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妙な学園生活  作者: rouge
16/20

初めてとさよなら

また、一日が始まる。

鳴り響く時計。

着替えを済ませ、下へ行く。

朝食はきっちり用意されていた。

しかし2人の姿はなかった。

静かな食卓。

料理はおいしいのに何か味気ない食卓。

これが今まで普通だった。

でもミクたちが来てからは違った。

ともかく、学校へ向かわないと。


あの後、家についてからミラと顔をあわせることはなかった。

俺がどんな答えを出したかは知らないと思う。

魔法を使えばそんなこと一瞬で分かるだろうが、ミラはそんなやつじゃない。

ミクとは一度会ったが、すぐに目をそらされた。

確実に俺は1人だけ別世界だった。

「おはよっ!!」

途中、声をかけてきたのは光だった。

「おう」

「こないだのことは黙っといてやったからな!」

こないだ…?

あぁ――

でも今はもう……

「ありがとな」

「おう!そういやさぁ昨日凛どうしたの?」

ギクッ。

そういや凛の気持ちも裏切ってしまったんだ。

俺が好きなのは凛……

でも付き合ってるのは桂…

俺はなにをやっているのだろう。

あやふやなままでいいのだろうか。

「凛ってさ、お前のこと好きなんじゃないの?」

ドキンッ。

なんで…知ってるんだ?

見られてた?

「それは…ない…」

「なんでそんな言い切れるんだ?今までの凛見たらどう考えたってお前のこと好きだぜ?」

そんな…

気づいてなかったのは俺だけだったのか。

「鈍いのもほどほどにしないとな」

「俺、他校のやつと付き合うことにしたから」

こんなこと昨日の今日で言うことじゃない。

でも、いつかは言わなければならない。

「そうか…頑張れよ」

この後は学校につくまで会話は無かった。

なんと言ってよいのか分からない。

どんなことを言っても今は光に拒絶されそうだった。


教室に入る前に、たじろいだ。

凛にどういった顔を向ければいいのだろう。

会ってもいいのだろうか?

言わないほうがいいか?

ちゃんと言ったほうがいいか?

「神野、突っ立てないでさっさと入れよっ!」

クラスの男子に押されて扉を開けた。

凛は……いなかった。

そんなに昨日のことが辛かったんだろうか。

申し訳無さでいっぱいになった。

「席着け〜ホームルームはじめるぞ〜」

みな席につく。

「せんせー。凛は欠席ですか?」

クラスの女子が聞く。

「熱が高いから休むそうだ」

なんだ…俺のせいじゃない。

そう思うと心が軽くなった。

あとでお見舞いにでも行こうかな。


学校が終わった。

チャイムと同時にみんな部活へ行ったり帰ったり。

俺は部活に行くことなんかなく、校門へ向かう。

「ぁ!来た来た 使徒君!」

あれは……桂っ!?

「なんでいるの?」

みんなこっちを向いている。

周りから不釣合いだとか、あれ彼氏!?とか言う声が聞こえてくる。

はいはい、俺はどうせ不細工ですよぉーだ。

「なんでって……待ってたの」

くっ…可愛い。

でも今日は凛のお見舞いに…

「ゴメン…今日用事あるんだ…」

「――そう」

悪印象だったかな?

「じゃあまたね」

走っていってしまった。

やっぱり追いかけるべきだろうか…

「ほほ〜う。あれが使徒の彼女ですか?」

「ふへ¥#いは!!!」

急に光が背後から出てきた。

「桂にお前…告ったのか?すごい勇気だな…」

「違っ!俺からじゃない…というか何でお前桂のこと……」

光は俺からじゃないという言葉に少なからず反応したが、あえて触れないような態度をとった。

「桂っていったらここらじゃ有名じゃんか。顔知らないのお前くらいだぜ?」

そんな有名だったのか。

東静一ってことは知ってたけど…

「それよりいいのか?彼女、もてるからねぇ。うかうかしてるとすぐに他の美男子に取られちゃうぜ」

そうだ…

俺、桂の彼女なんだ…

用事より先に彼女優先するのは当たり前なんだ。

何やってんだよ!もう!

でも…俺は……


ピンポーン

マンションの4階。

家にも帰らずに学校から直接むかった。

「は〜い」

出てきた凛はパジャマだったがすごく元気そうで安心した。

「……使徒」

「あ あのさっ 今日休んでたじゃん!お見舞いに…」

寂しそうな顔を浮かべた。

でも俺はもう…

「入って」

凛の部屋に入れられた。

中はとてもきれいに整っていた。

ここで凛が生活してるのか…

ここが凛のすべて…

「座っていいよ」

座ってって言われても…

凛の部屋にあるのはベッドだけ。

ちょっと恥ずかしい。

「何意識してんの。隣でいいから」

「ぁ、うん…」

なんだか凛が怖い…

俺のせいだってことは分かってる。

凛は隣にいるのに何も話せない。

言葉が見つからない。

「熱、大丈夫っ?」

違う。

いいたいのはこんな言葉じゃない…

「熱?仮病よ」

仮病!?

1人で心配して何やってんだろう…

「使徒と会うのが怖かった」

そう…だ。

はっきり言うべきなんだ。

でも…

キャンプファイアーのときに見た涙。

昨日見た涙。

声や姿は似てたのに、全然違う涙だった。

きっと話してしまったら昨日と同じ涙が流れるんだろうな…

それだけはいやだ…

「今ね、親買い物行ってるんだ。あと2時間は帰ってこない」

…誘ってるのか?

という前に…彼女いるのに部屋に彼女以外の女といるっていいのだろうか。

「ねぇ、桂さんOKしたの?」

――――

まさかいきなり核心に迫られるとは…

どう言えばいいんだろう……いや、本当のことを言うしかないんだろうな。

「分かってるよ、OKしたに決まってるよね〜」

俺が口を開こうとした途端、さえぎられた。

「桂さんホントに可愛いもんね…」

違う…俺がOKしたのはそんな理由じゃない。

彼女はすごく俺のことを思ってくれてたから…

また傷つく人を見たくなかったから…

あれ――こんな理由で付き合っていいのだろうか。

頭の中がごちゃごちゃになる。

「使徒、キスしたことある?」

ぶっ――いきなり何をっ…

「な 無いに決まってるじゃんっ」

「そっかぁ…そうだよね」

そうだって。

凛だって分かってるくせに…

俺は今まで彼女なんてできたこと一度も…

え――――?



それはあまりにも突然のことで


きっと世間からみた俺は一瞬で


そしてちっぽけなことで


でもそれが俺にはすごく長く感じられて


すごく大切なことだろうと感じて


頭の中が真っ白になった。



「えへへ…ごめんね」

凛に……キスされた………

俺は何も話せなかった。

罪悪感と嬉しさが混ざりあった気持ち。

まさに好奇心旺盛な子供が危険なことに身を投げ出そうとしている感覚に似ていた。

「使徒、これから付き合うってときにゴメンね。でもね、こうでもしないときっと使徒と私をつなぎとめておけるものは何もなくなっちゃうから」

どことなく寂しげに言う。

俺と凛をつなぐものなんてどれだけでもあるのに…

今までの時間(トキ)がきっとつなぎとめてくれるのに…

俺が好きなのは……凛なのに…………

「それに…使徒の初めてももらったし、もう満足だよ」

満足って……

そんな…だから、俺が好きなのは……

「バイバイ、使徒」

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