表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

Dear

作者: シュロしん

 あなたは今さら手紙などと思うでしょうか?

 こうして手紙を書いているときの私も、書きながらバカバカしく思います。


 この手紙が、あなたに届くことはないでしょう。また、私がこの手紙を手放すこともないでしょう。

 ただ自分の心に、そっと留めておきます。


 一月前に送った手紙、あなたはどうしているでしょうか?

 大事に持っていてくれていますか。それとも捨ててしまいましたか。

 例え捨てられても、私は文句を言えませんね。


 私はすごく後悔しているんです。

 どうして、あんな手紙を書いてしまったのか。どうして、あんな手紙を送ってしまったのか。どうして、「好きです」だなんて・・・


 それから、あなたからの返事は来なくなりました。



 恋は盲目です。


 あれが1番の行動だって思っていた私は、何も見えていなくて、失明、していました。


 あなたに初めて会ったのは、もう何年前のことでしょうか。

 暑い夏だったことを覚えています。


 田舎のおばあちゃんの家への里帰り。

 知らない場所、友達のいない場所。小学生のときの私は、あの場所が嫌いでした。行きたくなかった。


 けれど、そこにはあなたがいた。


 あの里帰りは、運命で決まっていたのだと信じていたいです。

 あなたと出会うのも、必然なのだから。


 どのようにあなたとであったのかは覚えていません。

 大切なのは「始まり」ではなく、私はあなたのことを愛しているという、「今」の想いなのですから。



 あなたが好きです。私は、それだけで充分なのです。



 中学生になって、私は勉強や部活に忙しくて、里帰りができなくなりました。

 だから、私はあなたに手紙を出しました。声は聞けないけれど、顔を見ることもできないけれど、あなたに関わっていたい。


 失いたくない。


 それからずっと、私たちは文通友達でしたね。


 私はあなたのいろんな事を知りました。犬が好きだということ。もう何年もバスケを続けているということ。高校でも大学でも英語を専門に勉強したいと思っていること。


 同じように、あなたも私のことをたくさん知っているでしょう?



 私は、欲張りです。


 より、あなたを求めた。より、あなたを欲した。

 その欲望は風船のようにどんどん大きくなって、そしてついに割れてしまった。



 一月前、私はあなたへの想いを手紙に書きました。


 私が、どんな気持ちでいるのか。どれほど、あなたを想っているのか。

すごく長い手紙だったでしょう? 書いても書いても書ききれなかったのですよ。


 けど、私が本当に伝えたかったのは、最後の一文だけ。



「あなたが、好きです」



 けれど、私があの手紙を書いたとき、全部終ったのですね。


 3日、4日・・・1週間・・・半月・・・1ヶ月。


 私は今まで、あなたに嫌われたことに気付きませんでした。

 返事を返してくれなかったのが、あなたの答えだというのに



 本当に求めるものこそ、つかみきれないものでしょう。

 太陽の光、空気、水、風。私たちが本当に必要なものはみな、その手に留めておけないものばかりです。

 私は、それらのリストの中に「あなた」がいました。



 さぁ、もう時間です。さよならです。


 私はあなたを恨みはしません。この別れの原因は私にあるのですから。

 ただ、あなたとの思い出は私の心のキズとなって、常にチクチクと痛むでしょう。


 後悔や悲しみや、マイナスの感情となって。


 そしてもう、あなたと私の道が交わることはないでしょう。



 私は、あなたと出会えてよかった。

 けど、出会わないほうがよかった。



Dear


 今でも、大好きでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ