表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者召喚!かと思ったら転生!?こうなったら精一杯生きてやる!!  作者: 冷星 夜姫
新しい家族~新たな始まり~
16/25

閑話~鏡 満月の死後~


 side~御夏~


 満月が死んでから、一週間が過ぎた。

 俺達は、満月の死を乗り越えられずに、バラバラになってしまっている。

 食事の時に一緒にはなるが、皆顔が沈んでいて、無理をしているのが分かる。

 特に酷いのは雅だ。

 あいつが満月に好意を持っていたのは見て分かったが、今は部屋から出てこない。

 だが、このままでは…………。


 「いつまでもこのままじゃあ、駄目だよな。満月が守ってくれたのに」


 一度皆で話し合うか。

 それで、今後の事を決めなきゃいけない。

 皆に伝えると、今夜、俺の返事に集まる事になった。

 問題は雅だな。

 俺は雅の部屋の扉をノックする。


 「雅、俺だ、御夏だ。今後の事について話したい。今夜、俺の返事に来てくれ」


 中から返事は無い。

 俺はその場から離れて、自分の部屋に向かう。

 来てくれれば良いんだが………。


 「ん?あれは………」


 部屋に入ると、机の上に紙が置いてあった。

 出る前は無かった筈だが……。

 紙を手に取り、見てみると、そこには一文だけ、文字が書かれていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 夜になった。

 雅以外の全員が、既に部屋に集まっている。

 誰も口を開かず、沈黙がこの場を支配する。

 扉からノックの音が聞こえた。


 「入ってくれ」

 「………………」


 雅は黙ったまま部屋に入り、空いている場所に座った。

 その顔は、前に見た時よりもやつれている。

 俺は椅子に座り、話を始める。


 「皆、今日集まって貰ったのは、今後の事を決める為だ。皆はどうしたいと思っている?俺は皆の意見を尊重したいと思っている」

 「それは、戦いに参加するかしないか、って事かな?」

 「それなら、私は戦うわ。鏡君が私達を守ってくれたんだもの。彼は戦おうとしてたわ。私が立ち止まっている訳にはいかないもの」


 観秋は決然とした表情で言った。

 どうやら、彼女も自分の意思で、既に決めていたみたいだ。

 弥春も観秋に続いて話しだす。


 「私も戦います!満月君の為にも、頑張って邪神を倒したいです」


 弥春も決めてあったみたいだな。

 

 「それにしても、随分満月と仲良くなってたみたいだな、弥春?」

 「えっ!?な、何でですか!?」

 「いや、煉城さんを見てれば、気づくと思うよ、満月をどう思ってたかはさ」


 柳静が言った通り、ある時から、弥春の満月に対する態度が変わったのだ。

 満月自身は気づいて無かった様だが。

 弥春は、羞恥に顔を真っ赤にしている。

 思わず、皆から笑いがこぼれる。


 「俺も勿論戦うぞ。この中で一番強いのは俺だしな。深冬と柳静、それに雅は、どうするんだ?」

 「僕も戦うよ!皆に任せるだけなんて、嫌だから」

 「勿論、僕も戦いに参加させて貰うよ。君達を放っておけないしね」

 「……私も、戦う。満月君の為にも…!」


 良かった、皆、少しは元に戻れたみたいだ。

 これなら、あの紙を見せても、大丈夫だろう。


 「皆に話があるんだ。これを見てくれ」


 俺はポケットからあの紙を取り出して、皆の前に差し出す。

 そこには、「俺はこの世界に戻ってきた!」とだけ、書かれていた。

 雅は気づいたみたいだな。


 「御夏、これがどうかしたのかい?」

 「ああ、皆は満月の最後の言葉を、覚えてるか?」

 「え、確か「俺は必ずこの世界に戻って来る!」だった様な……あ!」

 「気づいたか?これは……」

 「満月君からの、メッセージ……?」

 「ああ、多分な。あの時は、周りには俺達しか居なかったし、間違いないだろう」

 「満月がこの世界に居る、って事?」

 「そんな、あり得ないでしょ」


 まあ、そう思うのは当然だよな。


 「だけど、俺達はこうやって、勇者として異世界に召喚されてるんだぞ?転生だってあるかも知れない」


 俺の言葉に、皆は息を呑む。


 「それにあの満月だしな。何とかして、戻って来るだろう」

 「ねぇ、御夏。貴方、最初から妙に鏡君を信頼してたけど、向こうで面識があったの?」

 「ん?ああ、昔、ちょっとな。せっかくだし、話しておくか」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あれは、俺が中学生の時だ。

 その時には、俺は武術を習っていて、少し天狗になってたんだ。

 ある日、学校から家に帰る途中に、他校の不良が俺の学校の生徒を恐喝してるのに、でくわしたんだ。

 俺は天狗になってたから、当然首を突っ込んだ。

 その時は不良をボコボコに出来たし、生徒も助けられたんだ。

 でも次の日、下駄箱の中に手紙が置いてあったんだ。

 それで呼び出されて、街の外れにある廃工場に行ったんだ。

 そしたら…………。


 「よおぉー、待ってたぜぇー、正義の味方君」


 ボコボコにした奴等が、仲間を連れてやって来たんだ。

 数は100人位だった。

 普通なら逃げるだろう?だけど、俺は……。


 「さっさとかかってこいよ、雑魚が」

 「こんの、糞野郎がぁぁ!!」


 案の定、ボコボコにされたよ。

 数で攻められて、何をする暇も無く。

 その時は、何で俺が、俺は強い筈なのに、ってそればかり考えてたな。

 でも、その時、突然後ろの方にいる不良が吹き飛んだんだ。

 何事かと思った。

 不良はどんどん倒れていって、数分後には、もう不良は全滅してたんだ。

 満月は息を全く切らさずに、その場に立っていた。

 俺は動けなかったよ。

 自分が弱いって気づかされてな。

 満月は気がついたら居なくなってた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「それで、その後は勉強にも武術にも、もっと真面目に取り組む様になったんだ」


 なんか恥ずかしいな。

 俺の話を聞いた観秋が言った。


 「御夏にそんな事があったんだねぇ。あの時の入院にも、納得がいったわ。じゃあ、治予は何で鏡君を好きになったの?」

 「私は、高校の一年の時に、先輩に虐められてたんだ。でも、満月君が助けてくれて、それから気になりだしたの」

 「はぁー、満月って向こうでも強かったんだね」


 皆もう大丈夫だな。

 次は俺達の目的だな。


 「じゃあ、俺達の今後の目的は、転生した満月の捜索と、邪神を倒して世界を救う。これで良いか?」

 「うん、大丈夫だよ。満月君、絶対見つけてやるんだから」


 はは、弥春も相当満月に惚れてるな。

 待ってろよ、満月。

 直ぐに見つけてやるからな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ