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妙な学園生活  作者: rouge
15/20

俺は馬鹿だ。

何1つとして言葉をかけてあげることができなかった。

ただただ、彼女の言葉を受け止めることに必死だった。

何も言うことができなかったことをすごく悔いている。

もう、傷つけてしまってからでは遅い…

携帯のディスプレイを見ると、8時と表示されていた。

こんな心境であの子にどうやって会えばいいんだろう。

「使徒ー!ご飯できたよー」

下からミクが呼ぶ声がする。

今は飯を食うような気分なんかじゃない。

でもあいつらが気を使ってくれていることは分かる。

いつもなら馬鹿みたいに騒いで俺のところに来て邪魔ばかりする。

でもそれがない。

俺の雰囲気で分かるのだろうか?

下に着くと、ミク達はもうテーブルについていた。

「来るの遅いから先食べちゃってるよ」

「あんまり量作っても食べられないから交代で作ることにしたからっ」

やはり気を使わせているようだ。

無言で食事を済ませると自分の部屋へ戻り、ベッドに横になった。

もう一度携帯のディスプレイを確認する。

8時40分。

あと20分。

どうしよう…

そういや凛に見られたってことはもしかしたら来るかも…

そんなことになったら最悪だ。

コンコン

部屋をノックされた。

いつもならノックなんて絶対しないのに…

「いいよ」

ミラだった。

「何か用?」

「9時にどこか行くの?」

なんで知ってるんだろう。

いつもなら驚くんだが、凛のことを思うと自然と心が落ち着く。

「うん」

「女?」

どう答えればいいのだろう…

「うん…」

取り合えず嘘はつかない。

今は何故かそんな気分ではない。

なんか心が落ち着いて、何でも曝け出してしまいそうだ。

前だけを、上だけを見続けてそこから目をそらしたくない。

「じゃあ先に言っておくね。私達親戚じゃないのよ」

そりゃどこまでを親戚っていうのか知らないが、遠くたどっていくと皆親戚ってなっちゃうからね。

「それで 何?」

嘘だったのか!?とか、そんな反応を期待したんだろうな、きっと。

さびしそうな顔をしている。

「それを踏まえてもう一度言うわ。私は使徒クンが好き」

……

「それはどういう意味で?」

「恋愛関係」

簡潔に返してきた。

「使徒クンがあの子を好きって言うならあきらめるわ。でも私の気持ち知っておいてほしかったの。いつもはふざけてるみたいで相手にしてもらえないから…」

まただ…

また俺は知らない間にミラを傷つけている。

「決めるのは使徒クンだから……じゃあ気をつけてね」

何もいえなかった。

どうして俺はこんなにも勇気が出せないのだろう…

どうして俺はこんなにも人を傷つけてしまうのだろう…

どうして恋をするのはこんなにもつらいものなんだろう…

8時50分

家を出よう。




「お姉ちゃん言ったの?」

「うん…」

ミクの部屋。

女の子の部屋だけあって、部屋はピンクを中心に彩られている。

ぬいぐるみもたくさんある。

「別にあたしは恋愛感情ないから張り合うつもりはないけど……ただ使徒は奪われたくないんだよね」

「私は好きなだけよ…」

はぁ…っと大きなため息をつくミク。

ミラをじっと見つめる。

「好きなのはいいけど、少しの間見ただけで好きになるのは本当の面が見えてないからかも知れないよ?それで傷ついたらダメじゃんか」

ミラは下を見て黙りこくってる。

今にも泣きそう。

どちらがお姉ちゃんか分からない光景だ。

「仮にもあたしのお姉ちゃんなんだからシャキっとしなさいよ!シャキっと!」

涙を必死にこらえるが、止まらない。

「ありがとう……」



今日朝会った場所。

何の変哲もない車のとおりが少ない道路。

そこに彼女はたっていた。

「使徒君、来てくれないと思ってたのに」

今は9時ジャストだ。

特に遅れたわけでもないのに。

「レディを待たせるのは良くないことよっ!集合時間の30分前にはいなきゃね」

この子は見た目とは違ってよく喋るなぁ。

周りは真っ暗で独特な雰囲気を醸し出している。

空を見上げると、星達が互いを美しく見せ合おうとしているのか、いつもより輝いて見える。

「ちょっと聞いてる!?」

「あ、うん…ごめん」

なんか話しづらい。

初めて会ったからか?

……多分意識しているからだと思う。

「っで?」

「はい?」

すっとんきょんな声が出てしまった。

まさか一文字で返してくるとは思わなかった。

「何が『はい?』よ!私は返事を聞きに来たのっ!」

あ…そうだった。

まだ返事決まってないのに――

「まさか  返事決まってないとか言うんじゃないでしょうね!?」

ぐ…鋭い…

「やっぱりそうなんだ!その顔は!」

「いや、そ そんなことないって!」

そんなことある!

あーどうしよう…

また傷つけてしまう…それだけは――

「じゃあ教えて」

彼女の目が俺の目とピッタリあった。

そらしたい。

しかし彼女の目は俺を吸い込むかのように目をそらさせてはくれない。

とても整った顔。

大きな瞳。

生き生きとした唇。

さらさらのきれいな髪。

可愛い…

でも俺……凛のこと好きじゃなかったのか…?

「今他の女のこと考えたでしょ」

「え! 考えてない!」

鋭いぞこの子…

「まぁいいわ。どうせ私となんて一回もあったことないもんね」

やっぱりあったことは無いんだ。

「じゃあ何で俺なの?」

「好きだから」

即答簡潔意味不明だって。

答えになってない…

「俺と接点ないじゃん」

「だって…だって…」

彼女は赤くなって俯いた。

と思ったら顔を朝のように急に上げた。

目と目が合う。

赤面した顔がすごく可愛い…

「ストーカーとか思わないでよ!毎日見てたの!毎日、毎日、帰りも朝もさりげなくあんたの近くにいたの!」

すごい迫力で大きな声が静かな夜に響き渡る…

「おい…ちょっと場所移そっ。ここじゃうるさいし…」

「いつか気づいてもらえると思ってたのに…」

そう呟いた気がした。

近くの公園に向かった。

着くまでまったくの無言で気まずかった。

着いたは着いたでいいけど、夜の公園って雰囲気あるなぁ…

適当にベンチに腰掛ける。

「さっき…ゴメン…ちょっと熱入っちゃって」

「いいよ別に」

沈黙が続く。

非常に気まずい。

鳥か何かが木から飛び立ったとき、彼女がビクッとして俺のほうへ寄ってきた。

心臓が高鳴る。

女の子の手って柔らかい…

腕に手が触れて、そのままの状態。

しかも怖いのか怯えている。

その表情がまた可愛い。

俺、凛に何も言われてなかったらきっと付き合ってただろうな。

まだ付き合わないと決めたわけじゃないんだが。

「ねぇ…」

やっと口を開いた。

すごく小さな声。

「私、使徒君に好きな人がいてもいいよ」

「え?」

驚いた。

そんなことを言われるなんて思ってもいなかった。

「少しづつでもいいから私好きになってもらえるように努力するから…」

そんなこと言われても…

彼女は立ち上がった。

「私は神野使徒君が好きです。付き合ってください」

カァァっと体が熱くなるのが分かった。

紙に書かれて渡されるよりもずっと気持ちが伝わった。

断るときっとまた傷つけてしまう。

でも受け入れたら凛もミラも傷つけてしまう。

そもそも東静の美女がなぜ俺なんかを好きに…

そんなこといいとして返事は…どうしよう。

彼女は礼をしたままの状態で待っている。

つらい…

「分かった」

「え!?」

「いいよ付き合っても…」

凛とミラを裏切るような感じになってすごくつらいけど…

やっぱり知らない子が、これまで俺のことをずっと影で見ていてくれた子がこんなに必死になってるのに付き合えないなんて言えない…

「ホントに!?」

「うん」

ぎゃっ…

いきなり抱きつくとは……

やっぱり2人には申し訳なくて抱き返してやることはできなかった…

今日、俺は複雑な心境のなか、初めて彼女ができた。

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