消えたはずの階段が。
ラス担になった尖角です。
長いですが、 内容はきっと一番薄いです(笑)
ここで、少しだけ登場人物の紹介をします。
主人公:安藤彩音
他:賀川康仁,相沢雅哉,鈴木健大,内村姫星
全員が中学2年生で、本編では夜遅くに外出していますが、
深夜徘徊等は気にしないで、お読みくださいませ;
また、変わった名前の登場人物がいるので、紹介しました。
では、本編をお楽しみくださいませ^^
「今度の休み、何かして遊ぼうぜ?」
不意に康仁が、そう言った。
だから、私は「何かって、例えば?」と訊く。
すると、康仁は「そうだなぁ・・・」と考える。
『ちゃんと、考えてから口に出せっ!!』
そう、一瞬思ったのは内緒である・・・。
だが、そんな思いも康仁の一言で吹き飛んだ。
「そうだ! 肝試しやろう!!」 「次の休みは肝試しで決まりだ!」
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私達の学校には怪談話が存在する。
それは、『夜の学校には“異変が”』という話。
それ以上の詳しい説明はない。 だから、逆に怖い。
しかし、先日ある生徒が、夜の学校に忍び込んだとのこと。
そして、その生徒は意識不明の重体となり、救急車で運ばれた。
どうやら、その生徒は“怪談話の真相”を確認しに忍び込んだらしい。
けれど、学校に忍び込んだと言っても、たかが門を越えた程度。
本当に校内を歩き回って、“怪談話の真相”を解明したわけではない。
学校の外周を見回っている警備員に見つかり「君、出てきなさい」と止められ、
その生徒は“怪談話の真相”解明を諦めて帰宅。 そして、事故に遭ったのだ。
私達の学校では、そんな風に毎年忍び込もうとする生徒が2,3人現れる。
だから、夜間、学校は警備員を雇って、 そいつ等を止めようと考えた。
しかし、今回、事件は起きてしまった。
今まで何人もの生徒を止めてきた警備員だが、
所詮は人間。 いつかは、失敗だってしてしまうだろう。
それが、先日起きてしまったことである―――――――
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さて、そんなこんなで、怪談話が存在する学校に忍び込むことになった私。
怖いけれど、ワクワクが止まらない。 もう、眠気だって吹っ飛んじゃう!
そんな気持ちでいたはずが、いつの間にか眠ってしまっていたみたいだ。
「ヤバい、ヤバい!学校に行かなきゃ! 遅刻しちゃう!!!」
私は食パンを口にくわえて、家を飛び出す。
『家から学校までは、大体15分。 走れば、10分くらいで着けるかな?』
私は遅刻しないように そう計算しながら、ダッシュで学校へと向かう。
「ギッリギリ、セーフ!!!」
チャイムと同時に滑り込みで教室に入った私は、そう叫んだ。
すると、そんな私を見て友達が笑った。
「おっせぇよ、 遅刻! はい、遅刻決定っ!!」
そう言う健大。 そして、その隣でニヤニヤする姫星。
「遅刻じゃないから! いやっ、遅刻してないからっ!!!」
私はそうやって、必死に叫ぶ。 だって、事実っしょ?
例え、ギリギリだったとしも、間に合ったんだからさっ!!
だけど、そんな私に姫星が言った。
「遅刻じゃないけど、駄目じゃん!彩音!!」
「もっと早く来ないと、ホントに遅刻するよ?」
―――だぁああああああ!!!!!
そんなことは知ってるってばっ! だから、急いで来たんじゃん!
じゃなかったら、 別に遅刻しても良かったなら、ゆっくり家でパン食べてきたわっ!
この、天然アンポンタン姫星のドアホゥがっ!! この、ドアホゥがっ!!!
私は、そうやって心の中で叫ぶ。
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こんな風に、他愛もなく笑えるのが、今日で最後になるとも知らずに
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次の日。 ―約束の日―
私は、遅刻しないよう、10分前集合をした。
でも、そこにはすでに康仁と雅哉が待っていた。
場所は、学校近くの公園。
その公園の中にある、町で一番大きな一本杉の下で私達は待ち合わせをした。
そこはちょうど街灯の光が届かないとこで、夜 バレずに集まるにはもってこいの場所だ。
そして、時刻は11時30分。 肝試しには少し早いかもしれない。
だけど、いくら明日が日曜だからって、あんまし遅くまで寝ているわけにはいかない。 だって、 遅くまで寝すぎると、お母さんに「あんた、頭腐るよ? いや、もうすでに手遅れか・・・」って言われるから。
そんなムカつく嫌味を言われるのだけは、ぜひとも避けたい。
そんな理由や、他のメンバーにも色々事情があって、この時間に集合となった。
まぁ、別に肝試しに時間なんて関係ないよ♪
暗い&怖そうな場所があったら、それだけで十分!
あと、今回の場合だと、この学校の怪談の真相を解明する“勇気”!!
それさえあれば、何も問題ない! あとは、ただ楽しく肝試しするだけ。
そういった、“勇気”を持った勇士が、さらに この場へと集う。
名は「健大」と「姫星」。 これで、5人全員が集まった。
よし、 あとは、肝試しを行うため、 学校に向かうだけ。
そうして、「彩音」「康仁」「雅哉」「健大」「姫星」は学校へと移動した。
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学校に到着。
周りの警備員の動きを確認しながら、まずはじめに康仁が門を超える。
そのあとに、健大が「よいしょ」っと言って門の上に座る。
そこで、姫星に手を差し出して、「ほれ、来いよ」っと言う。
それに「うん」と返事をしながら、手を掴って門を超える姫星。
すると、健大が私にも言った。 「次、彩音! 来いよ!!」って。
その時、 若干、姫星に睨まれた気がしたけど、気にしない。
私はそのまま健大の手を握って、門を超える。 それに続く男2人。
これで、5人全員が校内に入った。 もう、後戻りはできない。
まぁ、ここまで来たんだからする気もないんだけれど・・・。
そんな風に思っている私のことを気遣ってか、康仁が私に聞いた。
「大丈夫か?」 「少し震えてるぞお前」 「やめるか?」って。
だけど、私は怖がってるって思われるのが嫌で、強がりを言った。
「何言ってんのよ、あんた!」 「あんただって震えてるじゃない」
「ってか、私のはあんたの怖いからとかじゃなくて武者震いだから」
「ただ、ワクワクしすぎて、体まで震えちゃってるパターンだから」
「だから、変なこというのやめてくんない?」 「逆に怖くなるからさ」
そうやって言うと、康仁は「そうか」と言って黙った。
いや、康仁だけじゃない。 全員が黙っていた。
それからしばらく妙な緊張と沈黙が続いたまま、下駄箱の入り口まで歩く。
そこに着くと同時、康仁が静かにポケットから針金を取り出して言った。
「これで、できるか? 雅哉」 「こんな針金しかなかったんだけどよ」
すると、それを聞いて雅哉が言った。
「余裕だよ」 「つか、むしろ十分すぎる」 「ほれ、貸してみ」
そう言って、雅哉が下駄箱の入り口のカギをピッキングし始めた。
――カチッ!!
しばらくすると、小さな音を立ててカギが開いた。
『ほら、開いたぞ』って顔でニヤケながら、こっちを見る雅哉。
『いやいや、ドヤ顔の需要なんてないから!』 っと私は心の中で突っ込む。
だが、少しだけでも笑う余裕があったのは、ここまでだった。
下駄箱のドアを雅哉が開けた途端、アホでもわかる寒気がした。
ゾッとする寒気。 鳥肌が全身を駆け巡る。 もはや、怖いの一言じゃ終わらない。
だからと言って、引き返すことはできない。 足が棒にでもなった気分だ。
いや、正確に言えば、前にだけは動いた。 引き返すことは許さないってことかな?
わかんないけれど、私達にはどちらにしろ進む道しか残されてなかった。
―――*―――*―――*―――*―――*―――
後ろを確認し、『いくぞ』とでも言いたげに頷いてから、雅哉が校内に入る。
その時、雅哉と康仁の2人が、手に持っていた懐中電灯に明かりをつけた。
そして、雅哉の後に続いて中に入る私達。 全員が、少し震えていた。
だが、そうやって恐怖に怯えているだけじゃ駄目だと思ったのか、
急に康人が首を横に振って、 自分の顔を両手でパシッパシッと叩いて言った。
「よっしゃ、気合入れて いくぞっ!!」
それを聞いて、みんなが頷く。
それからは、ひたすら無言で進んでいった。
1階のトイレを通り過ぎ、 第一準備室を眺めつつ、1-4の前を通る。
それから1―3,1-2,1-1と順番に通って、階段へと向かう。
ここまでは順調。 夜だから暗いだけで、別に変わったところは何もない。
しかし、ここからが問題だった。
雅哉と康仁の2人が懐中電灯の明かりを階段に向ける。
だが、そこにあったのは、行き止まり。
確かに、そこには階段があった。 明るい昼間には階段があったはず。
けれども、何度 目をパチクリさせたところで、それは変わらない。
そこはただの行き止まり。 何もないただの空間だった。
――オカシイ
そこにいる全員が思った。
首をかしげる私。 その隣で、「ありえねぇ」と呟く康仁。
しかし、これは夢などではない。 全て現実である。
私は、このオカシナ空間から逃げ出したかった。
いや、逃げ出さなきゃいけないと心が私に懇願する。
けれど、全く以て後ろに引かない足。 ピクリともしない。
そんな中、雅哉が言った。
「引き返して、もう1つの階段があるかどうかを見に行くぞ」
「ありえねぇから・・・ 階段がないとか、ありえねぇから」
「ほら、 いくぞ・・・」
私達は、それに従った。 いや、そうせざるを得なかった。
なぜなら私達は、後戻りを許された立場ではなかったから。
私達には始めから、前に進む道しか用意されていなかったのだから。
―――*―――*―――*―――*―――*―――
1-1,1-2,1-3,1-4と、来た道を順に戻っていく。
そして、さらに第一準備室とトイレを通り過ぎ、
懸命に下駄箱の奥にある階段へと足を運ばせる。
その途中、健大が唾を飲み込んだ。
その隣にいる姫星は、ずっと健大の服をギュッと握っている。
きっと、そうでもしないとどうにかなってしまいそうなのだろう。
その場にいる全員が、ここに来たことを・・・
いやっ、夜にここに来てしまったことを後悔していた。
だが、そんなことをいくら後悔したところで仕方がない。
私達は、『階段がありますように』と願いながら、
雅哉と康仁の海中電灯の明りに照らされた階段を見つめる。
今度は、階段があった。 では、さっきのはなんだったのか?
私達は全員、首を傾げた。
さらに訳が分からなくなり、馬鹿な私達の思考はパンク寸前。
もう、駄目だ。 意味が分かんない。
なんで消えてたり、消えずにそこにあったりするの?
どういうこと? 階段は消えるものだったっけ? わかんない。
わかんないから、 わかんないからこそ、雅哉が言った。
「2階に上がって、さっきの階段の場所を見に行くぞ」
「これで、さっきと同じで何もなかったら、速攻帰るぞ」
「正直、もうここにはいたくねぇ」 「けど、謎は解明しないとな」
「ほら、 行こうぜ・・・?」
雅哉の声が、いつになく弱弱しく聞こえた。
だけど、その雅哉の意見に、全員が激しく同意した。
もう、ここにはいたくない。
だけど、モヤモヤを残したままなのは嫌だ。
だから、私達は、震える足に鞭打って、2階へと上がっていった。
―――*―――*―――*―――*―――*―――
2階に上がって、すぐにあるのが第二準備室。
そして、そこから続くのが、私達2年生の教室。
私達は、準備室を通り過ぎたあと、2-4,2-3,2-2,2-1を通り過ぎる。
そして、階段へと近づき、 その時 雅哉が振り向いた。
「全員覚悟はいいか?」 「今から、照らすぞ?」
その雅哉の声に頷く私達。 覚悟は全員一緒だった。
「・・・あるな 階段・・・」
雅哉が、若干笑いながら言った。
もちろん、それは面白くって笑ったわけじゃなく、
訳が分からないのを誤魔化すために笑ったものである。
「どういうことなんだよ、一体・・・」
「もう、わけわかんねぇよ・・・俺・・・」
そう、雅哉が言った。
それを聞いた、康仁が言う。
「やっぱ、気のせいだったのか? さっきの」
「いや、違ぇだろ」
「みんな見たんだろ?」
「さっき、階段がなかったのを・・・」
健大がそう言う。 そして、それに対して頷く私達。
「ほんと、私・・・怖いよ・・・」
姫星が、震える肩を押さえながら言った。
「怖いのは、お前だけじゃないよ」
健大が、そう言いながら姫星に手を差し出す。
『怖いなら手を握っていろ』ってことかな?
私は、少しそんなことを思いながら言った。
「やっぱ、帰ろうか」
「私、 もうこんなところにいたくないよ」
全員が その案に頷き、 私達は帰ることになった。
―――*―――*―――*―――*―――*―――
―――*―――*―――*―――*―――*―――
帰宅時刻。 12時42分。
「ただいま」っと小さな声で家に入るものの、両親はともに寝ていた。
だから、私はそのままお風呂に入ることにした。
外に出て汚くなった体を洗いたかったのも そうだけれど、
何よりも一番、“心を落ち着かせたい―――” そう思って。
お風呂から出て、静かに布団の中に潜る。
今までの恐怖からくる疲れの所為か、 私はすぐに眠りに落ちた。
だがしかし、 少しして、私はお母さんに叩き起こされる。
「彩音! 電話! 早く、 なんか・・・・・」
――お母さんの声がいつになく慌てていた。
「もしもし?」
そう訊いた現在の時刻は、電話の表示によると1時36分。
『こんな時間に、誰が何のために?』 っとか考えつつ、
寝ぼけた声で、私は続けて「彩音です」っと言う。
電話の相手は、雅哉のお父さんだった。
「彩音ちゃん、 雅哉がね」
「さっき、交通事故にあって、病院に運ばれたんだ」
「でもね・・・」 「助からなかった・・・」
私は、雅哉のお父さんと数回しか喋ったことがないけれど、
一生懸命、気持ちを落ち着かせながら、 でも、それでも、
雅哉のお父さんの言葉が、 何とも言えない悲しみを含んでいて、
救えなかった悔しさでいっぱいだってことは、嫌というほど伝わってきた。
「どういうことですかっ!?」
私の中の眠気が一気に吹っ飛ぶ。 『一体・・・?』
私は、事故に遭ったという雅哉に会いに、病院へと向かった。
―――*―――*―――*―――*―――*―――
―――*―――*―――*―――*―――*―――
病院に着いた。
もう、そこにはすでに健大と姫星が。
もちろん、雅哉の両親や、近くに住んでいた親戚。
私達以外にも、雅哉の友達や雅哉を知る人が何人も来ていた。
「若いのに、可哀想」 誰かが誰かと話し合っている。
小さい声だけれど、皆が雅哉を想って話している。
他にも啜り泣く声や、号泣する音、 色んな音が犇めきあっている。
私も、傷だらけの雅哉の体を見て、 涙が止まらなくなった。
『何で? なんで?』 『まさか、肝試しの所為??』
私は色んなことを考えた。
――そんな時、一台の救急車が病院に到着。
病室で雅哉の両親と話していた医者を呼びに来た看護婦。
「大変です、先生」 「また、急患です」
看護婦が、叫ぶように先生に言う。
それから、大声はマズイと思ったのか、 先生の耳元で、
「財布の中に入っていたポイントカードの情報によりますと、年齢は14歳」
「名前は賀川康仁君」 「雅哉君と同じでトラックに轢かれての事故です」
っと言う。 少し近くにいて、耳のいい私には、残念ながら聞こえたが。
「わかった、 すぐに行く」
先生は、そう看護婦に伝えた後、
雅哉の両親に軽く会釈をし、病室から出て行った。
――賀川康仁君。 年齢は14歳。
その言葉が、私の中で何度も反芻される。
――賀川康仁君。 賀川君。 康仁君。 康仁・・・?
「まさか、康仁!?」 私は、咄嗟に叫んだ。
その言葉に体が勝手に反応したのか、振り向く健大と姫星。
「どうしたんだ、 彩音!」 健大が私に近付き訊いた。
私は、看護婦が医者に伝えたこと。 ここに康仁がいない事実を告げる。
「ウソだろ、 おい・・・」
健大が驚きを隠せない表情で、呟く。
姫星は「嫌だ」と言って、首を横に振る。
私達は、その事実を確認するために、部屋を飛び出した。
そして、急患センターで「今運ばれた人って、どこにいますか?」
「どこで事故に遭ったんですか?」 「康仁君って・・・」
「賀川康仁君ってのは本当ですか? 教えてください!!!」
私は、焦った声で、カウンターの人に訊いた。
答えるカウンターの女性。
「まずは、落ち着いてください」
「今、事故で運ばれたのは、賀川康仁君で間違いないです」
「ですが、今は手術中で、一般の人が中に入ることはできません」
「ですので、手術が終わるまでそこで掛けてお待ちくださいませ」
「嘘だ! 嘘だ!! 嘘だ!!!」
私は思わず叫んでしまった。
『もしかしたら、同姓同名の他の人かもしれない』
『事故に遭った賀川康仁さんは、私の知っている康仁じゃ―――』
私はそんなことを考えていた。 だけど、違った。
【手術中】 その赤い標示灯が消えると同時に医者が出てきた。
「まさか、また手遅れとはな・・・」 「なんて、運のない・・・」
「さっきの子もそうだったが、まだまだ未来のある子がな・・・」
医者が、助手の人とそんな会話をしながら出てきた。
その後に続いて、手術台を押して出てくる看護婦が2人。
その手術台に乗っているのは、まさに私達の知る康仁だった。
「おい、康仁!!」 「起きろよ!!!」
そう言って、歩み寄りながら叫び散らす健大。
「おい、起きろって!」 「お前まで・・・」
そんな健大の前に、医者が立ち塞がった。
「友達が可愛そうにな・・・」
「だがな、 死んですぐは、魂はそこにあるままだ」
「だから、あまり叫んでお別れを言い忘れるなよ・・・」
「その子は死んだんだ」 「ちゃんと、お別れを言いなさい」
医者は、そう健大に伝え、道を開けた。
そして、健大は何かを悟ったのか、 静かにゆっくりと頷く。
「康仁、今までありがとな」
「雅哉に会いに来ようとして事故に遭うとは悲惨だな、お前も」
「雅哉によろしくな」 「また、 また、逢おうぜ・・・」
健大は、そう言って一粒の涙を流した。
私も、姫星も、同じように、堪えることが出来なくって泣いた。
今まで、ずっと一緒にいたから。 耐えられなくって、泣いた。
―――*―――*―――*―――*―――*―――
病院の玄関ホールに響き渡る、私達3人の声。
それぞれの声が反響し合い、それは2人を悼む鎮魂歌のようだった。
それからしばらくの間、私達はずっと泣いていたが、
気が付いたら、いつの間にか泣き止んでいて、
雅哉の両親に「もう遅いから、家に帰りなさい」
「葬儀についてはまた連絡するから」って言われた。
確かに、そうだ!
時間が時間だし、子供が起きてていい時間ではない。
だから、私達は大人しくその指示に従って帰ることにした。
まぁ、結局 私達は全員、誰の葬儀にも参加できなかったけれども。
E N D
お読みいただきありがとうございました。
お題はホラーでしたが、あんましホラーじゃなかったですよね(笑)
今回は、前回の春企画に続く夏企画でした。
ではまた、次回の秋企画などでお逢いしましょう^^