17話 街と友達
えー、俺は現在、お母様に対面しています。
その顔は笑っていますが、目がちっとも笑っていません。
「それで?その髪と眼はどうしたの?」
「いや、お母様、何を言っているのですか?意味が分からないんですが」
何?なんか変わってるのか?
お母様が無言で手鏡を差し出してくる。
俺はそれを受け取り、見てみる。
……お母様が言う通り、俺の髪は毛先が黒くなっていて、右眼が紅くなっていた。
「レミア、話してくれるわよね?」
「はい、その、昨日の夜、スキルを試したんです」
「スキルを?どんな?」
「それは言えませ「どんな?」………翼を生やすスキルです……」
「……へぇ」
お母様は驚いた表情を浮かべるが、直ぐにさっきの顔に戻る。
「そのスキル、見せてくれる?」
「いや、流石にそれは「いいわよね?」……はい、じゃあ、【黒鴉之紋翼】」
俺は服を脱いで、翼を出す。
「うぅ、酷い…………」
「あのね、レミア。私は心配なのよ。大事な子供が妙に大人だから。だから、少しは私達にも話して欲しいな」
「う、はい、分かりました……」
こんなに心配してくれるんだもんな。
でも……………。
「おはよう、マリア。って、レミアもか」
少しはやり返さないとな。
俺はお父様に抱きつく。
「うおっ、レミア、どうしたんだ?って、何で裸なんだ?」
「お母様が、お母様がぬげってー」
「なっ!」
「何!それは本当なのか、マリア!」
「ち、違うわ!そんな事、言ってないわよ!ね、レミア、言ってないわよね?」
「で、でも、早く脱いで、見せろ、って」
「そ、それは…………」
フッフッフ、言質は取ってあるのだ。
「マリア、後で部屋に来なさい!」
「そ、そんなー……」
お父様はそう言うと、自分の席に座った。
お母様は床に力無く膝をつく。
俺はお母様の肩に手を置いて言う。
「お母様………」
「れ、レミアー!」
「子供をからかうと痛い目にあいますよ」
「ふぬぅぅぅ!!」
いやー、お母様の珍しい顔も見れたし、満足だなー。
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翌日。
今日は街を探険する事にしました。
「じゃあ、街に行ってきまーす」
俺は玄関から堂々と屋敷を出る。
街に向かい歩くが、うーん。
後ろから気配がついてきてるんだよな。
この気配は………リーグルさんかな。
多分、護衛みたいなもんなんだろうけど。
さて、街に着いた。
「じゃあ、最初は……やっぱり大通りかな。店も一杯あるし」
俺は大通りを進む。
あ、お金は持ってるよ。
お母様にたっぷり渡されたんだ。
お、あそこの屋台、旨そうだな。
「おっちゃん、それ一つくれ!」
「あいよ!何だ、坊主。お前一人か?金はちゃんと持ってるんだろうな」
「持ってるよ、ほれ。これで足りるだろ」
「金貨!?坊主、お前もしかして……。いや、詮索はしないぜ。ほらよ、お待ち!」
「おぉー、旨そー。ありがとな、おっちゃん!」
「おう、また来いよ!」
買ったのは、サンドイッチだ。
食べながら歩くが、やっぱり旨い。
やっぱり街は良いなぁー。
次はどこに行こうか。
って、ん?今のは、子供?
裏道に入っていったが……。
服装からして、貧民区の子供かな。
待てよ?面白い事、思いついたぞ。
俺は気配察知でさっきの子供を追いかける。
当然、俺のステータスの方が高いので、あっさり追いつくが、そのままあとをつける。
やがて、その子供は貧民区の中にある、少し広い空き地の様な場所に来た。
そこには、他にも子供が居るみたいだ。
「おい、遅いぞ、チャール」
「ごめんっ、ちょっと寝坊しちゃって」
「そうだぞ、寝坊なんて良くあるだろうが」
「それはそうだがなぁー………って、うおっ!?お、お前、誰だ!?」
おやおや、男の子は驚いてるねぇ。
女の子の方は男の子の背中に隠れてるけど。
「よお、俺は………レミアっていうんだ。宜しくな」
俺が素直に自己紹介したからか、子供達も警戒が解けたみたいだ。
やっぱり、こういう所は子供だな。
「で?お前等は何て名前なんだ?」
「俺はアキュレだ!宜しくな、レミア」
「わ、私はチャールだよ。宜しく」
………ふーむ、二人共、体や服装は汚いが、意外と顔が整ってる気がするんだが。
アキュレは活発な男の子みたいだな。
赤銅色の髪はボサボサで伸び放題だが、その顔は逞しさを感じさせ、緑の瞳はキラキラと輝いている。
チャールは臆病な女の子の様だ。
水色の髪は少しは手入れされていて、少し垂れた水色の瞳で少し心配そうに俺見ている。
「それで、二人は何してたんだ?」
「これから二人で遊ぶんだ!今日は仕事がない日だからな!」
「それでここで待ち合わせをしてたの。あの、レミア君は何でここに?」
「いやー、大通りでチャールを見かけてさ。なんか、着いてったら面白そうだなー、って」
俺の言葉に二人は呆れた顔をする。
「レミアって意外といい性格してんだな」
「私、全然気づかなかったんだけど…」
「まあ、そんな事どうでも良いじゃん。それより、今日は何して遊ぶんだ?」
「騎士ごっこだ!」
「えー、またそれー?」
「何だ、アキュレは騎士になりたいのか?」
「おう、俺は騎士になって、人を助けたいんだ!」
そう言いながら、アキュレは手に持った棒切れを振る。
その構えは無茶苦茶で、とても騎士にはなれそうにない。
才能は有りそうなんだけどなー。
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【アキュレ・ヒーオル】【種族・人間】
【職業・剣士】
【Lv1】
体力 42
魔力 31
筋力 36
耐久 37
敏捷 28
【特殊スキル・剣の可能性】
【通常スキル・掃除/逃走】
【称号・剣士の卵】
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これがアキュレのステータスだ。
本当に才能は有りそうだけどなー。
あ、そうだ!
「でもよー、アキュレ。その剣の振り方、全く出来てねぇぞ」
「な!じ、じゃあどうしろってんだよ」
「そう、そこで良い事を思いついたんだ。アキュレ、俺が剣術を教えてやる!」
「はぁ、お前、そもそも戦えるの「これでも戦えないと思うか?」…いえ、思いません」
アキュレが文句を言ってきたので、実力を見せつける為に、瞬時に後ろに回り込み、首に手刀を当てる。
うん、分かってくれて何よりだ。
「じゃあ、剣術、習うか?」
「ああ、頼むぜ、レミア!」
「訓練の時は師匠と呼べ!それに、騎士になるなら、ちゃんとした礼儀作法も覚えなきゃ駄目だぞ」
「フフッ、アキュレが礼儀作法なんて覚えられるのー?」
「なっ、覚えるに決まってるだろ!宜しくお願いします、師匠!」
うん、切り替えが早いな。
鍛えれば、かなり手強くなりそうだ。
ところで………。
「チャールはどうするんだ?お前、アキュレの事、す「れ、レミア君、ちょっと待って!」何だ?」
チャールに突然腕を掴まれて、少し離れた場所に連れて行かれた。
チャールが動揺した様子で聞いてくる。
「れ、レミア君、何で分かったの?あの、その、わ、私が、アキュレの事、好きだって…」
「何でって言われてもなぁ」
あんなにあからさまじゃあ、気づかない方がおかしいだろ。
アキュレと話す時は凄い嬉しそうだし、ずっと腕を掴んでるんだもんなぁ。
「見てれば気づくだろ」
「そ、そんなに?」
「まあ、さっき言ったのは、その方が面白い反応が見れそうだと、思ったからだが」
「な、れ、レミア君!って、あれ?レミア君は!?」
そろそろ話を進めたいので、アキュレのところに戻る。
こっちに気づいたチャールが何か言っているが、俺はどうにもできん。
「それで、チャールは結局どうするんだ?」
「もうっ、私はアキュレについてくよ」
「ほうほう、もう離れたくないと「レミア君!」はいはい、じゃあ、話を戻すが、チャールも訓練に参加するか?」
「え、私も?私は剣なんて出来ないけど…」
「剣じゃないよ。お前が出来るのは、魔法だな」
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【チャール・ネーシェ】【種族・人間】
【職業・魔法使い】
【Lv1】
体力 21
魔力 73
筋力 23
耐久 37
敏捷 35
【特殊スキル・魔法の才能】
【通常スキル・料理】
【称号・魔法使いの卵】
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何でこんな逸材が二人も居るんだろうな?
「ま、魔法!?私に魔法が使えるの?」
「ああ、だから訓練は別だな。チャールはまず、自分の中にある魔力を感じとれ。それが出来たら俺に言え」
「え、でも………」
ちょっと不安そうだな。
仕方ない、あの言葉を言ってやるか。
「アキュレと一緒に居たいんだろ?」
「っ!分かった!やる!」
チャールはそう言って、集中しはじめた。
よし、じゃあ今度はこっちだな。
「よし、こっちも始めるぞ、アキュレ」
「はい!師匠!」
「だが、剣が無いな……。仕方ない。今日はその棒切れでやるか。じゃあ、アキュレ。お前が使いたい武器は何なんだ?」
「剣だけど?いや、ですが?」
「いや、どの種類の剣を使いたいのか、って事なんだけど……」
「なら大剣だ、です」
ふーん、成る程。
「じゃあ、まずは構えてみろ」
「はい!」
フフフ、存分に鍛えてやる。
お前等、覚悟しとけよ?