14話 教会と紋章
あれから二年が経った。
俺も五歳になり、今日はステータスを貰いに教会に行く日だ。
今は、お父様とお母様と一緒に馬車に乗っている。
セリフィ姉様とスレア兄様の時は、ヘミル兄様と同じ様に直ぐに指導者が雇われた。
セリフィ姉様にはリーグルさんの紹介で冒険者のお姉さんが、スレア兄様には教えられる人が居ないので、沢山の本と道具が与えられた。
独学でやれ、って事だな。
セリフィ姉様は最初は剣の訓練を嫌がっていたが、俺が「格好いいです、セリフィ姉様!」と褒めると、自分からやる様になった。
スレア兄様は本と道具を貰ったら、直ぐに自分の部屋で本を読み始めてたな。
「レミア、教会に着いたぞ」
おっと、もう教会に着いたみたいだ。
教会は凄い大きかった。
「お父様、綺麗な建物ですね」
「ああ、教会は神様を奉ってある場所だからな。常に清潔にしてるんだよ」
俺は二人に連れられて、教会の中に入る。
教会の中は、綺麗に整っていて、どこからか神聖さを感じさせた。
奥には大きな女神……リーエミナの像が、天井からの光に淡く照らされている。
俺達は女神像の前まで進み、膝をついて祈りを捧げる。
祈りを終えて立ち上がると、女神像の横にある扉から、白いローブを着たお爺さんが出てきて、お父様に話しかけてきた。
「公爵様、本日はいらして頂き、ありがとうございます。して、本日はなに用で?」
「ああ、チャーク神父、二年ぶりだな。今日は、家の三男が五歳になったから、ステータスを貰いに来たんだ」
「成る程、そういう事でしたか。では、早速始めますかな?そこの子で宜しいですか?」
「ああ、レミア、ご挨拶を」
「はい、お父様。初めまして、神父様。私はレミアーク・ファル・リューナーと申します」
「これはご丁寧に。私はこの教会の神父をさせて頂いている、チャーク・ミクエスと申します」
チャーク神父は、人の良さそうなお爺さんだった。
「では、チャーク様。こちらの女神像に触れてください」
チャーク神父の言う通りに女神像に触れる。
すると、チャーク神父が呪文の様なものを唱え始めた。
「【女神リーエミナよ、この小さき命に可能性を、道標を与えたまえ】…ステータス!」
すると、女神像が輝き、その光が俺の中に入ってきた。
俺は女神像から手を離し、首を捻る。
これで、ステータスが変化したのか?
チャーク神父が声をかけてくる。
「レミア様、これでステータスが見れる様になっている筈です。ステータスを見るには、頭の中で«ステータスオープン»と念じれば、見れますよ」
分かってるよ、一回聞いてるし。
俺はステータスを確認する。
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【レミアーク・ファル・リューナー】
【種族・人間】
【職業・暗殺者/道化師】
【Lv1】
体力 ∞
魔力 5217
筋力 41
耐久 83
敏捷 168
【固有スキル・吸収/不屈/黒鴉之紋翼】
【特殊スキル・無音歩行/天駆/二刀流/闇化/道化/ポーカーフェイス】
【通常スキル・小太刀術/気配察知/魔力感知/魔力操作/隠蔽/礼儀作法/闇魔法/鑑定/詐術/時空魔法】
【称号・勇者/闇の化身/転生者/公爵家三男/嘘つき/麒麟児/紋翼の使い手】
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おお!スキルに魔法が増えてる!
時空魔法が転生したから手に入った奴だろう。
称号も新しいのが増えてるし。
まあ、ちゃんと詳細を見るのは、後だな。
「レミア、ステータスはどうだった?」
「はい、ちゃんと見れましたよ、って、どうかしたんですか?」
俺が振り向くと、お母様が驚いた顔をした。
お父様とチャーク神父も同じ顔をしている。
「レミア、お前、その顔の紋章はどうしたんだ?」
「レミア、大丈夫?なんとも無いわよね?」
「はい、さっきまでとかわりありません」
俺の返事に、二人は安心した様に溜め息をつく。
てか、そんなものがついてるのか。
そう言えば、黒鴉之紋翼の説明に体に紋章が出る、ってなってたな。
何で無いのか不思議だったけど、ステータス更新したから、今出てきたのか。
お父様がチャーク神父に、話を聞いている。
「チャーク神父、これはどういう事なんだ?」
「恐らく、固有スキルの類いの影響ではないかと思われますが、詳しくは……」
「そうか……。レミア、ステータスはどうなってるんだ?」
「そうね、レミア、ステータスを教えて?」
「え、嫌ですよ」
「「「!?」」」
いやー、いくら親でも教える訳無いじゃん。
お父様とお母様が兄様達のステータスを知っていたのは、兄様達が嬉しくて自分から話したんだろうけど、俺はそんな事はしないからな。
「ど、どうしてだ、レミア?」
「何を言ってるんですか、お父様。自分のステータスを教えないのは当然でしょう」
俺の堂々とした言葉に、お父様は少し困った表情を浮かべている。
と、突然お母様が笑い声を上げた。
「フフッ、フフフッ。確かにレミアの言う通りね。他の人のステータスを無理矢理見るのは、やっちゃいけないもの」
「だがなぁ、マリア……いや、それもそうか。ヘミル達が自分から言ってきたから、少し忘れてたな。レミア、ステータスに触ると詳しい説明が見れるから、ちゃんと確認しておくんだぞ」
「はい、お父様!」
「フフフッ、じゃあ、用も済んだし、屋敷に帰りましょうか。チャーク神父、今日はありがとうございました」
「いえ、神父の仕事の一つですから」
俺達はチャーク神父にお礼を言ってから、馬車に乗って、屋敷に向かった。
お母様が言ってきた。
「レミア、今ステータスで詳しい説明を見てくれない?全部は教えなくても良いけど、その顔の紋章についてだけは、教えて欲しいのよ」
「………分かりました、それだけなら。ステータスを確認しますね」
まあ、親なら突然子供の顔に紋様がついたら心配だろうしな。
俺は一応、黒鴉之紋翼の説明を見てみる。
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【固有スキル・黒鴉之紋翼】
【鴉の様な漆黒の翼を背中から出す。その翼を出している間は、飛ぶ事が出来る。身体の何処かに翼の紋章が現れる。空を飛ぶ時は体力を消費する。】
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あれ?何か変わってるな。
新しく増えた称号のせいかな?
それっぽい名前だったけど。
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【称号・紋翼の使い手】
【黒鴉之紋翼を所持している者。紋章が、常に現れる様になる。スキルの効果が強くなる。】
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あー、やっぱりそうだったか。
まあ、強化されたみたいだし良いかな。
「レミア?確認出来た?」
「あ、はい。チャーク神父が言った通り、固有スキルの効果みたいです」
「そうか。じゃあ、心配は要らないんだな?」
「はい、安心してくれて大丈夫です」
「あ、そうだわ。レミアには、どんな人をつければ良いのかしら?」
「そうだな。ヘミル達の時は、職業を言ってくれたから直ぐに手配出来たが、今回はな。レミア、お前はどんな風にして欲しい?」
どんな人を、か……………。
一応、アグマスさんに近接戦は認められてるからな。
だとしたら……魔法、かな。
「出来れば、魔法を教えてくれる人か、魔法に関する本を頂ければ……」
「魔法か。なら、あいつに任せれば良いんじゃないか?」
「あいつ?ああ、エチスね。良いんじゃないかしら。じゃあ、そっちは決まりね。レミア、他に欲しい物はない?」
どうやら決まったみたいだ。
エチスって言うのは、メイド長の名前だ。
それにしても、他に欲しい物か。
黒鴉之紋翼を使うと、背中の服が破れるだろうから、服を買って貰うか。
「じゃあ、背中が露出した服を。例のスキルを使うと、服が破けてしまうので」
「分かったわ。リーエルに注文しておくわね」
そうやって話している内に、屋敷に着いた。
あー、魔法の授業、楽しみだなー。