9話 血は踊る 【フリガナ版】
~登場人物~
主人公~~ベル
貴族の息子~~ルイ
村人~~トーマス
村人~~キャシー
村人~~ヘレン
幽霊~~ルイン
グサリッ。
_「え!」
トーマスの衝き立てたナイフは、
ルイの前に庇い立つ、ヘレンの胸に刺さっていた。
_「は⁉なんで…」
バッ!グサッ。
ルイは、ヘレンの体を死角にしてトーマスとの距離を詰め、
その喉元を搔っ切った。
_「う、ごほっごほっ。あ」
ドサ。
溢れる血を、吐き出しながら、その場に倒れるトーマス。
_「トーマス‼」
真っ赤な地面が、一瞬で朱色に染まった。
_「ルイ!約束が違うじゃないか!」
トーマスの傍らに鎮座し叫ぶ。
_「ルイ、早く手当てを!このままじゃ、ヘレンも死んじゃうよ!」
しかし、ルイは助ける素振りを、全く見せない。
_「二人には、ここで死んでもらう…」
_「ふざけるな!僕は、トーマスを”止めろ”と言ったんだ。
”殺せ”だなんて、言っていない!」
鬼の形相で睨みつける、ルイン。
_「・・・ベル。地下室へ案内してくれ」
_「え⁈」
_「この死体を、地下に隠す」
_「・・・わかった」
_「・・・逃がさない。この村から出れると思うなよ⁈」
豹変した表情で、そう言い残し、どこかへと消え去る。
_「ベル。何か、死体を隠せる物を、うっ」
吐血する、ルイ。
_「ルイ!先に、傷の手当てを…」
_「いや、時間が無い。今頃、村人たちが、俺を捜しているはずだ」
_「でも…」
じわじわと、服に赤色が拡がる。
とても、後回しにする事は出来ない。
_「待って!」
何かを思い立ち、部屋の奥へ向かうベル。
燭台に置いてあった蠟燭に火を灯し、戻って来た。
_「背中。見せて」
_「…冗談だろ?」
_「早く!時間が無いんでしょ」
服を切り裂き、傷を晒け出す。
ルイの口に布を噛ませ、鉄の棒を熱する。
_「・・・ん!」
意を決したベルは、蠟燭の火で熱した鉄の棒を、ルイの傷に押し当てた。
_「ぐっ…あああ」
見ているだけで、痛々しい。
正しい治療法で無いことは、分かっている。
しかし、今は、この方法しか…
_「これで、血は、止まったはず?」
_「よし。死体を運ぶぞ」
_「うん。でも、どうやって?」
_「当時のままなら、裏に、荷車が置いてあるはずだ。それを使う」
_「?」
外に出て、家の裏に回ると、確かに荷車が置いてあった。
荷台には、荷物を覆い隠す布も付いている。
二つ死体を乗せても、余裕があるほどの、大きな荷台だ。
どうして、こんな村はずれの家に、立派な荷車が?
ベルは、荷台を覆う布をめくる。
_「え!」
荷台は、赤く染まり、その上に、古い血の跡が付いた斧が、乗せられていた。
_「ベル。荷車を、表に運んでくれ」
_「え、でも…」
_「そのままで、構わない。急いでくれ!」
_「う、うん」
ベルは、荷車を動かそうとする。
だが、立派な荷車は、重くて動かせない。
_「何をしている?」
待ち草臥れたルイは、死体を引きずり、様子を見に来る。
_「見てわからない?重くて動かないの!」
_「俺が、荷車を牽く。ベルは、後ろから押せ」
死体を荷台に乗せ、ヘレンの家へと向かう。
木々を抜け、家々の並ぶ方へ近づく。
_「ここからは、村人に見つからないよう、慎重に進むぞ」
_「う~ん」
ヘレンの家に近づいているのに、村人の気配を感じない。
火事の後とはいえ、人が全くいないなんて…
まだ村長の家で、話し合いをしているのかな?
_「着いたぞ。ベル」
_「地下室への扉は…」
_「え!わたし、知らないよ」
_「・・・あった」
焼け落ちた瓦礫を避け、床下の扉を開く。
_「何でも、知っているのね…」
_「ベルは、死体を運んでおいてくれ」
_「ルイは?」
_「俺は…別にやる事がある」
_「何を?」
_「ベルが、知る必要は無い」
_「何それ!どうして!わたしにも、説明してよ」
ルイは、何も言わず、その場を去って行った。
_「行っちゃった・・・」
怒りながらも、ベルは、死体を地下室へ運ぶ。
地下は、ルイの点けた蠟燭で、明かりが広がっている。
素朴な机と、木製の椅子。
端の方に置いてある長机には、祭壇の様なものが、置いてある。
_「前は、暗くて見えなかったけど…以外と広かったんだ」
不図、何かを思い出したベルは、地面に目をやる。
_「…あった。あの時、落ちたのは、これだったのね」
ベルは、長机の横に落ちた”人骨”を拾い、祭壇へと戻す。
_「あなたは、トーマスに殺されていたのね…」
祭壇に置かれた写真には、仲睦まじく写る、トーマスとルインの姿があった。
_「どこ行った!」
_「こっちは、いないかったぞ」
_「まだ村からは、出ていないはずだ。捜せ!」
血眼になって、ルイを捜す村人。
_「思ったよりも、動きが早い。ルインの仕業か…」
_「こっちだ!血痕が落ちてるぞ」
物陰に身を潜める、ルイ。
_「・・・行ったか?」
死体を運ぶさい、荷台から落ちた血に、気を取らる村人たち。
その隙に、ある場所へと向かうルイ。
コンコン。
_「はい…どちら様ですか」
_「事件のことで、少し話しがしたい」
_「・・・わかりました。どうぞ、お入りください」
お茶を用意する、キャシー。
_「貴族の方に、お出しするような物ではありませんが、お茶です。どうぞ」
_「いや…結構だ」
_「・・・私を、捕まえに来たのですか」
_「既に、犯人は死んだ」
_「…そうですか。私も、殺されるんですね」
_「俺が、あなたを消すことは、無い。
結末は、自分で決めろ。それを、伝えに来た」
_「優しい方なのですね…」
_「どうかな…俺は、唯、直接手を下したくないだけだ…」
_「ええ。私も、同じでしたから…」




