7話 言葉は踊る
~登場人物~
主人公~~ベル
貴族の息子~~ルイ
村長~~カール
村人~~トーマス
村人~~キャシー
村人~~ヘレン
村長の息子~~ルイン
_「トーマスが犯人?違う。犯人は、ヘレンよ」
_「ヘレンか…ベルは、彼女の家で、何か見つけたんだね?」
_「!。地下室があること、知ってたの⁉」
_「地下室?なるほど…」
_「?」
_「ベル!証拠は、地下室にあるよ」
_「嘘!わたし、そこに居たけど…暗くて何も見えなくて…」
_「あの~」
ビクッ!
_「なんでしょう?」
_「大体、動かせたんですけど…一人では、重くて動かせない物があって…」
_「わかりました。手伝います」
_「わたしは…」
トーマスに話し掛けようとしたベルの腕を、ルイの手が掴む。
_「地下室のことは、二人だけの秘密だよ」
_「わ、わかった…」
_「あと…僕が、これから何を言っても、絶対、顔に出さないでね」
_「う、うん?」
_「それから・・・」
道を塞ぐように倒れた戸棚。
_「こっちを持てばいいかな?」
_「はい。持ち上げるには重すぎますし、奥に押し転がせれば…」
_「ねえ。君には、”何か”が見えているのかな?」
_「えっ」
_「え!」
ドン。
_「…ルイ様にも、幽霊が見えているのですか!」
_「”幽霊”ね~。見えてるよ、幽霊」
_「ほ、本当ですか…」
_「いいえ、噓です」
_「そ、そうですよね…」
びっくりした!
わたし、顔に出て無かったかな…
あんなに、隠していたのに、自分から『見えている?』なんて聞く?
_「君は、見えているんだね。その”幽霊”が…」
_「…はい」
_「いつからかな?」
_「え~と、ルイ様が、村に来た時から…」
_「それは、嘘だよね?」
_「え?」
_「・・・実は、この村に入った時から、嫌な気配を感じていたんです」
_「・・・」
_「僕は、18年前に起きた事件の”被害者の霊”だと思ったのですが…違いましたか」
_「そうですか。多分、違うと思いますよ」
_「じゃあ~その幽霊は、”男”なんですね?」
_「…はい。そうです」
_「わたし、”女”なんだけど…」
不思議そうな顔で見つめるベルを、無視するトーマス。
_「あの~道も拓けたので、部屋の中に入りませんか」
_「…はい」
三人は、赤い部屋に移動する。
_「真っ赤ですね~血ですかね?」
_「これは…仕事で使う染料ですね」
_「前に来た時も、部屋は、この様子でした?」
_「前に来た時は、家の中に入っていないので…って、”前に来た”って言いました?」
_「あれは…大きな独り言でしたかね?」
_「隠れて、盗み聞きしていたんですか」
_「人の気配がしたので、つい…」
_「・・・他には、何か聞きましたか」
_「いいえ、他に何か言ってましたかね?」
_「どうでしょう…あれ?」
ベルが消えたことに気づき、辺りを見回すトーマス。
_「どうかしましたか」
_「い、いえ。何も…」
_「村長を、殺した証拠でも見つけました?」
_「そんな物あるわけないでしょ」
_「ええ、そうでしょう。まだ、殺していないのですからね」
_「何…言ってるんですか。冗談でしょ?」
_「君はまだ引き返せるよ。今なら…」
_「引き返す?何を?」
_「息子を殺した罪悪感があったから、仇である村長を生かしていたのでしょ?」
_「・・・どこまで調べた?」
_「僕は、何も調べていないよ。聞いただけ」
_「聞いた?」
_「まさか、ずっと隠れていたの?優しいね、君は…」
_「は?」
トーマスの背後に、男性の幽霊が現れる。
_「・・・ルイン」
_「久しぶり。トーマス」
_「”男の幽霊”と言っていたから、幽霊になった”親友”の存在を知っているんだと思ってたよ…」
_「やっぱり…あんたは、幽霊が見えていたのか」
_「噓つきは、お互い様でしょ?」
_「・・・ルインに、全部、聞いたんだろ。事件のこと?」
_「いいえ。『トーマスを止めてほしい』とだけ。後は、何も喋ろうとしない」
_「・・・」
_「おかげさまで、色々と、この村について知れましたよ」
_「はっ。結局、調べてたのかよ」
_「違う。お前が、罪の無い人を殺し始めたから…僕が話したんだ」
_「罪が無い…」
_「キャシーさんの夫は、18年前の事件には、関わっていないだろ!」
_「罪だ!この村に”幸せ”は要らない!」
_「・・・トーマス」
_「そうですか、そうですか…では、殺しましょうかね」
赤い家の入り口で~
_「それから…ベルは、頃合いを見て、村長の家に向かってください」
_「それは”見張りに戻れ”ってこと⁉」
_「もう、手遅れかもしれません…が、何とかしてください」
_「はぁ⁉」
こっそりと抜け出し、村長の家に向かうベル。
手遅れ?何とかしろ?どういうこと…
一人で全部抱え込んで!何も話してくれないから…
村長の家へ向かうベルの歩みが遅くなる。
ルイ…犯人と二人っきりだけど、大丈夫かな?
でも、村長の身に、危険が迫っているって…!
まさか、犯人は、一人じゃない!
_「誰か~助けて!」
_「え?」
叫び声の響く村。
木々が並ぶ道を抜けたベルの瞳には、あちこちで火が上がる、村が映っていた。
_「・・・何、これ…」
_「あっちに人が!」
_「今、行く」
_「た、大変…」
_「どうした⁈」
_「大変なのよ!」
_「大変なのは、見ればわかる!」
_「へレンが…」
_「ヘレン‼」
ベルは、燃える家々を抜けて、地下室を見つけたヘレンの家へ向かう。
パチパチ、ガラガラガラ。
ヘレンの家は、真っ黒に変わり、骨組みだけが形を成していた。
_「そんな…」
崩壊しない、ぎりぎりのバランスを保った、家に上がる。
家の中には、人の形をした、黒い煤の塊が落ちていた。
それは、精巧に出来た人形とは思えない、”人間”だった。




