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妙な学園生活  作者: rouge
17/20

決断

「……徒  使…徒…」

むぅぅ…誰だ俺を呼ぶのは…

「使徒!」

わっ!

「早く起きなさいよ!朝ごはんできてるからね!」

ミクか…

あれ――?

さっきのは夢…かな?

違う…あの唇の感触は本物だった。

ってことは…

初めての告白を受けてから凛に告白され、ミラにも…

そして凛にキスされた…

もう、何がなんだか分からない。

凛にどういう顔で会えばいいのだろう。

その前にまず……ミラに伝えないと――

朝食を食べ終えた…心の準備をする。

よし、言おう。

「ミラ、ちょっと話あるんだけど……いい?」

「あたし学校行く準備するねっ。ごゆっくり〜」

ミクは空気を読んだのか、立ち去った。

立ち去ってからピンと張り詰めた空気が流れた。

「なぁミ――」

「ちょっと待って」

ミラは目をつぶって深呼吸を2、3回すると、目をしっかりと開いて俺の目を見据えた。

その目には迷いは無かった。

きっとミラは俺がなんて言うか分かっている。

でも、それでも俺の目から目を逸らさなかった。

「いいわよ」

そんなに見続けられると――言いづらい…

見つめられるとやっぱり可愛くて…親戚じゃないなんて聞くんじゃなかった。

ミラは本当に俺のことが好きなのだろうか?

しかし俺に選択の余地はなかった。

「早く言ってよ…これでも…泣きそうなの、こらえてるんだよ?」

そんなこと目を見てたら分かる…

だんだん目が赤くなって涙がたまってくのが分かる…

でもそれを思えば思うほど言い出すのが怖くなる。

ミラ達との楽しい家での時間が消えてしまいそうで――

「ふぅ……言うよ」

一瞬ためらってしまった。

一言言えば終わりのはずなんだが、なかなか勇気が出せない。

しかしそのままでいられるはずもなくて、言った。

「桂と……付き合うことにした」

言うときにミラを見るのが怖くて、結局顔を下に向けてしまった。

「そう、おめでとう」

その言葉は俺が思ってた言葉ではなかった。

しかしミラを見ると、言葉とは正反対の表情をしていた。

無理に笑おうと必死になっているミラ。

でもそれが見るに堪えないほどうまく笑えていない。

「殴ってもいいよ?」

本気で殴られてもいいと思った。

今までミラのことを何にも考えていなかった俺が悪い。

ドラマを見ながら顔を近づけてきたときだって、ただの悪ふざけだと思って流したんだ。

ミラがいつも抱きついてくるときは、何も考えずに拒絶することしかしなかったんだ。

ミラの手が俺の前に来た。

ピンッ!

「痛っ!」

デコピン!?

「何言ってんのよ!私は使徒クンがあの子を選んだらあきらめるって言ったでしょっ」

そんなこと言っても…

「それに私も言わなきゃいけないことあるしねっ」

何か、不安にさせる笑顔だった。



「おっす」

「はよ」

下駄箱で光と遭遇。

光は昨日のことを知らない。

きっとこれからも知ることはないだろうな。

「おはよう」

光の隣で微笑んでくれたのは海野。

このごろよく2人でいるよなぁ。

そういや前までだったら俺の家にも毎日来てたのに。

「なんかあった?」

「はっは。よくお分かりで!この度ワタクシ千葉光は海野雫とお付き合いすることになりました」

いつの間に…

「っちょ…千葉君、声大きい……」

周りがチラチラ見ている。

海野は顔を真っ赤にしてうつむいている。

「先、教室行くねっ」

走っていってしまった。

光が俺を目で殺そうとしている。

「お前が悪いだろ?」

光は大きなため息を吐いて頷いた。

教室へと向かう。

「ところでさ、桂来夢をほったらかしにするほど大切な用事って何だったんだ?」

「は!?」

やべ…声が大きかった。

顔が火照ってくる。

昨日のキスが脳裏によみがえってきた。

「なんだよ突然……昨日もしかして変なこと…」

「してない!」

また声が大きかった。

上級生にジロジロ見られる…

「そんな本気で怒るなっ!冗談だって」

冗談抜きにしろ!

真剣に俺はどうすればいいか迷ってるんだよ!

「話し変わるけどさぁ、ミラちゃんって学校来るの?」

――そうだ…

「ミクちゃんがここならミラちゃんもそうだよな〜早くこねぇーかなぁ」

――

「お前には海野がいるだろっ!」

「だよなっ」

無理に笑ったのばれたかな?

やっぱ俺って最低だ。

海野と光にあった途端、ミラのこと忘れてた。

そう思うと、どう頑張っても笑えなくなった。

それは無理して笑うミラの顔がどうしても頭をちらつくから。

あと、それだけじゃない。

朝―――




「私ね、東静高校行くことにしたの」

ぇ――

それには逆に驚かされた…

「なんで?」

「別に桂さんと張り合おうなんてこと考えてるわけじゃないのよ」

でも…桂とコイツは絶対に会うことになるだろう…

桂はどう思うのだろうか。

今は既に親戚じゃないと知った身だし、嘘を言い通せる自身はない。

「作戦よ!作戦!」

作戦…?

「中々会えなくなったら使徒クンが私のほうに来てくれるようになるかもしれないでしょっ!」

やっぱりうまく笑えていなかった。

「でもさ、やっぱミクと一緒のほうがいいんじゃないのっ?」

桂の学校にミラが行くのには少し抵抗がある。

「もう、受験したの。合格ももらったわ。使徒クンの通う高校は蹴ることになるけど…もう決めたから」


『もう決めたから』


その言葉が昨日の凛の言葉と重なって


『さよなら』


といわれているようにしか受け止められなかった




―――教室には凛の姿があった。

「おはよ、使徒」

「え あ、 おはよっ」

なんかびっくりするくらい平然としていた。

が、今日話したのはそれだけだった。

時の流れは早いもので、いや、凛との会話が無かったからそう感じたのかもしれない。

気がついたら一日が終わっていた。



校門の前には桂がいた。

「っよ使徒君。帰ろっ」

「うん」

毎日来てくれるのだろうか?

それはないよなっ。

「昨日、何してたの?」

やっぱ言われると思った。

「友達のお見舞い行ってた」

「好きな人のでしょ?」

なっ!

何でこの子こんなにカンがいいのだろう。

「やっぱねぇ〜…ほんっと使徒君って分かりやすいよねっ」

そんなに分かりやすいかな?

というか…どうやって誤魔化そうか。

「大体お見舞いって言ったら好きな人か家族しか絶対行かないじゃんか」

ごもっともです。

「というか、キミね、彼女いるのに好きな人のとこいくってどうよっ!減点だよ!」

減点って点数制ですかっ。

「でも桂が昨日――」

「苗字で呼ばないっ!減点っ」

苗字で呼ばないって…名前で呼ぶの!?

来夢って…ハズっ!

絶対言えないって。

そういえば俺って凛のこと呼び捨てだった…

なんで恥ずかしくないんだろ。

まぁ慣れだろうな。

「何点満点?」

彼女との会話ってこんなこと話すのかなぁ?

「知らない。けど今日は満点っ」

「なんで?」

減点されたのに満点って…


「今日はちゃんと一緒に帰ってくれたから」


見とれてしまった。

桂のこと好きになってしまいそう…

いやいや、ならなきゃだめなんだよな。

「じゃあ私の家ここだからっ」

「え!?」

ここって俺の家からかなり近い…

なんで今まで気づかなかったんだぁ!!!

「こんなに家近いのに使徒君私のことまったく気づかないからねぇ…」

肘でツンツンしてくる。

「ごめんっ 悪かった」

なんで謝るんだよ!

「あははっ。じゃあまたねっ!」

「うん またな」



家に帰ったらすぐにベッドに横になった。

胸がドキドキして止まらない。

彼女と会話するってこんなんなのかな?

時々めちゃくちゃ可愛い顔が見られたとき、心臓が締め付けられそうになる。

俺の初めての彼女。

大切にしてやりたい。

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