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第10話:掘っ建て小屋を作り直そう

 例によって、地獄の窯を覗いている自分が居た。

 何度も死にかけていると、まるでここが本当の居場所のように感じる。


「ああ、平和だなぁ。世は並べて事も無し」

『死にながら平和を実感しないで下さいね、スペランカー・タクヤよ』


 女神様の声が天から俺に届く。


「日々、小さな事の積み重ねを幸せと感じたいんです」

『自分の生き死にを何だと思っているのですか、貴方は』

「んー。毎朝、歯を磨き忘れるよりは頻繁にある事でしょうか」


 呆れてものも言えなくなったらの、静かになる女神様の声。

 復活させてくれるのは嬉しいけども、死ぬ度に怒られるのは嫌だなぁ。


『あの、私は何も貴方を死なせる為に生き返らせている訳じゃないですよっ』

「信じます。ところで、リアの事なんですが」


 無人島で俺をサポートしてくれるはずだった、女神の化身の少女リア。

 しかし、前回はなぜか俺の前に姿を現さなかった。


『彼女は……謹慎しています』


 女神から返って来た答えは、意外な物だった。


「どうしてリアが?」

『彼女の役割は、貴方の無人島生活をサポートする事です』


 なのに、と女神様は続ける。


『結果はむしろ逆で、貴方の足を引っ張るばかり。故に謹慎処分としました』

「そりゃ違う。俺の足を引っ張ってるのは死神だ」


 事あるごとに死んでいるのは俺だ。

 そんな俺を助けようとしてくれる彼女を、どうして足手まといと思えようか。


「リアを解放してやってくれ。俺には、彼女が必要だ」

『そうですか。いえ、貴方ならそう言うと思っていましたよ』


 地獄の空から慈愛の光が降り注ぐ。

 俺が復活する兆候だ。


『彼女を待たせます。会って、話をしなさい』


***


 俺の身体の上に崩れ落ちているシダの山。

 せっかく作った俺の掘っ建て小屋は、見事に骨組みだけとなっていた。


「やれやれ、また作り直しか」


 命を守るはずの俺の家が、俺自身の命を奪って崩壊している。

 うーん。まぁ良いか。


「やり直しができる。それがどれほどに幸福な事か」


 普通、命は一つしかない。代わりの無いものだ。

 スペ体質の俺には、その大切な命を守る事が本当に難しい。

 女神様の『無人島を生還すれば、体質を改善する』という提案は、魅力的だ。

 それこそ、何度でも命を賭けても良いくらいに。


「この無人島生活には、俺の一生を賭ける価値がある。だから助けて欲しい、リア」


 俺の前に、美しい毛並みの小熊が現れた。

 リアは女神の化身だ、いろんな姿に変身できる。


「でも私、何度も失敗ばかりして」

「心配するな、俺が笑って死ぬだけだから」

「これ以上、辛い思いをさせたくないんです」

「心配するな、辛いと思う前に死んでいるから」


 俺は大袈裟に笑ったが、小熊のリアは顔色すら変えない。

 うーん、困ったなぁ。


「そうだっ。リア、君が集めてくれた資材で小屋が完成したんだ」


 言って、俺は崩れた小屋のシダを再び整え始める。

 間違って切れたフレームを蔦で補強し、どんどんシダを積み重ねた。


「俺一人だったら、これらを集めるだけで何度死んでいるか分からないよ」

「でもその資材が崩れて、タクヤさんは死んでしまったんですよね」


 おお、知ってたか。

 ただまぁ、崩れたのは完全に俺の過失なんだけどな。

 そんな事にまで責任感を持つ必要は無い……でも、責任を感じちゃうんだろうな。


「ああ、まぁ確かにリアの言う通りだ」

「やっぱり私、タクヤさんの迷惑に」

「リアのおかげで『資材では一回しか死ななくて済んだ』よ」


 そうなのだ。

 どうせ俺は死ぬ、それはスペランカー体質者の宿命だ。


「死ぬ回数を少なくできるんだ、リア。君が協力してくれればっ」


 俺はリアに向けて手を伸ばしつつ、そう断言する。

 彼女だけがこの無人島で唯一、俺を助けてくれる存在だ。


「君になら殺されたって構わないっ。一緒に来てくれ、リア」

「タクヤさん……」


 この命を賭けた絶叫に、小熊はおずおずと鼻先を寄せて来た。

 どうやら、分かってくれたようだ。


「えーっと、あの、私はこっちですけど」

「はい?」


 リアの声が小熊の背後から聞こえてきた。

 目前の小熊から顔を上げると、そこには見慣れた白い狼が。

 あれ、じゃあコレは?


「その子は無人島の野生動物ですね」


 白狼がそう言うと同時に、小熊が俺の手に頬を寄せて懐いてくる。

 むむぅ、どうやら勘違いだったようだな。


「いやぁ、ヌイグルミみたいに可愛いから、リアだと勘違いを……」


 ズシーンッ。

 間違えた照れ隠しに口説き文句を話し出す俺の、言葉を遮るように地鳴りがした。

 小熊が、地鳴りの主に向けて嬉しそうに駆け寄る。


「ふしゅるるるるっ」

「あ、小熊って必ず親熊と一緒に行動するんですよ」

「知ってる、うん知ってる」


 俺だって野生動物のテレビ番組くらい見た事ある。

 だから知ってる。

 そして小熊に近寄るモノには容赦しない。それも知ってる。


「さて。一眠りしたら一緒に小屋を作り直そうな、リア」


 俺は明るくそう言って、白狼のリアに笑いかける。

 何度失敗しても良い。どんなに弱くても関係無い。

 諦めない限り、やり直しができるんだから。


「はいっ、お待ちしております。タクヤさん」

「グァアアアアアォオオオオ!」


 ちーん。

死因:さまよい込んできた小熊を守る親熊に襲われて死亡。


来世に続く!


読んでくださり、ありがとうございましたっ。

次回の更新は、翌日の昼11時頃を予定しています。

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