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妙な学園生活  作者: rouge
5/20

お泊り高校、朝〜昼

「うそだ………きっと悪い夢だ…」

地面に突っ伏す俺。

「はぁ〜?何喋ってるんだよ。さっさとこれ運ぶの手伝え!」

光が手に持った、折りたたみのテントを渡してきた。

きっと読者の皆様には、理解不能だろう。

話は今朝にさかのぼる。



今朝――

ルルルルルルル

朝っぱらから誰だよ。

「はい、神野です」

「あ、神野君かね。鶴山だが」

なぜ朝から、醜いハゲの声を聞かなければならない。

受話器を下ろそうとする手を、全力で阻止する。

「なんですか」

こんな時間に電話がかかってきたということもあり、非常に最悪な予感がする。

「いきなりなんだが、校長先生が『今日は私の人生経験を話そう。学校に泊り込む準備をして来てくれ』と言ってな。臨時で学校に泊まることになった」

校長の声はそんな声ではない。

気持ち悪い声色を使わないでくれ。

「そんな、急に無理です」

「持ち物は、入浴に必要なものと着替えのみでいい。飯はみんなで作るから」

シカトかよ。

「入浴ってどこでするんですか」

「ちなみに、参加しない人は今のところいない。もしいた場合は、成績に大きく反映させてもらう」

(会話は成り立っています)

「な…それはひどいと思いますよ」

「校長先生は時間に厳しいからな。10時までには来てくれよ」

(会話は成り立っています)

「それにはみんな了承しているんですか?」

「………………………………」

(会話は成り立っています)

「では、早く来て準備を手伝ってくれ」

「ちょっと待…」

ガチャ、ツーツーツー

おいコラ……

「使途ー!どうしたの?」

お・ま・え・の・し・わ・ざ・か

「ぎゃー使途が怖いよー!まさに子供を狙う犯罪者の目!これからあたしは何をされちゃ……」

「何もせんわ!」

お泊り保育ならぬ、お泊り高校などあってはならんだろ……――



「はぁ………」

俺は昨日、<明日は普通の学校生活が送れるといいな>と望んだ。

しかしミクはあろうことか、<学校でお泊りがしたい>と望んだらしい。

俺の望みのほうが、ミクよりも弱かったというのか……

「おい!早く運べって!」

ん?

「なぁ光。急に学校に泊まるなんて、変だと思わないか?」

そうだ、きっとみんなだって嫌だと思って……

「いいじゃん。楽しそうだし」

ナ〜〜〜イ。

「ゴメン。俺が馬鹿だった」

仕方なく荷物を運ぶのを手伝う。

「お前、今日も頭おかしいか?」

真剣な顔で、腹の立つことを言ってきやがって……

「言っておくが、俺がおかしいのではない。俺以外がおかしいんだ」

光の周りにクエスチョンマークが飛び交う。

「保健室連れてってやろうか?」

「お前の秘密ばらしてやろうか?」

一瞬で黙った。

これは中々使えそうだな。

テントをすべて運び終えると、ちょうど昼ごろだった。

ピンポンパンポン

「作業を一旦終了し、体育館に集合してください」

アナウンスが流れる。

俺達は体育館へと向かう。

「昼飯なんだろうな〜?」

「どうせ中学ん時みたいな給食だろ」

体育館に着いた……いや、体育館じゃないかも……

「おおおおおお!」

海鮮料理、黒毛和牛のステーキ、お寿司、フランス料理、その他多数の、莫大な費用をかけたと思われる料理が、ずらりとテーブルに並んでいた。

「うわぁ〜おいしそうだね!」

「うんっ!」

向こうのほうで、凛とミクと海野が仲良く話している。

おいおい、ここは公立高校だぜ。

ミク、お前は校長がこれからどれだけ辛い思いをするか、まったく分かっていないだろう。

「おい、これすげぇな……」

確かにすごいが、変だと感じないお前らのほうがすごいぞ。

「どうした?嬉しくないのか?」

「おかしいと思わないのか?」

俺の話を最後まで聞かずに、我こそにと食を求めて走っていった。

「まぁいい。俺は知らん!」

どうせなら少しでも多く堪能して、校長の辛さを減らしてやろう。

「ん〜美味だな」

いろいろと食べ歩いていると、声をかけられた。

「あら、使途1人?そっか、彼女いないし仕方ないよね〜」

もっと違う言葉をかけてほしかった。

「そういうお前はどうなんだ?」

凛は1人で俺の横に立っている。

「雫とミクちゃんは2人で楽しんでるからっ」

「花園と仲良くなるの、早過ぎないか?」

「誰かさんのほうが早いんじゃない?」

皮肉を言いながらステーキを皿に取っている。

「ぁーそうそう。こないだの続きだけど…」

「ちょっ、ちょっとステーキ取りすぎなんじゃないかっ?」

何とか話題をそらさねば…

「どうしよ〜あんまり食べると太るしなぁ…でも今日くらい…」

コイツもそういうことは気にするんだ。

考えた挙句、凛はステーキ一枚だけを戻した。

「っで、あんたは……」

「おお!あれは俺の大好物の切干大根じゃないかっ!」

向こうのテーブルを指差す。

おいおい、もっとまともな言い訳は思いつかなかったのか。

俺のばかやろぉ〜

というか切干大根だけ、場違いなような気が……

「あんたって、切干大根好きだったっけ?」

「ぉ、おう!大好きだ!」

嫌いではないぞ。しかし好きでもない。

「う〜ん。最高!これはきっと最高の大根を使ってるな!」

「ふ〜ん」

探るような目で見つめてくる。

そんなに見つめないでほしい。恥ずかしいじゃないか。

「おいしいぞ!うん!」

バクバクと食べる…が、さすがにこればっかじゃ嫌だ…

「せっかくこれだけ料理あるんだし、他のも食べよ?」

「おう」

凛と一緒に色んなところを回る。

ちょっと待てよ。もしかしてこれは、他から見れば……カップルなんじゃないか!?

ぉおお!この上ない嬉しさ。人生始まって以来の彼女(仮)…しかも凛!

「さっきから言おうと思ってるんだけどさ、」

「昼食の時間って何時までだっけ!?」

凛よりも大きな声で切り返す。

「知らないわよ。」

く……何か話さなければ…

「あんた、さっきからなんか変じゃない?私の質問遮るし…」

「そんなことは無い」

あ〜!何か、何か…何か!

「じゃあ私の質問聞いてね」

むぐぐぐぐぐ…

「………うん」

しまった…次は何とかして言い逃れる方法を…

「好きな人いるの?」

いきなり核心!?(そりゃそうだろうが…)

どう答えるのがいいか……

「…………………うん」

俺のヴァ〜〜〜〜カ!!!

ここでいないって言えば終わったんじゃねーか!

「そっか」

……………あれ?

終わりっ!?

呆気ない。

でも助かった。

なんか凛が寂しそうな顔をしてるが、なんでだ?

まぁいいか。

いろんな物を食べ歩いて、凛と楽しく会話できる。

それだけで満足だ。

ピンポンパンポン

「2時までに、昼食を終えてください。また、6時までに与えられた仕事をすべて終わらせるようにしてください。」

時計の針は、1時半をさしている。

「私、行くねっ」

「おう」

あぁーあ、行っちまったよ。

「こらこら、なぜ君はあんなにも積極的に話しかけているのかな?」

「お前現れ方が唐突すぎ…」

光が隣に立つ。

さっきまでの雰囲気がぱぁだ。

「そりゃ唐突にもなるさ!お前がいなかったせいで俺は1人で歩き回ったんだぞ!」

「先にいなくなったのはお前だろう」

簡潔かつ、効果的な反論だ。

「そんなことは関係ないっ!使途が仲良く喋ってるのを見て、影で見失わないようにしながら食事を取ることが、どれほど惨めなことか分かるか!?」

「それは切ないな」

ホントに痛い子だ。

「罰としてテント運びはお前に頼む!」

それが狙いか…

「構わないが、お前は何をするんだ?」

ふっふっふと、うざい声を出す光。

「なんと、雫様と楽しくデートすることになったんだよ!」

お前もさっきの食事、堪能してたんじゃないか。

「ということでよろしくっ!」

走り去っていきやがった。

なんとも自分勝手なやつだな。

しかし光は大切なことを忘れているぞ。

テント運びはもう終わったんだよ。

午後からは俺もフリーかぁ。

「神野くーん!」

その呼び方はやめてほしい。

「なんだ花園さん」

「ミクでいいよーっ!昼から暇ならA組の教室来て!」

「昼からは暇じゃ…」

走っていった…

おい…どいつもこいつも自己中だなぁ…

ミクのところに行くのは怖いし…

あぁ…どうか、午後からも何事もありませんように…

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