8話 真実は踊る 【フリガナ版】
~登場人物~
主人公~~ベル
貴族の息子~~ルイ
村長~~カール
村人~~トーマス
村人~~キャシー
村人~~ヘレン
村長の息子~~ルイン
黒炭の柱が崩れ落ち、崩壊するヘレンの家。
_「誰も、ヘレンさんを見ていないのか」
_「きっと、逃げ遅れたのよ。あーどうしよう…どうしよう…」
_「落ち着け。まだ、逃げ遅れたと決まったわけじゃないだろ」
_「でも…」
_「あれは、本当にヘレンだったの?」
顔は、黒墨になり、判別できない。
焼けた死体は、直立した状態で倒れていた。
火事で焼死したのなら、逃げようと踠いたはず…
死体は、別人?あるいは…”誰かに殺された”
_「でも、誰が…」
_「た、大変だーー」
_「火事なら、ほとんど消火したぞ?」
_「違う!村長が!」
_「今度は、村長?」
村長の家に集まる村人。
_「あれ。落書きじゃなかったんだな」
_「じゃあ、本当に人狼がこの村に!」
_「人狼って、誰がだよ?」
_「それは…村人の誰かがだろ」
_「落書き?人狼?何で、今更…」
ベルは、人混みをすり抜け、村長の家に入る。
そこには、血塗れで倒れる村長カールの姿があった。
_「死んでる。ルイが言った通り、村長が襲われた」
『手遅れ』って、この事だったの?
もし、ヘレンの家に寄り道しなければ、犯人が分かっていた!
ルイは、そのためにわたしを…
_「これ・・・やっちゃったかもしれない…」
~同時刻~
赤い部屋の家では、
懐からナイフを取り出したルイが、トーマスに襲い掛かっていた。
_「避けて!トーマス」
軽い身のこなしで、斬撃を避けるトーマス。
互いに距離を取り、出方を窺う。
_「とても、貴人の動きとは思えないな?」
_「お褒めに預かり光栄です」
_「嫌な奴だな!」
ルイに向かい走りだす、トーマス。
キラリ。
_「!」
ルイの顔付近を、トーマスの腕が通過する。
下から突き上げた、通過する手には、針の様な物が握られていた。
_「毒でも塗っているのかな?悪趣味だね」
_「お褒め頂き光栄だが、喋るほどの余裕があるのか!」
手に持つ針を、投げるトーマス。
ルイは、体を大きく反らし、飛んで来る毒針をかわす。
_「ふー危ない、危ない。大事な武器を捨てて、良かったのかい?」
_「安心しろ。まだまだ、沢山用意している」
トーマスは、針を見せびらかし、余裕を見せる。
_「掠めただけで死んでしまう毒を、そんなに持ち歩いていたんだ」
_「ただの神経毒だ。死にはしない」
_「これまでの殺人も、神経毒で眠らせてから、殺していたの?」
_「この毒では、眠りはしない。
意識を残したまま体を裂けるように、毒を弱めている」
_「本当に、悪趣味だね。君は…」
_「苦痛を与えなければ、罰にはならないだろ?」
村長の家では、人狼と火災の対策について、村人たちが話し合いを始めていた。
_「これから、どうすればいいんだ」
_「まずは、燃えた家の修理を…」
_「しかし、村の資金は、村長が管理をしている」
_「どれぐらいの予算を修理に使えるか、把握しているのは、村長だけだぞ!」
_「その村長は…もう…」
重い空気が流れる。
_「この村で計算が出来るのは、村長だけだったんだ」
_「まさか、犯人の狙いは、村長だけじゃなく、村人たちも?」
村長カールを殺すためだけに、村に火を点けるとは思えない。
村長の死体には、この前とは違い、何度も刺した様な無数の傷があった。
犯人は、余程、村長に恨みを抱いていた”人間”だと思うけど…
_この村と村長、両方に恨みを持った人物なんて…」
_「もし、ルイが言っていたように、犯人がトーマスだったとしたら…
わたしと出会ったあの時、家に火を点けていた可能性も!」
_「いやいや。あり得ないか~」
それでは、火を点けてから時間が経ちすぎている。
万が一、トーマスが家々に火を点けることが出来たとしても、
村長を殺す時間は、無い。
家に火を点けて、村人に気づかれず村長を殺害できる人物なんて…
_「・・・!一人、居た」
息を上げ、隙を窺う両者に、窓から太陽の光が当たる。
_「はぁはぁ。そろそろ毒針切れかな?」
_「はぁはぁ。そうだな。そろそろだ」
_「?」
_「凄いよ、あんた。針を避けながら、ナイフで切りつける」
_「お陰様で、全身、血だらけだ」
_「その傷で、よく立っていられるね?」
_「悪いが、今ここで、死ぬわけにはいかない」
_「?。村長を殺せば、君の復讐は、終わりだろ?」
_「俺は…あの女を殺すまで、死ぬわけにはいかないんだよ!」
ルイに向かい走りだす。
_「それは…穏やかじゃない話だね!」
ドスッ。
_「は?」
ルイは、背中に温かな感覚を感じ、足を止める。
そのまま、体の力が抜け、片膝を付く。
_「しまった…」
ルイの背中には、小型のナイフが刺さっていた。
_「くくく、はははは。油断したな!」
_「そうでした。あなたも居たんでしたね」
_「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
ヘレンは、ナイフをルイの体から引き抜き、再び、刺そうとする。
_「ちっ」
サッー。
_「あぁっ!」
ルイは、右手に持つナイフで、ヘレンを切りつける。
反撃にあったヘレンは、ナイフを手放し倒れこんだ。
_「降参ですよね…その傷では、もう避け続けられない」
ヘレンの落としたナイフを拾い、ルイに近づく。
_「やめろ!トーマス」
トーマスとルイの間に、割って入るルイン。
_「ルイン…邪魔しないでくれ」
_「これ以上、無関係な人を傷つけるな!」
_「ルインが、俺のことを話したから、こいつが死ぬんだよ」
_「違う!おまえは…本当のおまえは、優しいやつなんだ」
_「そうかもな。でも、俺を邪魔する人間は”絶対に殺す”」
_「そういう奴だ!」
トーマスの持つナイフが、ルイに迫る。
_「ルイ!」




