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戦わずに大陸を落とした男――気づけば公爵令嬢と参謀と商人に囲まれている  作者: 慈架太子


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40:信者崩壊

 信仰は、静かに壊れる。

 音はしない。

 だが、戻らない。


 教国・聖都リュミナ。


 朝の祈り。


 大聖堂には、いつものように人が集まる――はずだった。


 だが。


 空席がある。


 ほんの少し。


 だが、確実に。


「……減っている」


 司祭の一人が呟く。


「気のせいだ」


 別の司祭が即座に否定する。


 だが。


 気のせいではない。


 列は短くなり。


 声は小さくなり。


 祈りは、揺れている。


「神は見ておられる」


 壇上の声は、いつも通り。


 だが。


 届かない。


 外。


 配給所。


 二つの列。


 一つは、教会。


 もう一つは――


 “何もない場所”。


 そこには、指示はない。


 救いもない。


 だが。


 人がいる。


 少しずつ。


 増えている。


「……行くのか?」


 誰かが問う。


「分からない」


「でも……」


 言葉が続かない。


 選ぶ。


 それは、怖い。


 だが。


 選ばないままでは、足りない。


 一人が、動く。


 祈りの列から外れる。


 視線が集まる。


 だが。


 止める者はいない。


 止められない。


 それが、今の教国。


 大聖堂。


「……報告」


 枢機卿の前に、司祭が跪く。


「信徒数、減少傾向」


 短い言葉。


 だが、重い。


「原因は」


「……外部」


 曖昧な答え。


「具体的に言え」


 一拍。


「“選択”です」


 沈黙。


「……何だそれは」


「配給が分かれています」


「我らと……外部」


 言葉を選ぶ。


「外部は、何も与えません」


「だが」


 一瞬の間。


「……人が動いています」


 それが問題。


「……救っていないのに?」


「はい」


 理解できない。


 それが、恐怖になる。


「……止めろ」


 枢機卿が言う。


「排除しろ」


 即断。


 だが。


「できません」


 司祭が答える。


「理由は」


「敵対行為がないため」


「ただ……“何もしない”だけです」


 沈黙。


 対処不能。


 それが、最も厄介。


 森の拠点。


「……崩れてるわね」


 エルディア・ヴァレンティナが言う。


 帳面には、変化が明確に出ている。


「信徒の移動」


「祈りの減少」


「自発行動の増加」


 マリナ・ルクレツィアが頷く。


「ええ」


「完全に“分断”ですわ」


 レオニア・アルディウスが腕を組む。


「……戦ってねえのに、勝ってるな」


「違う」


 エルガード・カウフマンが言う。


 短く。


「勝ってない」


 一拍。


「壊れてるだけだ」


 静かな否定。


 マリナが目を細める。


「……その違いは?」


「分からない」


 エルガードは言う。


「だから、見てる」


 火を見る。


 揺れている。


 だが。


 強い。


 教国。


 大聖堂。


 祈りは続く。


 だが。


 その中に。


 “疑い”が混ざる。


「……本当に、見ているのか」


 誰かが呟く。


 小さな声。


 だが。


 それは、消えない。


 信仰は、崩壊していない。


 だが。


 “信者”が崩れている。


 それが、本質。


 構造ではない。


 思想でもない。


 人だ。


 人が変わる。


 それが。


 最も大きな変化。


 森の拠点。


 エルガードは、火を見る。


 揺れている。


 だが。


 変わった。


 確実に。


 流れが。


 教国は、まだ立っている。


 だが。


 中は、崩れている。


 静かに。


 戻らない形で。


 それが。


 この戦いの、次の段階だった。

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