18話 孤児院
「はい、そろそろ休憩だ」
「はぁー、疲れたー」
あれから数時間後、もうそろそろ昼になるので、休憩にした。
アキュレはやっぱり才能はあるみたいだ。
間違っていた点を指摘したら、直ぐに直して、俺が教えた事も直ぐに覚えていった。
まあ、まだまだ拙いが。
さて、じゃあチャールにも休憩って伝えてくるか。
「おーい、チャール。休憩にするぞ」
「あ、うん!分かったー」
チャールは、あれからずっと真面目に集中していた。
「それで、魔力は感じとれたか?」
「んー、何かぼんやりとは分かる様な気がするけど、はっきりは分かんない」
凄いな、完全では無いが、魔力を感じとり始めている。
この二人は………才能って凄いんだな。
二人は努力もしてるから、尚更だ。
「それで、二人は昼食はどうするんだ?」
「あ、もう昼か、やべぇ!ニャームさんに怒られる!チャール、行くぞ!」
「うん!あ、そうだ。レミア君も来ない?私達、孤児院に住んでるの」
「ああ、それ良いな!来いよ、レミア」
「迷惑じゃないのか?」
「「全然!」」
「じゃあ、お邪魔させて貰おうかな」
俺達は孤児院に向かった。
孤児院はここの近く、大通りを挟んだ向こう側にあるらしい。
俺達は昼食に遅れない様、急いで走る。
本当に直ぐ近くだったみたいで、孤児院にはあっという間に着いた。
孤児院は、建物は結構古いがちゃんと手入れがされていて、汚さは一切感じない。
庭もちゃんと整えられてるみたいだ。
「レミア、何してんだよ、早く行くぞ」
「ああ、すまんすまん」
アキュレ達と一緒に孤児院の庭に入る。
アキュレが建物の扉を開けた。
すると…………。
「遅いぞ、アキュレ、チャール!!!」
「「!!!!!」」
「全く、お前等は何度注意したら、って、その子供は誰だい。見た事無い顔だねぇ」
「初めまして、俺はレミアっていいます。簡単に言うと、今日二人と友達になりました」
「そうかい、私はこの孤児院をやってるニャームってもんだ。一応シスターだよ」
ニャームさんは恐らくドワーフだ。
背は小さいが、何て言うか、こう、お母さんみたいな感じを抱かせる。
妙に安心する人だな。
「わりぃ、レミア!ニャームさんは任せる」
「ごめんね、レミア君!」
「あ、お前等、ちょっと待ちな!ったく、最近更にやんちゃになりやがって」
二人はニャームさんの横を抜けて、奥の扉に入っていった。
ニャームさんが溜め息をついた後、話しかけてきた。
「レミアっていったかい?あんた、どっかののお坊っちゃんだろ」
「おや、気づかれちゃったか。何で気づいたんだ?服装も言葉使いも、気をつけたつもりなんだが……」
「フンッ、大体の雰囲気で分かるんだよ」
「そうなんだ。では改めて自己紹介させて頂きます。私はリューナー公爵家の三男、レミアーク・ファル・リューナーと申します」
俺の言葉に、ニャームさんが表情を変える。
「……あんた、領主様の子供だったのかい。それに、さっきとは喋り方が全然違うねぇ。どっちが本当のあんたなんだい?」
「どっちも本当だよ。リューナー公爵家の三男は私、俺は俺。話し方は変えなくていいよ。堅苦しいの苦手だから」
「そうかい、まあ、上がっていきな。飯が冷めちまう」
「あ、アキュレ達には黙っておいてくれよ。その方が面白いから」
「あんた………性格悪いねぇ」
ニャームさんが扉を開けてくれた。
中は広い大部屋だった。
子供達が沢山椅子に座っている。
「ガキ共、アキュレ達が友達を連れてきたよ!ほら、自己紹介しな」
「はいはい、俺はレミアだ。宜しくな」
「「「「「宜しくー!」」」」」
皆元気良いな。
俺より下の奴は居ないみたいだ。
俺はアキュレの隣に座る。
チャールは逆の隣だ。
ニャームさんの合図で皆が食べ始めた。
「レミア、うまいだろ、この料理!」
「ああ、うまいな。何か隠し味でも入れてるのかね?」
素材はありふれた物なのは分かるが、流石にそこまでは分かんないな。
「それより、この後も訓練はするのか?」
「いや、この後はこいつらと遊ぶ約束してんだ!孤児院のルールだな!」
「レミア君も、一緒に遊ぶ?」
「うーん、悪いけど、今回は遠慮しとくよ。やりたい事もあるし」
「そっかー、残念だなー」
「あ、そうだ。レミア、次はいつ訓練する?場所はあそこで良いだろ?」
「そうだな、俺はいつでも大丈夫から明日かな。アキュレ、お前は走り込みしておけよ、腕立て伏せも。体力は必要だし、腕力は大剣使うなら大事だしな。チャールはさっきと同じで魔力を感じとれ」
「おう、了解!」
「分かった!」
うん、いい返事だ。
そんな感じで、色々話ながら、楽しく昼食の時間は過ぎていった。
「じゃあな、アキュレ、チャール。それにニャームさんも」
「また明日な、レミア」
「じゃあね、レミア君」
「またいつでも来な!」
俺は孤児院を出て、大通りに向けて歩く。
さて、そろそろリーグルさんに話しかけてみるか。
俺は隠密を最大限発揮して、裏道の一つに入る。
そして、壁を上りリーグルさんの後ろに回り込む。
「あれ、今消えた様な………あ、とにかく探さなきゃ!」
「どうかしたんですか、リーグルさん」
「どうもこうも無いよ。奥様にちゃんと見張ってろ、って言われてたのに……って、ええぇぇ!!れ、レミア様、何で後ろに!?」
驚いてる、驚いてる。
って、あれ。
何か転生してから悪戯が好きになってる気がするな。
んー、思いつくのは職業か?
道化師だし、あり得なくはないだろ。
ま、今はリーグルさんだな。
「そんなのどうでも良いじゃないですか。それより、リーグルさん。リマスさんがやってるお店、知りませんか?」
「え、リマスのおっさんの?何でそんなところに?」
「知ってるなら、連れていって下さい」
「………分かったよ。こういう所は奥様に似てるんだから、質がわりぃや」
「何か言いましたか?早く行きますよ」
「へいへい、こっちだよ」
リーグルさんは、諦めた様に案内をしてくれた。
どんどん裏道を進んでいく。
30分位歩いて、ようやく着いた。
「うん、確かに。ありがとうございました、リーグルさん」
「別に案内をしただけだが……」
「じゃあ、行きますよ」
「え、ちょっと、おい!?」
俺は扉を叩きながら、中に呼び掛ける。
「リマスさーん、居るんでしょ?扉、開けて下さーい!」
「うるせぇ!誰だ、てめぇは!」
リマスさんが、扉を急に開けて出てきた。
俺は後ろに下がって、避けている。
リマスさんが俺に気づいて、話しかけてくる。
「ああ?何だ、レミアじゃねぇか。随分久しぶりだなぁ、おい!」
「お久しぶりです、リマスさん。中に入っても良いですか?」
「おう、上がっていきな。あ?リーグルも居るじゃねぇか」
「よう、おっさん。俺はレミア様の護衛だよ」
「お前、ピリアムの所に雇われてたのか。まあ、良い。さっさと入れ」
リマスさんに促されて、中に入る。
中は、前に来た時と何も変わっていなかった。
俺とリマスさんは椅子に座り、話始める。
リーグルさんは、護衛だから俺の後ろに立っている。
「リマスさんも変わってませんね」
「ほっとけ。それで、今日は何の用で来たんだ?遊びに来た訳じゃ無いんだろ?」
「うん、実は訓練用の木剣です。大剣の」
「大剣?木剣は作れるが、お前は大剣なんて使わないだろ?」
「友達の訓練に使いたいんですよ。その子が騎士になりたい、って言うから訓練してあげる事になりまして」
「成る程ねぇ、レミアの頼みだからなぁ。仕方ねぇ、明日そいつを連れてこい」
「じゃあ?」
「作ってやるよ」
ふぅー、良かった。
ここ以外知らないから、断られたら大変だったんだよな。
「ありがとうございます、リマスさん。では、今日はこれで失礼させて頂きます。これから街を散策したいので」
「何だ、もう行くのか。また来いよ、レミア」
「はい、また来させて頂きます。じゃあ、行くよ、リーグルさん」
「はいよ、じゃあな、リマスのおっさん」
俺達はリマスさんの工房を出て、歩き始める。
少し歩くと、リーグルさんが話しかけてきた。
「レミア様、この後は何処に行くんだ?」
「ん?普通に街を散策しますよ?まだちゃんとやって無いですし」
最初はそれが目的だったしな。
でも、何処に何があるか全く分からないな。
「リーグルさん、案内してくれますか?」
「ああ、お安い御用だ!」
あー、楽しみだなー。
どんなものがあるんだろ?