺に対してはデレデレのブラコンだが。
スレア兄様は、10歳になった時に魔道具の先生が見つかり、その人に習う為に王都に引っ越した。
ヘミル兄様はそこに一緒に暮らしている。
こっちは特に変化は無いかな。
と、ノックの音がして、廊下からリーグルさんの声が聴こえてきた。
「レミア様、もうすぐ時間だが、まだ行かなくて良いのか?」
あ、やべ、そうだった。
今日はアキュレとチャールと訓練する日だった。
俺は急いで部屋から出て、リーグルさんに挨拶してから屋敷から出る。
リーグルさんは、ヘミル兄様が王都に行った後、セリフィ姉様の訓練を続けている。
って、そんな事を考えてる場合じゃないな。 街の裏道を急いで、なんとか空き地に着いた。
「おーい、アキュレ、チャール!」
「あ、やっと来たか、レミア」
「遅いよ、レミア君」
アキュレとチャールも成長して、強さもかなり上がっている。
Lvはまだ上がって無いが。
「ごめんごめん。ちょっとボーッとしててさ」
「まあ、別に良いけどよ。早く訓練始めようぜ!」
アキュレは身長もかなり伸びて、同世代でも高い方だ。
筋肉もしっかりついていて、この前リマスさんに作って貰った大剣も、今では体の一部の様に使えている。
礼儀作法も、なんとか覚えさせる事が出来た。
「そうだね、今日も頑張らなくちゃ!」
チャールは身長は低いが、女の子っぽくなってきている。
胸も少し成長してきたし、顔も整ってるから、将来は美人になるだろう。
今では、五属性の全ての初級魔法を使える様になっている。
「よし、じゃあ始めるか。今日もいつも通り模擬戦だ。かかってこい!」
「はい!行きますよ、師匠!」
「行きます!」
と、二人と模擬戦が始まる。
ここ数年はずっと模擬戦を続けてきた。
対人の戦闘訓練になるから、結構俺も助かってるんだよな。
まあ、俺も強くなっているので、二人に負ける事は無いが。
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それから数時間後、空き地には汗だくになったアキュレと、疲れきった表情のチャールが倒れていた。
俺は汗すら流さずに立っている。
体力が無限だから、汗なんて流れないんだよな。
まあ、暑くなると流れるけど。
「二人共、そろそろ昼になるから今日の訓練は終了だ」
「だぁー、今日も勝てなかったかー!」
「あはは、レミア君には当分勝てそうにないね」
「当たり前だ。俺だって鍛えてるんだし。それより、お前ら孤児院に帰らなくても良いのか?」
ニャームさん、怒ると怖いんだが。
今までも、何回か遅れて怒られたらしいし。
「あ、ヤバい、またニャームさんに怒られる!急ぐぞ、チャール!」
「う、うん、ちょっと待って、まだ歩けない……」
チャールは魔力を切らしていて、まだ動けないみたいだ。
因みに、この二人の関係は変化していない。
二人共、互いに好きな様だが、全然気づいていないのだ。
そうだ、せっかくだし、アキュレにアドバイスしてやるか。
「おい、アキュレ」
「ん?なんだよ、レミア」
「…………、………………」
「はっ!?え、俺が!?」
「お前以外に誰がやるんだよ!さっさとやれ!」
俺の激励に、アキュレがチャールに近づいていく。
「ち、チャール」
「アキュレ、ごめん、先行って………って、えぇぇぇ!?ちょ、あ、アキュレ!?」
「あー、もう!さっさと帰るぞ!じゃあな、レミア!」
「おう、じゃあな」
アキュレは俺のアドバイス通り、チャールをお姫様抱っこして帰っていった。
これで少しは進むと良いんだが……多分、無理だろうなぁー。
「と、俺も行かないとな。今日は市場で魔道具を探さなきゃだし」
俺はそう言って、来たときとは別の大通りに向かう。
そこで開かれる、露店で掘り出し物を探す為だ。
服は一応魔物の素材で作られているらしいから、普通の服よりは丈夫だ。
ただ、首から上につける装備が無い。
公爵家の息子だって分かると、なにかと面倒だろうから、顔を隠したいんだよな。
だから、俺はたまにこうやって街で探しているのだ。
と、着いた着いた。
「今日はどんなのがあるかなー」
大通りを歩いて、様々な露店を見ていく。
この街の人達は、俺の事を知っているので、顔は隠さなくても大丈夫だ。
まあ、公爵家の者だって事は知らないだろうけど。
と、露店の品物を鑑定しながら見ていくと、露店で気になる商品を見つけた。
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【魔道具・隠密の黒布】
【真っ黒な布。これをつけると、気配が薄くなって隠れ易くなる。】
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なんで魔道具がこんなところにあるんだ?
ちょっと聞いてみるか。
俺は露店のおじさんに話しかける。
「なぁ、おじさん。この黒い布っていくらで売ってるんだ?」
「あ?ああ、それは俺の家の物置にあったやつだよ。欲しいんなら勝手に持っていきな。全然売れやしねぇ」
「ふーん、じゃあ有りがたく頂くよ」
これで変装?の為の装備は大丈夫だな。
この布を口に巻いて隠せば、まあバレはしないだろう。
さて、他の露店にも行きたいが、昼もまだ食ってないし、一度屋敷に戻るか。