Dear
あなたは今さら手紙などと思うでしょうか?
こうして手紙を書いているときの私も、書きながらバカバカしく思います。
この手紙が、あなたに届くことはないでしょう。また、私がこの手紙を手放すこともないでしょう。
ただ自分の心に、そっと留めておきます。
一月前に送った手紙、あなたはどうしているでしょうか?
大事に持っていてくれていますか。それとも捨ててしまいましたか。
例え捨てられても、私は文句を言えませんね。
私はすごく後悔しているんです。
どうして、あんな手紙を書いてしまったのか。どうして、あんな手紙を送ってしまったのか。どうして、「好きです」だなんて・・・
それから、あなたからの返事は来なくなりました。
恋は盲目です。
あれが1番の行動だって思っていた私は、何も見えていなくて、失明、していました。
あなたに初めて会ったのは、もう何年前のことでしょうか。
暑い夏だったことを覚えています。
田舎のおばあちゃんの家への里帰り。
知らない場所、友達のいない場所。小学生のときの私は、あの場所が嫌いでした。行きたくなかった。
けれど、そこにはあなたがいた。
あの里帰りは、運命で決まっていたのだと信じていたいです。
あなたと出会うのも、必然なのだから。
どのようにあなたとであったのかは覚えていません。
大切なのは「始まり」ではなく、私はあなたのことを愛しているという、「今」の想いなのですから。
あなたが好きです。私は、それだけで充分なのです。
中学生になって、私は勉強や部活に忙しくて、里帰りができなくなりました。
だから、私はあなたに手紙を出しました。声は聞けないけれど、顔を見ることもできないけれど、あなたに関わっていたい。
失いたくない。
それからずっと、私たちは文通友達でしたね。
私はあなたのいろんな事を知りました。犬が好きだということ。もう何年もバスケを続けているということ。高校でも大学でも英語を専門に勉強したいと思っていること。
同じように、あなたも私のことをたくさん知っているでしょう?
私は、欲張りです。
より、あなたを求めた。より、あなたを欲した。
その欲望は風船のようにどんどん大きくなって、そしてついに割れてしまった。
一月前、私はあなたへの想いを手紙に書きました。
私が、どんな気持ちでいるのか。どれほど、あなたを想っているのか。
すごく長い手紙だったでしょう? 書いても書いても書ききれなかったのですよ。
けど、私が本当に伝えたかったのは、最後の一文だけ。
「あなたが、好きです」
けれど、私があの手紙を書いたとき、全部終ったのですね。
3日、4日・・・1週間・・・半月・・・1ヶ月。
私は今まで、あなたに嫌われたことに気付きませんでした。
返事を返してくれなかったのが、あなたの答えだというのに
本当に求めるものこそ、つかみきれないものでしょう。
太陽の光、空気、水、風。私たちが本当に必要なものはみな、その手に留めておけないものばかりです。
私は、それらのリストの中に「あなた」がいました。
さぁ、もう時間です。さよならです。
私はあなたを恨みはしません。この別れの原因は私にあるのですから。
ただ、あなたとの思い出は私の心のキズとなって、常にチクチクと痛むでしょう。
後悔や悲しみや、マイナスの感情となって。
そしてもう、あなたと私の道が交わることはないでしょう。
私は、あなたと出会えてよかった。
けど、出会わないほうがよかった。
Dear
今でも、大好きでした。