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異世界移動は人間だけじゃないのです!

元・不死鳥、現・消防士〜今日も燃えないように燃えに行く〜

作者: 葉月いつ日
掲載日:2025/12/31

──俺はかつて、フェニックスだった。


燃えては蘇り、蘇ってはまた燃える。世界が「ヤバい」「もう終わった」と言い出す頃には、だいたい俺が原因だった。


山を焦がし、海を蒸発させ、自分が蘇るために、意図的に都市を焼いたこともあった。神々からは「お前ちょっと自重しろ」と言われた。


そして気づいたら──


「火野! お前また寝坊か!」


消防署の詰所で怒鳴られていた。


現在の俺は、火野 恒一(ひのこういち)

地方都市の消防士。不死でも神獣でもない、ただの地方公務員だ。翼はないし、炎を吐こうとすると普通にむせる。


だがなぜか火に強い。訓練で火に近づいても、教官が「ちょ、近すぎ!」と叫ぶくらい平気。


同僚からは「火野って前世マグマ?」とか言われている。

惜しい。かなり惜しい。



その日は総合病院の大火災だった。


「地下から出火! 患者多数!」


サイレンを鳴らしながら出動する。病院は燃えたら終わりのオールスターだ。

カーテン。薬品。酸素ボンベ。俺の元同類みたいな奴らが勢揃いしている。


「よし、救出優先だ!」


隊長の指示を受け、俺は走った。煙の中、患者を抱え、階段を何度も往復する。


──ああ、この熱。


懐かしい。昔はこの三十倍くらいの炎で昼寝してた。


「火野! 顔近い近い! 眉毛焼けるぞ!」

「大丈夫です、替えはあります!」

「替えって何だ!?」



一時間を過ぎた頃、医者や職員、患者全員の救出完了。鎮火も目前──と思ったところで。


「すみません……主人が……」


避難者の中から、老婆が震えながら言った。名簿を見る。確かに一人足りない。


「……俺が行きます」

「待て火野! もう限界だ!」


俺は振り返り、親指を立てた。


「俺、燃えるの得意なんで」


意味がわからないという顔をされたが、気にしない。



中は、完全に地獄だった。天井は落ち、梁は崩れ、黒煙で前が見えない。普通の人間なら三歩でアウトだ。


──が、俺は普通じゃない。


「フェニックス的には、まだ序盤だな」


八階まで一気に駆け上がる。中央の個室に、老人がいた。


「お迎えです!」

「……天国かい?」

「違います、消防です。方向は逆です」


老人を抱えた瞬間、天井が派手に崩れ落ちた。熱と炎が迫ってくる。


──昔の俺なら、ここで翼を広げていた。今は、背中だ。


瞬時に老人に覆いかぶさり、瓦礫を受け止める。


「ちょっと熱いですが我慢してください!」


俺は歯を食いしばり、前へ進んだ。体の奥が、かすかに燃える。


「……久しぶりだな、この感じ」


崩壊寸前の建物を抜け、俺たちは外へ飛び出した。



歓声。拍手。泣き崩れる家族。


「ありがとう!」

「命の恩人です!」


老人は俺の手を強く握った。


「本当に……ありがとう……」

「いえ、公務ですので」


そう言って、俺はそっと距離を取った。ヒーロー扱いは性に合わない。


同僚が肩を叩く。


「お前……何者なんだよ」

「元・鳥です」

「は?」

「冗談です」


──半分は。



夜空を見上げる。もう炎はない。


不死鳥だった頃は、世界を救っても誰とも肩を並べられなかった。

今は違う。汗をかき、怒鳴られ、ホースを握る。


──悪くない。


「現代に転生したのも、案外アリだな」


俺はヘルメットを被り直し、消防車に戻った。次に燃えるのは、きっと世界じゃなく、どこかの現場だ。


それでいい。俺は今日も、覚悟を燃やして火に挑む。


──元・フェニックス、現・消防士として。





最後まで読んだ頂き有難うございます。作者のモチベのために☆やいいねを残して頂くと幸いです。感想などもお待ちしております。

ブクマ頂けたら……最高です!


【大怪獣クラーケンは、転生した世界を胃袋から支配しようとしているようです】

【冥界の番犬は、現実世界で癒やす側!】

【大魔神イフリートは転生先で、もはや神】

【海洋の魔女セイレーンが転生先でイワシに釣られ水族館を救う件!】

と合わせてお楽しみ下さい。

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