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妙な学園生活  作者: rouge
13/20

取り合い

気まずい空気が流れる…と思ったが、そうでもない。

「使徒、また親戚?」

よく分かってるじゃないか。

「そうそう」「違うわ」

同時に矛盾した言葉を発した俺とミラ。

嫌な予感がする。

ミラを横目で見ると、やはり俺が思ったとおりの顔をしていた。

「私は使徒の恋人ですっ」

「違う。こいつはミクの姉さんでミクがここにきたからミラが面倒を見るために来ただけであって決してそのような関係ではないっ!」

真剣に、早口で、息が切れるほど必死に訴えた。

光はミラよりも俺の言葉に驚いているようだ。

「お前さ、ホントのこと言っててもその言い方じゃ逆に怪しいぜ?」

俺はホントのことを言っただけなのに――!!

「怪しいも何も、恋人ですし」

「話をややこしくするな」

目を見開いてにらむ。

「そんな目で見ちゃいやっ…」

「なぁ使徒、ホントはどうなんだ?」

泣きたい衝動に駆られる。

俺は光の肩に手をポンと置いた。

「友達は信用するべきだよ」

「はいはい」

案外すんなりと言う事を聞いてくれた。

やっと物事というものを分かるようになったらしい。

「使徒ーっ!」

ぅ…また話がぐちゃぐちゃになりそうな予感。

「今日夕飯何が――」

一瞬おいた。

「お姉ちゃんなんでここにいるのよっ!」

「残念でしたぁー。もう私が先に聞きにきたんだもんねー!」

コイツら考えることは同じか…

共に出し抜こうとして結局光に見つかる。

俺に好かれようとしてやっている(仮定)ならマイナスになってるぞ。

「何いってんのよ!毎日あたしが料理作ってるんだからお姉ちゃんは作らなくていいのっ!」

「そっちこそ何よっ!あとから来たくせにっ」

「あたしはちゃんと使徒との約束守ってたんだもん」

「今ここにいたら結局同じじゃない!」

俺と光の横で喧嘩をはじめた。

「使徒、お前毎日こんなんなのか?」

「ミラがきたのは今日から…これからこんな毎日が続くと思うと嫌になるよ…」

そういうと、光がすっとんきょんな声を出した。

「何言ってんだよ!羨ましすぎるぜ…」

光はとうとう頭がクラッシュしたようだ。

なおも横では喧嘩が続いている。

「出来ることなら代わってやりたい」

「ダメよ!」

2人は息がそろっているのか、そろっていないのだか。

一瞬2人はにらみ合ってすぐにこちらを向いた。

「使徒クンがこの家から出てくなら私もでてく」

プイっとそっぽを向いてしまった。

「あたしだって出てくわよ!」

「だから代われるものなら、と言ったろ…」

そういうと、2人とも飛びついてきた。

「出ていかないんだねっ?」

俺は引き離そうとするのに、2人はしがみ付いて離れない。

「やめろっ!…おいっ!ばかっそこは…ぅ…」

その光景を光はただ呆然と見ていた。

「光!助けろっ!」

目は虚ろ。声をかけても反応はない。

「使徒おっきー!」

このクソませ馬鹿ガキ――!!!

「そこ触っていいのは私だけよっ!ね、使徒クン?」

『ね、使徒クン』じゃねぇ!

俺のモノを取り合うなぁ――!!!

「うぉお!」

2人を引き離すことに成功した。

「どさくさにまぎれて変なことすんなボケっ!」

「お前は毎日こんなんなのか…刺激が強すぎるな…」

目が虚ろで真正面を向いたまま硬直している。

きっと正気を取り戻したらみんなに言うんだろうなぁ。

俺の日常、プライド、すべてが破壊されていく…

悲しみに打ちひしがれてしまいそうだ。





光とあのあとは普通(・・)に遊んだ。

今人気のゲーム怪物狩人 弐+αをやった。

ただ怪物を狩るだけなのだが、かなり面白い。

特に狩人たちが協力して助け合うのは友情があふれる。

そんなことは措いておこう。

祐樹が帰り、ミクが風呂へ入った。

ミクは風呂へ行く前に『使徒も入りたかったら入っていいわよ』と言われた。

なんだかミラが来てから性格が変わったような気がする。

前なら多分『覗いたら殺すわよ』って言われてたはずだ。

どちらも嫌だな…

リビングには俺とミラ。

ドラマを見ている。

「お前昼って何やってたんだ?」

ふと口に出た。

自分でもこんなことは聞くつもりは無かったんだが――

「そんなに私のこと気にしてくれてるの!?」

まともな返事は返ってこないと思ったよ。

「何してたんだ?」

もう無視して無理矢理押し通した。

するとため息をつきながら答えた。はじめからそうしろよ。

「入学手続きよ。家にいるわけにもいかないし」

まさかこいつも学校来るのか…?

「何高校?」

「え 使徒クンと一緒に決まってるじゃない」

決まってねーよぉ――

というか、ミラって年いくつだろう。

「校長先生って許してくれたのか?」

あのお泊り高校を開いた校長は見事に返すメドのない金を借りまくり、銭湯を立てたり豪華料理を振舞ったりしたおかげで退職させられた。

ホントミクは最低だ…

あいつにかかわった人って絶対不幸になるよなぁ。

俺ってまさかそうなるのか!?

いやいや、今十分そうなってるじゃないか――

不幸ではないけど…どちらかというと災難にあっているといった感じだな。

そういえば今の校長のことは知らない。

一度自己紹介をしてたが寝ていた覚えがある。

「なんだかよく分からないけど『可愛いからOK』だって」

思わず自分の耳を疑った。

前の校長のほうがよかったかも……

「で、学年は?」

「1年生じゃないと使徒クンと一緒になれないジャン?」

だから1年生だというのかな、この子は。

「ミク妹なんだろ」

「いいわよ。どうせ似てない姉妹だしバレやしないって」

そういうもんだいじゃないって…

「でもクラス違ったら俺と一緒じゃないよ」

「あー。それなら大丈夫よ。校長先生に『使徒クンと同じクラスにしてください』って言ったら『可愛いからOK』って言ってたから」

きっとその校長退職だろうに。

というか校長先生になれるような人がそんなことを言うだろうか?

考えたくも無いが、ミラが魔法を使って―

馬鹿馬鹿しい。俺が知るものか。

会話が途切れた。

ドラマを見るとクライマックスのようで、気持ちがそちらへいった。

ほとんど会話してたからなんとなくだが、恋愛ドラマだった気がする。

きっと今からキスでもして終わりなんだろう。

ミラも静かに見ている。

「真さん――」

橋の下を通るフェリーの甲板で彼氏を呼ぶ女の人。

それに気づいて振り返る真と呼ばれた男の人。

なんだかこのドラマ臭すぎるぞ。

「麻衣…どうして…」

男のもとへ駆け寄って抱きつく女性。

「ごめんなさい ごめんなさい…」

「いいんだ」

そして夕日をバックに口づけを…

「使徒クン…」

「うわあああ!!!!」

近い近い!

横を見たら3cm前には顔があったぞ。

ミラはふて腐れている。

「しっつれいね。そこは『ミラ…』ってあまい声をだすとこでしょっ!」

どうしてそうなる…

すごいドキドキして恥ずかしい。

一応俺、まだ彼女作ったことないんだぜ。

目の前にいるのはどう考えても美少女で次元が違うと思う。

それにくらべて俺はただの高校生。そう、ただ(・・)の。

誤解を招かないように言っておくが、決して俺が望んだわけではないぞ。

ミクに通用しないのにミラに通用するはずなかろう!うん。

「あら、顔真っ赤よ?」

「うわぁっ!」

今度は俺の頬を両手で挟んできた。

よく考えたら俺って女子と触れたことほとんどない…

なのにいきなりこれかよ…

「熱でもあるのかしら」

「や、やめ…」

おでこを合わせてくるミラ。

顔が相当近い。

もうやめてくれ―――!!!!




「はぁ〜……」

なんであいつらは俺に絡むんだろう。

ミクなら男子から人気あるんだし、俺なんかほっといて佐藤とか鈴木とかと絡めばいいのに…

そっちのほうがスポーツもできるし顔もいいし頭だって……

ミラも普通に街歩いてたら100人くらいにナンパされるだろうに。

(アキハバラだったらきっともっとすごいだろうな)

…なんか俺ヘボくないか?

そんなことない!俺にだっていいところは――

・・・

・・

まぁそんな2、3分で見つかる分けないって。

プラス思考!プラス思考!

プラス思考……

「はぁぁぁぁぁ……」

なんか落ち込んでくるよ。

浴槽から出て体を洗う。

ホントなんで俺なんだろうなぁ。

でも絡むってことはいいところがあるってことだろ。

優しいところか?

俺って優しくないよな。

表面は普通だが、実際の俺はすごく性格悪い。

自分で時々怖いし…

「使徒ー!!!」

一瞬何が起こったかわからなかった。

目の前にはミク。

ちゃんとバスタオルは巻いている。

「お背中流してあげる!」

「出てけ!!!」

あいつら、俺をオモチャにしてるのかも…

そう思うと一層つらくなった。

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