11話 冒険者、リーグル
今俺は、家の応接間?で、お母様に抱き上げられている。
今は魔力の訓練はしていない。
お母様は魔力感知を持っていたから、怪しまれたらマズイと思ったのだ。
それはそうと、ここでこうしているのは、ヘミル兄様の剣術の先生が、今日来る事になっているからだ。
ヘミル兄様の職業が魔法剣士だと分かった両親は、その日の内に先生を手配したのだ。
隣では、ヘミル兄様がソワソワしている。
その時、扉からノックの音が聴こえた。
「奥様、客人を連れて参りました」
「分かったわ、入りなさい」
「はい、失礼します」
メイドさんが扉を開けて、男の人が部屋の中に入ってくる。
お母様とヘミル兄様は、立ち上がって出迎える。
「初めまして、奥様。私はリューナー家からご長男の剣術の指導を依頼されました、冒険者の、リーグル・サリーダと申します」
入って来たのは、30台位の男性だった。
逞しいその肉体の上に、傷だらけの衣服と軽装を身に付けている。
だが、それは数多くの経験の威厳をかもし出していた。
だが、それよりも気にするべき事がある。
(獣耳……尻尾……!)
そう、このリーグルさんには、人間の耳は無く、代わりに獣の耳と尻尾がついていたのだ。
あれは猫の耳かな?色は髪と同じ青色をしている。
「あら、ご丁寧にどうもありがとう。でも、普段通りにしてもらっていいのよ。これからしばらくの間はこの家に居るんですから」
「いや、ですが……」
「いいですね?」
「………はい、いや、分かった。そこまで言われたら従うよ。で、俺が教えるのはそこの坊主で良いのか?」
「ええ、ヘミル、ご挨拶しなさい」
お母様に促されて、ヘミル兄様が一歩前に出て、挨拶をする。
「初めまして、リーグルさん。私はリューナー家の長男、ヘミルード・フゥル・リューナーと申します。ヘミルとお呼び下さい」
「いや、こちらこそ。それに、貴族のお坊っちゃんが、俺にそんな風に喋らなくても…」
「いえ、私は教えて貰う身ですので」
「……分かった、じゃあ俺の事は師匠と呼べ。まずは気持ちからだ」
「はい!」
自己紹介が終わったので、ソファに座ってこれからの事を相談するみたいだ。
「で、ヘミル様に剣術を教えれば良いんだよな。何かしちゃいけない事とかあるか?」
「いえ、リーグルさんがしたい様に教えて貰って大丈夫です。ヘミルは何か要望があるかしら?」
「いえ、師匠に全てお任せします」
「じゃあ、決まりだな。今日から始めるんだったか?」
「はい、そうなってます。その前に部屋に案内しないといけませんね」
お母様がそう言って、小さなベルを鳴らす。
すると、メイドが直ぐに来て、リーグルさんを部屋につれていった。
ヘミル兄様は、訓練着に着替える為に部屋に戻っている。
俺はお母様に抱き上げられて、部屋に移動している。
お母様は俺を連れて、書庫に寄ってから部屋に戻ると、絵本を読んでくれた。
ああ、早く夜にならないかな。
嬉しいんだけど、流石に絵本はいいんだよねー。
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あれから1か月が経った。
リーグルさんも、すっかり家族に馴染んでいるし、俺にもよく構ってくれる。
ヘミル兄様も、剣術を学べて充実しているみたいだ。
だが、俺がやる事は以前と変わらない。
今も、書庫で本を探している。
今回探しているのは、迷宮について書かれた本だ。
今日の剣術の訓練で、リーグルさんがヘミル兄様に話していたのだ。
迷宮では、魔物が産み出されるらしい。
中には宝箱とかもあるので、迷宮は国が管理している様だ。
今はまだ行けないが、将来は冒険者になって迷宮にも行ってみたいので、調べておく事にしたのだ。
(えーと、あった、これだ。題名は『世界の迷宮』か)
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目次 1.<テークラン王国・不変迷宮>
2.<シュリバラク王国・可変迷宮>
3.<アーチノム森国・大樹迷宮>
4.<ガウフィス帝国・鋼鉄迷宮>
5.<エンヒルツ魔国・異端迷宮>
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今回は、今居るテークラン王国の迷宮、不変迷宮について読む。
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1.<テークラン王国・不変迷宮>
特徴
・イレギュラーが起こりにくい
・宝箱の質が変わらない
・魔物の種類が変わらない
備考
この迷宮は初心者が挑むには丁度良い。
最初はここで腕試しをしてみよう。
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(最初はここで、か。安全性は高そうだし、俺も最初はここに行こうかな)
将来の予定が一つ決まったな。
その日も、魔力の訓練をして終わった。
そして、月日は流れる。