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妙な学園生活  作者: rouge
12/20

ラッキー?アンラッキー?

「ミク、何か言いたいことあるか?」

キッチンのテーブル。

ミクとミラは距離をとって隣に座った。

三者懇談のような配置で静かに問う。

「ありません……」

ミクはすごく素直になっている。

常にこんな風ならどれだけよいことか。

「なら次、君なんで俺の家にいる?」

「そりゃあ…ミクのお姉ちゃんだから…」

曖昧な返答。

少し長い沈黙。

カチ、カチ、っと時計の音が響く。

時々カラスがカァカァと鳴いている。

「なんで君らは不法侵入が得意なんだ?」

まさかこんなことを聞かれるとは思ってもみなかったようで、返事に困っている。

「いや、やっぱりいい。ミク、なんでお前姉ちゃんがいるって言わなかった?」

「だって…喧嘩してたから……」

喧嘩して、家出して、居候か…

「ミラが…あたしをちっさくしたんだもん…」

「ちがっ…私はただ呪文を間違えただけで…」

ミクが小さいのは自分でやったんじゃなかったのか…

姉妹喧嘩に俺を巻き込むな――!

「じゃあミラはこれからどうするんだ?」

ミラは一瞬おいて笑顔で言った。

「じゃあ私もここに……」

「却下だ」

キョトンとしたかと思ったら、急に立ち上がり服を脱ぎ始めた。

「な、何するんだ!?」

ちゃんと目を覆った指には隙間を作っている。

下着になったところで、ミラは服を脱ぐのをやめた。(っちぇ)

どこかへ歩いて行ったと思うと、電話の子機を持ってきた。

「警察に襲われたって言ってやろぉー」

「ごめんなさいスイマセンこの家好きに使っていいのでやめてください」

土下座…

「ありがとー!」

ミラが抱きついてきた。

もちろん下着のままだ。

「やめろっ!」

「姉ちゃんずるいっ!あたしもっ!」

ミクまで飛びついてきた。

これから俺はどうすればいいんだろう………






雨が降っていた。

女の子が泣いていた。

校庭のど真ん中で。

雨でベタベタになっても、手に持った傘は使おうとしない。

何かを叫んでいる。

その少女は苦しそうだ。

助けてあげたい。

何故か少女の気持ちが伝わってくる。

痛々しく、とても大きな思い。

あぁ…この子は……





「おっはよぉー!」

がばっと布団が奪われた。

目をこすりながら嫌々起きる…

今日は……学校!?

やっと悪夢から開放される――!

下へ降りていくと、テーブルの上にものすごい量の朝食があった。

「おっはよ使徒ぉー!」

飛びついてくるミクをさっと避ける。

「まさかとは思うが、これ朝食か?」

「うんっ」

2人は息ピッタリに即答した。

かと思うと、互いににらみ合う。

これが毎朝となると……

「これからは一食分でいいからあんまり作るな…」

怒る気にもなれない。

「ねぇ使徒クン、これ食べて!おいしいわよっ!!」

ミラが玉子焼きをすすめてきた。

「あ、お姉ちゃんずるい!使徒、これ食べさせてあげる。あ〜んしてっ」

ミクも負けずと玉子焼きを、箸で口元に近づけてきた。

まさに漫画でありそうな場面だ。

「やめんかいっ!」

2人を押しのけ、1人でさっさと食べ終えて家を飛び出した。

家を出てからも中からはうるさい喧嘩声が聞こえた。





「おはよ使徒っ」

「おう、おはよ」

朝から凛に遭遇。

今日はラッキーかもしれない。

「おはよう」

後ろには海野と光。

光はもうこの間のことを忘れているかのように平然としていた。

「うわっ」

俺は光をちょっと強引に引っ張っていく。

「なぁ、凛に何言った?」

静かに耳元でささやく。

「親戚ってことだけっ」

「ホントにそれだけ?」

そういったら俺の肩を少し前へ押した。

「友達は信用するべきだよ」

あ。

それだけ言い残して逃げていった。

まだ聞きたいことはあったのに。

なぜ仲良く海野と登校しているのだろう…?




チョークで黒板に字を書く音だけが聞こえる教室。

今は数学の授業の真っ只中。

正直なところ、幸せな家庭など望めばいいだけだ。

よって俺は勉強などせずともよい人生を歩むことが出来る。

しかし、それではただの強欲な大富豪と変わりない。

だから努力は怠らずにこうやって授業に参加している。

時々サボることもあるが、それくらいは目をつぶってほしい。

さて、こうやって俺が受ける必要のない授業に真面目に参加し、努力しているのにもかかわらず、なぜミクはそれをぶち壊そうとするのか。

後ろから消しカスが度々飛んでくる。

きっと俺の頭にはカスが山のようについているだろう。

授業中に怒るわけにもいかない。

――授業中じゃなくともミクのファンクラブ(いつの間にか結成されていた)の護衛がいるため怒れるはずも無いが――

手紙として渡そうと思い、チャンスをうかがう。

今だ――!

「こら神野!」

く……ばれた…

こちらへ近寄ってくる。

「あ、いや…そのですね…」

必死にごまかそうとする。

不運にも数学担当の森はかなり怖い。

「なんだその頭は!?挑発してるのか?」

「だから、ちがっ…」

ハハハと、クラスから笑い声が上がった。

森め…許さん。

「ん?その紙は何だね?」

ぇ…

「うわぁあー!!!!」

不覚にも完全に紙のことを忘れていた。

手からひょいと取られた。

こうなったらお終いだ。

「見られて何かまずいものかね?何々…『うざいわ!邪魔すんな!』」

げ…

「僕、消しカスのせたくてそれ書いたんじゃありませんよ…?」

「ほう。私の授業への冒涜かね?」

げげげ…

間違った方向へと流れてる…

「私と特別に個人授業をさせてやろう。来なさい」

『来なさい』という言葉がとてつもなく怖かった…

みんなはクスクス笑っている中、俺は立ち上がる。

仕方が無く歩いてくと、凛と目があった。

なんと鼻で笑われ、すぐに目をそらされた。

今日はアンラッキーかもしれない。




家へ着いた。

今日は光が遊びにくるって言っていた。

玄関のドアを開けようと思ったときに重要なことを思い出した。

家にはミラが…

光にどう説明しようか。

悩んでいてもしょうがない。

まずは家の中へと入る。

「おっかえりぃー!!」

ミラが飛びついてきた。

さっとかわす。

しかし後ろからまたもや飛びついてきた。

避けようと思ったが、体が動かない。

「おかえりー使途クンっ」

後ろから抱きつかれた。

ミラはいくつか知らないが、高校生くらいだろう。

同年代に抱きつかれるなんて初めてで、顔から火が出るかと思った。

ミクも高校生らしいが、あの背じゃなんとも思わない。

「やめてくれ…」

心臓が高鳴る。

「んーもう!『おかえり』って言われたら『ただいま』でしょ!」

「うっ…」

まずい…強く抱きしめてきた。胸が…

というか、今この光景を光に見られたら――


「使徒ー!」

・・・・・・

「あははは。お邪魔しましたぁ」


――考えたくもねぇ!!

「お願いだからどいてくれ」

そのとき、扉のドアノブが下に下がった…

もう終わりだ。

今の俺にはその光景がスローモーションに見える。

ゆっくりと扉が開く。

「ただいまぁっ!…お姉ちゃんっ何してんの!?」

ミクかよっ。

まぁ助かった。

「せっかくいいとこだったのに…」

「何がだよ…」

というか、体がうごかない。

動け動け動け動け―――

「はぁ…やっと動けた…」

「あれ?束縛の術かけたはずなのになぁ」

そんな術覚えなくてよい。

「お姉ちゃんって魔法使えたっけ?」

皮肉たっぷりに言う。

「失礼ねっ!ちゃんと使えるわよ!爆発魔法と束縛魔法は得意なんだからねっ!」

どちらも危険ですよ、ミラさん。

そういえば…

「瞬間移動のは?」

「あれは山に行くつもりだったんだけど…失敗しちゃったっ」

おい…変なとこに行ってたらどうしてくれたんだ。

時間は過ぎていく。

「光があと少しでくるから。というかミラは親戚ってことで頼む」

「了解しましたであります。隊長っ!」

手を軍隊の人たちのように、額にもっていっている。

なんか無邪気で楽しそう。

「どちらかというと見つからないほうがいいからどこか部屋に入ってて」

「隊長のご命令ならば」

今度はミクも一緒にまねをした。

仲の良い姉妹にしか見えない。

少し口喧嘩をしながら部屋へ入っていった。

よし、これでいつ来ても準備万端。

ピンポーン

ふふふ、ナイスタイミング。

「っよ」

「おう」

光は俺をじろじろと見る。

正直言って気持ち悪い。

「今日はミクちゃんと変なことしてないんだ」

「今日()だ」

二階へ行って自分の部屋のドアノブに手をかけた。

まてよ…

あいつらまさか俺の部屋に入ってたりは――

「ん?使徒どうかした?」

やばい。すっげぇ冷や汗が出てきた。

うわー…どうしよう…

「何やってんだよ」

「おい馬鹿っ!」

使徒が勝手に開けやがった。

「何してたんだお前?」

中にはいなかった…

びっくりさせやがって…

と思ったら急に扉が開いた。

「ねえ使徒クンっ!」

・・・

光は唖然。

やっぱ今日はアンラッキーだ。

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