11話 復讐は踊る 【フリガナ版】
~登場人物~
主人公~~ベル
貴族の息子~~ルイ
村長~~カール
村人~~ヘレン
村人~~キャシー
幽霊~~ルイン
ルインの親友~~トーマス
_「う、ん~ん」
地面に伏せたベルが、目を覚ます。
_「目が覚めたか」
_「ここは…どこ?」
辺りには、腐った木材や、埃を被った麻袋が置いてあった。
_「川の畔にある納屋だ。今は、使われていないけどな」
木材に腰掛けるルインが、立ち上がる。
_「ここで…何をするつもりなの?」
_「君を人質にして、ルイを誘き出す」
ルインは、角材を固定した紐に、手を置く。
_「万が一、ここで事故が起きても、誰も、助けには来ない…」
握り締めたルインの手が、紐をすり抜ける。
_「ここで、仇を獲るつもり?」
_「仇じゃないよ。これは、僕の復讐だ」
_「あなたが、復讐をする相手は、”トーマス”じゃないの?
だって…トーマスが、あなたを…」
_「知っているよ。殺された時の記憶が、残ってるから…」
_「だったら、どうして…」
立ち上がっていたルインが、再び腰を下ろし、語り始めた。
_「都の学園へと旅立つことになった僕は、あの日、村を出る予定だった」
ルインの話しを聞きながら、ベルは、脱出の隙を窺う。
_「僕の父親は…君も、知っているのかな?」
_「え?ええ。知っているわ」
突然の問いかけに驚き、適当に話を合わせる、ベル。
_「聞いての通り、ここで父は、トーマスの母親の顔を潰したんだ」
顔を潰した⁉
母親は、18年前に事故で死んだはずじゃ…
あれは、嘘だったの?
_「村長は、トーマスの母親を殺したの?」
_「ああ。そういう約束だったそうだ」
_「トーマスの父親が、僕の母を殺し、僕の父が、トーマスの母親を殺す」
_「これが、酒に酔った父が、5歳の僕に語った真実だ」
母を思う悲しい表情で、天を仰ぐ、ルイン。
_「この事実を村人たちが知れば、父は、村長で居られなくなる。
僕の未来も…消える」
_「そう思った僕は、トーマスの親友になり、監視することにした」
後悔した表情のルインは、立ち上がると、積み上げられた角材に近づく。
_「親友を騙していた償いとして、旅立つ前に、18年前の真実を打ち明けた」
_「トーマスは、事実を受け止めきれず、
掴み合いになった末、頭を打った僕は”死んだ”」
_「事故だったのね…」
_「だから、トーマスを恨んではいない。僕が、復讐したいのは…」
誰かが、納屋の扉を開ける。
_「親友を殺した、お前だ!」
ルインの手が紐を掴み、勢いよく降ろされた腕で、紐の縛りを解く。
グラ!
「え・・・」
ガラガラガラ。
積み上げられた角材が、バランスを保てず、雪崩れ落ちた。
_「ルイ!」
崩れ落ちた角材に、滴る血。
_「終わったよ。トーマス」
ルインの体が、徐々に薄れていく。
_「君も、自由だ…」
そう言い残すと、ルインは消滅してしまった。
_「そ、そんな…ルイ!」
角材に手を掛け、持ち上げようとする。
何本も積み重なった角材は、重く、一人ではとても動かせない。
_「お願い!動いて!」
_「俺は、手伝わないぞ」
_「そう言わず、手伝って…ルイ⁈」
ベルの隣には、下敷きになったはずのルイが、立っていた。
_「じゃあ、この人は…」
_「知らないほうが、良い…」
_「・・・わたしが、知っている人物なんだね」
_「・・・村はずれの林道に、馬を用意してある。帰るぞ」
_「優しいね…ルイは…」
馬に乗り、村を出た二人は、ゆっくりと帰路を歩いていた。
_「村人たちに、挨拶も無しで出て来たけど、よかったの?」
_「今は、そっとしておいた方がいい。
村長を殺されて、殺気立っているから」
_「あ~そう言えば…」
ベルは、納屋から林道への道のりで、破壊された村長の家を見ていた。
_「結局、村長を殺したのは、ヘレンだったの?」
_「状況的にそうなるね。
ヘレンの家にあった焼死体は、母親だったのかな~」
_「でも、火事の時、お隣の人は、ヘレンの名前しか呼んでいなかった。
一人暮らしだったんじゃ…」
_「…俺にも、わからないな~」
馬の脚を速める、ルイ。
_「ねえ。18年前に村を追い出された女性って、ルイの…」
_「ぷ、ははははは」
突然、笑い出す、ルイ。
_「まさか、僕が、ルインの弟だと思っていたの?僕の方が、年上なのに?」
恥ずかしさで、顔を真っ赤にする、ベル。
_「だ、だって!名前も似てたし、ルイの年齢を知らないし…」
_「それで、勘違いしたわけか。
僕は、今年23歳だ。女性が村を出た年とは、年齢が合わないでしょ?」
_「へ、へ~。結構、歳上だったんだ」
同い年だと思っていたベルは、動揺で馬から落ちそうになる。
_「ついでに、もう一つ、教えてほしい事があるの…」
_「なんだ?」
_「あなたは、誰?」




