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妙な学園生活  作者: rouge
14/20

すれ違う思い

ぁ〜あ…

爽快な青空の下、憂鬱に学校へと向かう。

(もちろん家からは逃げてきたんだが――)

朝から過激な姉妹喧嘩と大量の食事で脳震盪を起こしそうになる。

ミラが来てから今日で2日(かな?)。

妙に長く感じられた。

はぁ〜…

ブォォォ〜っと俺の上を通る飛行機。

雲を切り裂いていく。

俺はこの先どうなるんだろうか。

きっとあの雲のように真っ二つになるようなつらさがまってるんだろうなぁ。

前をみた。女の子が立っている。

金髪、ショートヘアのすごく可愛い子だ。

どこの子だろう?

制服は俺の通う高校ではない。

ここらにこんな可愛い子はいた覚えはないんだが…

彼女は何をしているのか、手に何かを持って突っ立っていた。

なんだか通りづらい。

道路の脇の壁にもたれている。

その前を出来るだけ離れて通った。

「あの…」

空耳かなっ…と一瞬たじろいで止まった。

いきなり見ず知らずの人に声をかけられることなんてあるのだろうか?

彼女の方を見ると、下を向いて手を組んでいる。

自分の手から目をそらすことはない。

やっぱり気のせいだ。

この頃あいつらのせいで体調がおかしくなってるんだな、うん。

「あのっ…」

もう一度行こうと歩き出したら、また声をかけられた。

今度は大きめの声で。

やはり空耳ではなかったようだ。

「はい…」

彼女はやっぱり下を向いたまま。

何だろうこの子は。

不思議だ。

一時の沈黙。

しかも今8時20分。

始業の前の30〜40分の間に、読書とかいうふざけた時間があるせいで30分までに行かなければならない。

早くして欲しい。

「何??」

ちょっと焦ってるのもあって、もう一度問い直した。

すると彼女はやっと顔をあげた。

しかもものすごい速さで。

目があった途端、すごく恥ずかしくなった。

正面からみた彼女は横顔よりも一段と可愛かった。

「付き合ってください!返事あとでいいです!」

ダダダダダ

聞こえるのは彼女が走り去っていく音だけ。

何が起こったのかさっぱりわからない。

なんか言葉と同時に紙を前に出されて、条件反射で取ってしまった。

中…見ていいのだろうか?

というか、待て。

人生初の告白(受動態)じゃないか?

つか―――誰?



気持ちの整理がつかないまま学校に着いた。

ちなみに着いたのは8時35分。

当然みな教室で静かに本を読んでいるわけで、担任の鶴山に怒られたときは恥ずかしかった。

しかも言い訳できない。

突然道路で告白されて……って誰が信じるか!

信じる、信じないの前に人にこういうことって言っていいのかも分からない…

とりあえず、凛辺りに相談してみるか?

あいつなら告られまくってるし、こういうこと得意だろ。

でもなぁ……好きな人に告られたこと言うってどうよ。

なんか違う気が…

う〜ん……

「どうしたの?」

「うわっ!」

まさか凛のこと思ってて凛に話しかけられるとは思ってなかった。

「何その反応…人が心配してやってんのに…」

心配?

俺は健康だぜ!

不健康といえばミクとミラがいることで心の面が不健康だ。

そういやミクは適当に男子と戯れてるとして、ミラまだ転入してこないのかな?

いや、こないでほしいな…

はぁ…

「なんかあんたおかしいよ?さっきからため息ばっか」

あぁ、空が青いな…

俺の心は真っ白だ。

俺の人生真っ白だ…

あはは。

「ねぇ、聞いてる?上の空だけど…」

そういやさっきの子からもらった紙、なんだったんだろうな。

というかまだ手に持ってるし…

これはどうしよう。

「あんたやっぱおかしいよ…?――その紙何?」

さっと俺の手から掻っ攫っていった。

「おい、ちょっ!」

「やっとまともな反応したわね。まぁ今までシカトした罰として見せてね」

あ〜〜〜!!!!!

俺の初の告白された人からもらったものを俺ではない人が初めに見るってどういうことだ!

凛の表情が変わっていった。

何が書かれているのだろう。

「凛?」

「ゴメン…これ返すね」

ぐっと紙を胸に押し付けて凛は教室を出て行った。

何が書かれているのだろう…

恐る恐る見た。


神野使徒君へ

いつも、遠くから眺めていました

きっと使途君はわたしのこと知らないと思います

今日夜9時に朝の場所で待ってます

返事聞かせてください

            桂 来夢


一見普通のラブレターに見えた。

桂 来夢(かつら らいむ)という文字が目に入るまでは。

桂といったら、ここらで1番有名な女子高、東静高校一の美少女ではないか…

顔は知らなかった。

噂だけは知っていたのだが、興味もなかった。

俺は凛が好きなんだし…

なんで俺なんかをあんなに可愛い子が好きになるんだ、と不思議なんだが…

それ以上に、どこで彼女と俺に接点があったのかが不思議だ。

絶対に俺はあったことはない―――と思う。

そんなことより―――凛…もう授業始まるのに…


その後の授業は、英語だった。

しかし凛は教室に来なかった。

キーンコーンカーンコーン

授業終了。

「ねぇー使徒。凛ちゃんどこ?」

「俺に聞くな」

ほんとにどこいったんだろう。

というかあの紙見てからどっか行くってことは―――嫉妬か!?

まさか俺のことが…

ってありえねー。

こんなこと想像するなんて…

自分で自分が恥ずかしい。

「使徒最後に話してたじゃんか」

って言われてもねぇ…

「もしかして凛ちゃんにひどいこと言ったの!?」

「言ってねぇ!!」

くっそ…ミクめ…

こんなとこで大声でそんなこと言うなよ。

男子の視線が痛いじゃないか。

凛ただでさえ男子から人気あるんだから。

「探してくる」

その場から逃げる意味と本心から探したいという思いをこめて言い放った。

教室を出たはいいが、どこにいるかなんてまったく想像もつかない。

どこだろう。

とりあえず人が隠れられそうなところを探してみた。

他のクラスも探してみた。

そうだ、保健室行ってるとかは――

いない――

ホントどこいったんだろう…

キーンコーンカーンコーン

もう授業が始まってしまった…

しかも次はこないだサボった理科じゃないか。

少々あせりながら探す。

屋上でも行ってみるか。

鍵がかかってるだろうし、天文部でさえない凛がいるはずもないとは思うが。

やはりいない…

あとは……体育館。

体育館のほうからは声がしないし、体育では使われていないようだ。

理科を集中してサボるのはよくない。

できるだけ早く見つけないと。

体育館へと息を切らして向かう。

着くまでがすごく長く感じられた。

もし、凛がいなかったらどうする?

他の場所は全部調べた。

ここにいるはず。

その前に、何で急に教室を出ていってしまったのだろう。

様々な思いを抱えながら体育館の扉を開ける。

広い空間をぐるっと見渡した。

静かな空間は俺を威嚇しているようだった。

授業に戻ったのかな?

「使徒――」

体育館をあとにしようとしたとき、声が響いた。

ものすごく小さな声だったが、確実にそう聞こえた。

もう一度中を見渡すと、向こうのドアのそばに立っていた。

俺はすぐさまかけよる。

「何やってんだよ!授業サボって…」

おかげで俺まで理科の先生に怒られるだろうなぁ。

「ごめん…」

思った以上に素直な答え。

声がキャンプファイアーのときと似ていた。

「ごめんね…」

もう一度繰り返したかと思うと、泣き崩れた。

俺はどうしたらいいかわからず立ち尽くす。

すすり泣く声だけが響く。

「ど どうかした?」

女の子が泣いているにもかかわらずそんな言葉しかかけられない。

「使徒ぉ……」

泣きながら、目をこすりながらこちらを見る。

目と目が合った途端、すごく罪悪感を感じた。

俺が泣かせているのかどうかは分からないが、きっとそうなんだ。

「大好き……」

――

静かな体育館に響いた声は、俺の想像していたもとははるかに違い、

俺の横を一瞬、風が吹き抜けたように感じた。

今までの出来事がすべて順にフラッシュバックしていき、

フクザツな気持ちで心が溢れた。

俺も、と言っていいのか迷う。

正直なところ、朝の告白で俺はすごく悩んでいた。

凛と付き合えることなんて絶対無いと思っていた。

だからこの際、付き合ってみるのもいいと思っていた。

「私、ずるいよね…使徒告白されたって分かってたのに…今こんなときになんて…」

「そんなこと…」

そんなこと、ない。

凛の行動、すべてずるいなんて思ったことなど今まで一度だってない。

「いいの、ずるくてもいいと思っちゃったの……どんなことしてもいいと思ったの…使徒が私から離れてくのはイヤ…それだけはイヤ……」

俺は凛を気づかないまま傷つけていたんだ…

「好きなの……使途が…ずっと、ずっと、中学から…ずっと…私には使徒しか映らないの…」

なんで、一番大切にしたいと思っていた人がこんな目の前で泣いているんだ。

俺が望んだのはこんなことじゃない。

こんなこと望んでいなかった。

こんなこと…望んでいなかった…

そうだ、知っていたじゃないか。

望んだのは凛の気持ち。

俺が凛の気持ちを望んだんじゃないか。

あの、雨の中で泣いていたのは凛だった。

ずっとずっと苦しんでいた。

でも気づいてあげることが出来なかった。

もっと早く気づいていれば……こんな凛を傷つけることはなかった…

「ゴメンね…使徒は桂さんに告白されたんだもんね…もう、遅いよね…」

こんな…

「困るようなこといってごめんね。じゃあ授業いかなきゃ」

無理して笑って俺の前から走りさっていった。

最後に目に映った彼女の目からは涙が溢れていた。

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