街燃えるⅡ
黒いドラゴンが何の前触れもなく街へと舞い降りる。
破壊の権化がキーナヒーテ街に降臨した。
咆哮は辺りの建物を一瞬で塵と化し、一翼を広げるだけでも周りには突風が吹き荒れる。
街は崩壊していく。
大地にはヒビが入り、建物は支柱が崩れ去ったところから崩壊を始めていく。
その現場に居合わせた一人の男。
霊璽は気が付くと、瓦礫の下に埋まっていた。
焦げた匂い。
近くで火事が起こっていた。
霊璽はこの街の住人で、ついさっきまで祭りを楽しんでいたはずだった。
生誕祭。
そんな日に誰が想像しただろう。
誰が血で血を洗うような世界に豹変すると思っただろう。
「そんな・・・・・・・」
瓦礫を除けて起き上がると、右手に赤い血。
それを見て、驚愕する。
自分の血ではない。
右手に傷はなかった。
しかし霊璽はそこに温かな感情を見出す。
まるでいつも近くにいて支えてくれたような・・・・・・そんな暖かさ。
心地よさもある。
「おい、いるのか・・・・いたら返事をしてくれ・・・フィリア・・・・」
霊璽は幼馴染のフィリアのことを思い出す。
周りを見るが、そこに彼女の姿はない。
あたりは荒れ果てており、いたるところで火事が勃発。
建物は立っているものの方が少なかった。
「いたら、いた、ら・・・・・返事を・・・へんじを・・・し、て・・くれ・・」
霊璽はフィリアと祭りを楽しんでいた。
この日のためにフィリアは赤と黄色の浴衣を着ていた。
それは霊璽の祖母が貸してくれたもので、彼女はそれを着て霊璽と祭りへ行くのを心待ちにしていた。
赤と黄色の生地。
霊璽は少し離れた場所に瓦礫の下敷きになっている生地を見つける。
その生地はフィリアのもので間違いなかった。
そもそも祭りに浴衣のようなものを着ていく人などそういるものではなく、ふつうは〈レイナ〉といったチャイナ服に似たものを着るものだ。
霊璽は乾いた風を浴びながらも、懸命にその生地へと足を進ませる。
下には片手片足、そして死体まである。
それらほとんどは火中の中にあり、黒く焦げていた
息があったのは今のところ、霊璽一人のみ。
霊璽の左目に流血が流れる。
それは瓦礫に埋もれる際、頭を強打したときに出来た傷から流れたものだった。
左足はすこし捻挫しているようで、足を踏むたび激痛が走る。
霊璽はそこへとたどり着いたとき、瓦礫の下に赤い血が広がっていくのを見た。
その時、ふとフィリアのことが頭によぎる。
それがなぜかはわからない。
しかし妙にそれを見ると心臓が激しく鼓動するのだった。
「嘘だろ・・やめてくれよ、そんな芝居めいた、てんかいなんて・・・・・」
霊璽は震える手を抑えながら、瓦礫を持ち上げる。
彼はそこで何を見たのだろうか。そして何を思ったのだろうか。
霊璽はしばらく何も言わないまま、瓦礫の中に視線を落とす。
やり残したことといえば、たくさんある。
それは人だけではないかもしれないが、霊璽もその一人だった。
霊璽の目に一粒の光が頬を伝う。
霊璽がやり残したのは・・・・
「フィリア・・・・僕は、君が・・・好きだ・・・。」
霊璽は小さくそう口ずさんだ。
後から考えると、これが霊璽という男の最後の涙だった。
霊璽は目尻に溜まった滴を払うと、静かに瓦礫を下へと下げる。
「安かれ・・待ってろよ・・・俺も、少ししてからそっちにいくからさ・・・」
読者の皆様、いつも見てくださってありがとうございます。
投稿にばらつきのある中、これほどの方に見ていただけているのはなんといえばいいのか・・・・
恐縮の来たりです。
話を進めている中、途中、これまでで付け加えをさせてもらうことがありますが、ご了承ください。
稚拙な文章であるため、改変することが多いですがそちらもご承知いただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします。