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大罪の英雄伝説  作者: 白鷺 朱鷺
序章 白騎士編 Ⅰ
3/16

シュルガルトの森 Ⅰ

 


 __序章 白騎士 編 Ⅰ


 *☆


 全能ナル神々ハ、コノ地【アステロイド】二


 大イナル チカラ ヲ授ケタ.


 ソレハ人々ノ チカラ トナリ、


 時ニハ悪シキモノヲウチ払ウタメノ術トナッタ


 人ハコレヲ《英雄召喚》トヨビ、


 ソレヲセシ者ヲ《英雄》トヨンダ……


 _ ̄_ ̄_ ̄_ ̄_ ̄_ ̄_ ̄_ ̄_ ̄_ ̄




 ▽ シュルガルトの森にて ◇


 白い服の少女 ーー アリアは木々の合間を()うようにして前へと進んでいた。

 あたりは無造作に草木が生える湿地地帯。

 湿気を帯びる苔は樹皮の上を覆い、気を抜けば転倒してしまいそうなほどぬかるんでいた。

 アリアは森の少し入ったところにいた。

 目的はクエストを遂行するためだが、この森は彼女が幼いころからよく知っている場所だった。


 遠くは深い闇に包まれ、見通せない。

 よくて半径3mくらいが限度である。

 物騒な夜の森は不気味なほど静寂に包まれており、度々アリアの心は孤独感に苛まれていく。

 その時、アリアは一人が少し心もとないと思った。


 ふとアリアは顔を上げと、そこには満天の星空が(またた)くようにして輝やいている。

 アリアはそれを見て、星を一つずつ結び、星座を作る。

 気持ちの切り替えには打ってつけの景色。

 ちょうどなんでもいいから、気分転換をしたかったところだった。


 一際輝きを放つ星を見けたと思えば、それは北極星______________。


 夜は寒い。

 季節は秋、息を吐けば白くなる。

 アリアは白い息を両手に吐いた。

 少しでも外の冷気に晒され硬くなった手を温める。


 暫しの休息をとるのに丁度いい切り株を見つけるや、腰を降ろすことにする。

 なにせアリアは5時間ほど歩きっぱなしだった。

 そのため、ひとまず足を休ませたかった。


 座ってみると案外いい感じにフィット感があったが、若干冷たくて硬いのが欠点。

 もう少し柔らかければベストなのだが、座れるだけまだマシだろうか。

 そんなことを考えながらも、アリアは居座ることに決める。


 顔を上げ、綺麗な夜空を眺める。


 夜空は綺麗だ。どこまでも広がっていて、宝石のように輝いている。あまたの星々が夜空に輝きの世界を作り出し、長い年月を経てもそれは同じことであった。


「まだ私って生きてるんだぁ・・・」




 ・*・*・*・*・*・*・*・


 α クエスト:        シュルガルトの森の調査をせよ。


 今回受けたクエストの依頼内容は最近何かと騒がしいシュルガルトの森の調査。

 シュルガルトの森の様子が騒がれるようになったのは、ごく数日前ことで、それまではここ一帯は最も危険度の少ない『エイジェント1』にあたる区域だった。

 言うなれば、ド○クエでいう序盤の方にあるス○イムやド○キーが出現する森のようなもので、マ○オブラザーズでいう緑の甲羅のノコ○コが出るステージのようなステージ。

 誰でも容易に足を踏み入ることができ、生命の危機など微塵も感じられない。

 危ないケースを強いて言うなら、不運な転落事故といったところか。


 よくて難度2の易しい森であるはずの場所全体が、今回の難度α の依頼対象となった。

 難度αとは緊急クエストのことを指す用語で、最も危険を伴うクエストのことを指す。

 その難度は最高にランク匹敵するほどだ。


 今回よくて難度2相当の森で最高ランクにあたるクエストが受付されている理由は単純で、モンスター(変異種)が出現したからだった。

 変異種モンスターとは、以前の面影がないほど変わってしまったモンスターのことを指し、それらには驚くべきほどの力と、行動パターンに変化が見られることが多い。

 前例はあまりないが、有名な話としてよく挙げられるのがクラリアスの森である。

クラリアスの森はこのシュルガルトの森とそう離れた場所ではなく、行こうと思えば1日でいくことが出来る。

 このときのケースの事例はそれほど大事には至らなかったものの、それでも死者はある程度出た。

 危険度はもちろん今エイジェント2から4へと上がっている。

 変異種がでる以上、難度の変化は当然の措置だった。


 しかし、今回はそれとは少しケースが違うところが一つ。


 それは推定されるであろう被害の規模だ。

 この森は交通の要所にもなっていて、ここを抜けることで近隣の街と交流を深めてきた。

 キーナヒーテ街は周りを気高い山脈に覆われており、周囲と交流するときはこの森を必ず通らなければならない。

 それが使えなくなるとなると、それは交通手段が絶たれたことを意味し、街は孤立状態といっても過言ではなかった。


 被害は挙げればきりがなく、早期解決が求められる。


『森が変化する』= 『森の危険度のレベルが変化する』


 この世界において森に異変が起こるということは、その森の『危険度』が変化することを意味する。

 危険度次第では人々の暮らしに影響を及ぼし、それは明日の生活を変えることもなりかねないものだ。

 危険度は人々の生命を守るために作られた基準なのだから。


 だが一度難度が上がるようなことになれば、いったいどういったことが今後起こっていくのだろう。

 想像するだけでも大惨なことだった。


 *


 アリアは透き通るように透明な艶のある水色髪を白いフードで覆い隠し、静かに足場の悪い地面を歩く。


 ふと東の方角に向くと、そこには月明かりの光に照らされ、一際輝く小さな花。

 蒼月花だ。

 この森の名産の一つ。

 一つ30銀貨もの価値があり、希少度は1〜5の中で3に当たる上物。


 けれど採取方法を間違えれば価値を下げる結果になりかねない植物であるがために、取るのは知識を得てからということで採取を断念する。


 少し行くと今度は奥の岩陰には寄り添うようにして寝るクルルの姿があった。

 親鳥に首を添えながら雛鳥が添い寝している。

 クルルは、人の言語を理解し、よく郵便届けなどに利用される鳥だ。

 人を乗せる鳥ということもあって、体型はそれなりに大きい。

 アリアその光景を見ながら、束の間の幸福感に浸った。


 地に足がつく度に木の枝が折れる音や落ち葉のカサカサと擦れる音が響き渡る。

 アリアはそれに不快感を抱かずにはいられなかった。

 それは森に音に敏感なモンスターに関係しており、自分の居場所を察知されてしまう恐れがあった。

 目的地はまだ先のところにあり、戦闘はなるべく最小限に抑えたかった。

 辿り着く前に体力をかなり消耗してしまっては、身も蓋もない。


 森が危険なのは、どこの国だろうと同じことだ。

 特に夜の森となればそれなりの覚悟と注意を要することになる。

 いったん中へ入ってしまえば危険がどこから襲いかかってくるか分からない。それが森だ。

 そのため小さなミス一つだけであっても、命とりになりかねない。

 夜の森が真に恐れられているのは、そういった遠くまで見渡すことのできず、闇の中で絶えず恐怖に身を震わせなければならないことにあった。

 一つの気の緩みさえでも、それは死を意味するのだから・・・


 ーー そろそろ、今だ調査の手が入っていない洞窟に着くはず……


 アリアは手元の薄暗く発光する地図を見た。

 地図によると、現在地からだいたい1kmくらい離れたところに目的地である洞窟はあった。

 ここから、そう遠くはない距離だ。

 このままのペースだと、あと20分とかからないくらいだろう。


 しかしここで考えておかなければならないことが一つあった。

 それは洞窟は少し森から開いた平原の先にあるということなのだが、平野は障害物がないところであるため、姿を隠しながら通ることは出来なかった

 そのため、多数のモンスターと戦闘を強いられることになる。

 しかもその相手は恐らく変異種だろう。


 それを考えるとアリアはひどく疲労感に襲われる思いだった。

 しかしここで怖気づいていては、元も子もない。

 それもそのはずでこれから起こるであろう過酷な状況に、そんなのでは太刀打ち出来るはずもないからだ。

 アリアは頭の片隅にその件をおくことにした。


 針に糸を通す時のように神経を研ぎ澄ませながら、慎重に足を前へと進ませる。

 周囲にはどんよりとした重っ苦しい空気が流れている。


 ーー 何だろう、これは……。甘い香り??


 ふと(ほの)かではあったが、甘い蜜のような香りがアリアの鼻を(くすぶ)った。

 甘い匂い。

 特にこれといって連想するものはなく、初めて嗅ぐ匂いだ。


 アリアは周囲に目を配らせ、周囲の警戒を強めた。


 ーーまさか植物にまで影響が生じているというの。


 しかし下を見るが、これといって特に甘い蜜のような香りを漂わせるようなものなどありはしない。

 出処がわからない。

 その匂いが何であるか検討もつかないが、この匂いは今までに嗅いだことのない臭いだった。


 アリアは少しばかり進むスピードを緩めると、近くにある木陰に身を潜める。

 胸の高まりを抑え、そっと息を潜める___


「…………」


 しばらく周囲を確認するが、やはり警戒すべきものは見当たらない。

 依然森の中は静寂なままで、自分と草木以外、特にない。


 アリアはここへ来たことを少し後悔する。

 この時間帯は部屋に戻って既に眠りについている頃だ。

 それゆえ、アリアの体にはどっとくる疲労感に苛まれていた。


 悲鳴を上げるほど脈打つ心臓に手を当てる。

 この極限状態は心臓には悪い。

 そこで、ため息をつき緊張を解す。


 気持ちを切り替えたアリアはこの匂いの発生源の特定を後回しにしようと考える。

 今は何より時間をかけたくなかった。

 早いところ、クエストを終わらせて眠りにつきたかった。


 そう思いながら歩き出そうと屈んだ足を一歩前に出そうとした、その時だった。


「….……っ!!!」


 妙にヌメヌメとした感触が左手を襲う。

 粘着性があり、しばらくすれば固まる。

 まさか_____


 アリアは肝が冷える想いで真上を見た。

 するとそれと同じくして不快な音がアリアの耳に入る。

 その音はアリアを絶望感に満たすには十分すぎるものだった・・・・・・・・・


 シャャャャヤヤヤヤ


 真上には体液をダラダラ垂らす突然変異種のゲジゲジ。

 一番出会いたくなかったモンスターがそこにはいた。

 ゲジゲジは幹に巻きつくようにへばりついており、無数の足はウネウネと動き、顔の近くにある二つの大きな牙は左右踊るように動かしていた。

 目が合うやすぐにゲジゲジは彼女を喰らおうと牙を鳴らし、襲いかかる。


「……っく!!」


 アリアはすぐさま前転して回避する。

 その際白い服が波打ちながら大きく膨らんだ。

 ゲジゲジの牙は一瞬にして木ごと、真っ二つに切り裂く。

 切り裂かれた木は物凄い地響きをあげながら地面に倒れ、呆気なく伐採されてしまった。


 アリアはそこから生じる衝撃波を身に受けながらも無事足を地に着地させる。

 アリアの来ていた白い服はそれと同時に元の形状へとおさまっていった。


 あたりが激しく巻き起こった風に木の葉を舞い散らせるなか、アリアは一帯が紅の世界に変わるのを見る。

 月明かりに一枚一枚紅葉していく景色は、まさに秋を告げていた。


 ある程度収まってきたところで、アリアは服の裾についた切り口を見つける。

 どうやら無傷とはいかなかったようだ。


 しかし、無事回避に成功しただけでも幸いである。


 そう思いながら、心の中で安堵するアリア。

 コンマ5秒遅ければ、あの木同様体は真っ二つになっていた。


 しかし、今はそんなことに酔い痴れている場合ではない。


 アリアはすぐに意識を戦闘に戻し、体勢を整える。

 アリアの体はまだゲジゲジの攻撃可能範囲の中にあった。


 少し距離を取るべく、後ろ歩きで距離を開く。


 獲物を捉え損ねたゲジゲジは、中身のない空白感、手応えのない虚無感を確かめるかのように仕切りに双牙を動かした。

 どうやら機嫌を損ねてしまったらしい。


 耳が痛くなるほどの悲鳴をあげる。

 ゲジゲジは大きく体を地面に立てると、目を真っ赤に光らせた。


 再度攻撃を仕掛け直そうと態勢を整え始める。

 口元には先ほどな切った木の木屑が付着しており、牙を動かすたびにボロボロと零れ落ちる。


 ーーこれじゃあ、戦闘を回避するのはできなさそうね……


 アリアは腹を括る。

 周囲には体が十分隠れられるだけのものはなく、完全に追いこまれていた野うさぎ状態。

 もはや、戦闘する以外他に生き残る手段はなかった。


 アリアは腰にある袋から白い手袋取り出すと、それを両手にはめる。


 すると体から突如、白いオーラのような光りが漂い始めた。

 それはまるでオーロラのような幻想的な光で彼女を包み込む神秘のベール。

 カーテンが内から外に波打つように静かに揺れる。


 ゲジゲジは(さわ)がしく足を宙に浮かせながら、徐々に彼女の距離を詰め始める。

 そこには今度こそは逃すまいと不快な音を立てながら、狙いを定めるのがうかがえる。


 アリアは、静かに目を閉じた。

 右手を胸の前に伸ばし、静かに瞑想する。


 冷たい夜風がアリアの肌を撫で、耳には木々のざわめく音が聞こえてくる。

 それに従い、次第に気持ちが沈んでいくのだった。


 月光に照らされながら輝きを放つアリア。

 伸ばした手の先が青白い光を輝かせる。

 その光は次第に模様を描き、魔法陣と化した。


 シャャャヤヤヤヤヤ!!!


 ゲジゲジが飛びかかるようにして、アリアに遅いかかる。

 もはやそのスピードは人間がよけきれるような速さを凌駕していた。


 特にこれと言った装備をしていないアリアは、真面にくらってしまえば即死。

 体は噛みちぎられる以前に、当たった部分から、カッターがプリンにスライスを入れるように、上下二つに引き裂かれることだろう。

 そこに、彼女の命が助かるという可能性は限りなくゼロに近い。


 ゲジゲジはアリアを捉える。

 捉えると挟みこむようにして、今度は牙を動かし始めた。


 薔薇のように赤い唇と予期のような白さを伴ったオーラが重なり合うなか、アリアは笑みをふと零す。


「 凍れ 」


 伸ばした腕を振り払いながら、アリアは冷たくそう言い放った。


 すると一瞬にしてアリアの体から白い冷気が放たれ、辺り一帯を包み込んだ。

 衝撃音と共に戦闘の行方は突如発生した白い霧に隠れ見えなくなる。


 しばらくして、もやもやと漂っていた霧は、次第にその中身をあらわにした。


 そこにあったのは体が宙に、まるで額縁にハマった絵画のように留まるゲジゲジ。

 そしてその前には、無表情で立つアリアの姿があった。


 大きな昆虫の前に月の光を浴びながら白く仄かに光る少女の光景。

 ゲジゲジの体には彼女と同じく白いオーラが漂っており、あの一瞬の出来事がそこにそのまま保存されていた。

 まるでそこだけが時を止めてしまったかのように。


『hushed field』


 氷属性のA階級魔法。


 範囲10メートル以内の空気中に含まれる水蒸気を瞬間凍結させ、空間一帯を一つの氷と化す魔法である。


 そこではあらゆるものが凍結し、身動きを取れなくする。

 この魔法の範囲内では、このゲジゲジのようにモンスターは標本と化す。

そのため周りの樹木ともども氷漬けとなっていた。


 アリアは目を開きながらゲジゲジに視線を向かわせるとと、あたかも何事もなかったかのような無表情な顔で、それを見る。

 固まって身動きの取れないゲジゲジの牙から体を出すと、そっと甲殻に手を添えなぞるように色々な箇所を触っていく。


「これって……まさか」


 アリアは険しい表情をしながら、言葉を零す。


 手の触れた部分からは、ほんの僅かではあるが魔力を感じとった。

 この世界において、魔力が生成できるモンスターはごく限られており、魔力が使えるモンスターとなれば、ドラゴンやバンパイアといったエイジェント4以上の地域に住む特殊なモンスターのみだ。


 このモンスターは特殊なモンスターではない。

 だがこのゲジゲジからは微量ながらも魔力の気配を感じとれることができる。

 これはどう考えても明らかにおかしいことだった。


 ーー これは、早急に調べないと取り返しのつかないことになるかもしれない。


 アリアは指を口に当てながら、考えるに耽る。

 透き通るような水色の双眸でゲジゲジを眺めながら、その原因を考える。


 ふとアリアの頭の中にある言葉がふと、(よぎ)った。

 それは古くからの友人であるレガシー王国 第4部隊隊長 レイラ・アレスティナとのやり取りの中に出てきた言葉だった。



 :


 アリア「そういえば、レイラ。なんで、あなたのような精鋭部隊の人たちがわざわざ辺鄙(へんぴ)なここに足を運ぶの。しかも、こんなクエストの指揮までするなんて。」

 レイラ「……いや、別に対したこと……ではないよ………」

 アリア「どうしたの。なにそんな引きつった顔して。まさか私、気付かずにレイラの気に障ることでも、いった?」

 レイラ「いや……そうじゃないよ」

 アリア「良かった、それならいいんだけど………

 しかしそれにしても、やけに人多いよね。今回のクローアースの騎士の数。今日は祭りだからって張り切っちゃってきたの?」

 レイラ「……そ、そうね。この街の祭は少し他とは違っていてね。皆一度はここへ来たいと思っているのかも。しかも今回は英雄の聖誕祭100回忌ということもあってこんな人数にまでなったのかも」


 :



 ここに来る前に親友であるレイラと交わしたやり取りに、アリアは少し引っかかっていた。

 とりとめのない話だが、その時のレイラはいつもとは違っていた。

 それは何か隠し事をしているようでもあり、そしてそれがなぜか、今目の前で起こっている不可解な現象に関係がありそうな気がするのだった。


 アリアはもう一度、今度はゲジゲジの頭のあたりから見る。

 とりあえず見ていれば、この蟠りが少しでも解消されるかもしれないと思った。

 アリアはそんな期待を胸の内に秘めながら回想とモンスターとを見比べる。


 思いを巡らしている時だった。

 何やら、洞窟のある方角から騒がしい音が聞こえてくる。

 それには轟くような音でも、あった。


 アリアはそれが戦闘のものだと、すぐ理解する。

 耳に纏わり付くあの忌々しい音に心当たりがあるとすれば、それはレイラの部隊だった。


 ここにはアリア以外にも、クエストに参加する者達もいる。

 その中にはクエストを指揮する第4部隊隊長レイラの姿もあった。


 多分彼らのうち誰が戦闘しているのかは、容易に検討がつく。

 だが、肝心の相手。

 それが一体何であるのか、分からない。


 戦闘音からして、大規模な戦闘。


 ーー いったい……何が起きているの。


 とりあえずアリアは走ってそちらの方角に進むことにした。

 その時アリアが感じ取った胸の内のざわめき。

 それはこれから起ころうとする物語の始まりだった。

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