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廃墟

作:愛莉

 これは、とある廃墟にまつわるお話です。元は工場だったらしいのですが、かなりボロっちぃらしくて。内部は蜘蛛の巣や埃だらけ、床が腐敗しているところもあったそうです。


 その廃墟に関して、「深夜になると幽霊が出る」とか「女がすすり泣く声が聞こえる」とか、怪談話にありがちな噂が流れていました。


 ――七月の半ば。とある高校に通う高校生たちが、その廃墟で肝試しをしようと計画しました。「何でそんな危ないことするかなぁ、アニメやゲームの世界じゃ完璧に死亡フラグだぞ」というツッコミはさておき。午後十時、彼らは廃墟前に集合しました。


 肝試しのルールは〝男女六人が二人ずつペアになり、廃墟の三階まで行って写真を撮る〟というシンプルなもの。


 最初のペアは真っ直ぐに三階を目指し、最奥の部屋――備品などが全て取り除かれた、ただの空間となっている埃っぽい部屋で写真を撮りました。次のペアも、最後のペアも、同じように行動。


 結局、誰も幽霊を見たり妙な声を聞いたりすることなく、三組とも廃墟の中で写真を撮ってきました。携帯電話で撮った写真にも、全く不自然な点はなく。


 何だか拍子抜け――とみんなで笑っていたら、一人の女の子の携帯電話が鳴りました。番号非通知からの着信。彼女は不審に思いながらも電話に出ました。


「もしもし? どちら様ですか?」と声を掛けると、女の声でこう返ってきたんです。

『忘れ物、してるよ?』

「何のことですか?」

『写真を撮るとき、お茶を床に置いたでしょう?』


 廃墟に入る前、彼女が手に持っていたペットボトルのお茶。それを内部に置き忘れてきたことに気付き、背筋が凍りつきました。


 慌てて電話を切ろうとした彼女ですが、電話を切る間際、女の声が聞こえました。

『届けてあげようか?』――と。


 彼女はみんなに通話内容を告げ、即座に逃げ帰り、事なきをえました。以来、彼らが廃墟に近付くことはなかったそうです。



(了)

次が最終話、尖角さんです。

引き続きお楽しみください!

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