14話 希望は踊る 【フリガナ版】
執事に扉を開けさせ、部屋に入る、ベル。
_「ルイ・・・」
ベルは、高熱に魘されるルイに近寄り、手を握る。
_「死神様、お願い致します」
心配するベルに、期待の眼差しを向ける、執事。
_「わたしだって、助けたい!けど、どうすることも…」
_「・・・ベル」
荒い息を上げるルイが、目を覚ます。
_「ルイ!無理しないで」
_「ベルに話がある。俺が消える前に…」
_「駄目、諦めないで!」
_「君を殺した秘密を話したい」
_「嫌…聞きたくない。だって、理由を知ったら、わたしは消えるって」
繋がれた手を、ルイが強く握り返す。
_「あの日、俺は、逃げていた」
_「逃げていた?誰から?」
_「この屋敷の主からだ」
_「主って、父親⁉ルイは息子なのに、どうして…」
ルイは、熱に苦しみながらも、話を続ける。
_「俺が、子供を殺したからだ」
_「ルイ様…」
死神に罪の懺悔をしていると、勘違いする執事は、下を向き、涙を流す。
_「俺は、一目見ただけで、その人物の死に際を、覗き見るが出来る」
_「ふふ、なに言ってるの?こんな時に冗談を…」
_「冗談では無い!冗談ではないんだ」
苦しそうに背を起こし、咳き込みながら、ベルの目を見て訴える、ルイ。
_「わ、分かった。信じるから、落ち着いて…」
ルイの背中を擦り、息を整えさせる、ベル。
_「多くの、幸せな死に際を見てきた」
_「だが、余りにも悲惨な死を、遂げる者もいた」
_「そんな未来を、幼い僕は、見ることが出来なかった」
力が抜けて、ベットに倒れ込む、ルイ。
_「僕は、可能な限り、悲惨な死が訪れる者を、”自らの手で”殺していった」
_「ベル…君も、その一人だった」
_「そう…だったのね」
生きることに必死だったあの頃…
自分に訪れたであろう死に際、何となく、想像できる気がする
_「あの日…僕は、この屋敷の子供を、殺しに来た」
_「その子は、僕の冗談を信じてくれた、初めての人だった」
_「だから、揺らいだのかもしれない…」
痛みと後悔が押し寄せ、ルイの表情が曇る。
_「命を奪う直前に、執事が、部屋に入って来た」
_「僕は…屋敷を飛び出し、逃げ出してしまった」
_「その道中…ベルに出会った」
強張っていたルイの頬が、微かに緩む。
_「悲惨な未来を見た僕は、思わず、君を殺してしまった」
_「だけど、突発的な犯行だったから、痕跡を残しすぎちゃったんだろうね」
_「おかげで僕は、追跡して来た屋敷の者に、捕まったよ」
_「本当、君には邪魔されてばかりだ」
_「邪魔?他に私が、いつ邪魔を?」
少しだけ、和む空気。
_「でも…僕が捕らえられている間に、あの子は、悲惨な死を遂げてしまった」
_「息子を亡くした父親は、僕の話を信じた」
_「そして、父親は、僕に復讐を依頼した」
_「その時から、俺は、彼の息子に成り代わったんだ」
話を終え、ゆっくりと深呼吸をする、ルイ。
いつの間にか、姿を消した執事・・・部屋は、静寂が続く。
_「少しだけ、横になっていても良いか」
_「…うん」
_「ありがとう、ベル…」
_「おやすみなさい…」
ルイは、眠りに就いた。
その後、ルイが目覚めることは無かった…
ルイの死に、様々な人が、屋敷を訪れた。
悲しむ女、喜ぶ男、嘲笑う女、貶す男
屋敷の中は、ルイの死を忘れた様に、賑やかだった。
その間、私はひとり、部屋の端に、うずくまっている事しか、出来なかった。
_「力が抜けていく感覚…」
_「後は、このまま消えていく時を、待つだけ…」
自分の過去を知った私は、満足してしまった
ただ…ルイ自身のことを、聞けなかった事が、唯一の心残りだ
来客が減り、屋敷が静まり返った頃~
壁をすり抜け、屋敷の裏庭に来ていた、ベル。
_「ベル・・」
_「?」
微かな風の声が聞こえ、後ろを振り向く、ベル。
ベルに微笑みかけたルイの魂は、沈みかけの夕陽に見送られ、花園へと消えて行った。




