5話 証拠は踊る 【フリガナ版】
~登場人物~
主人公~~ベル
貴族の息子~~ルイ
村長~~カール
村人~~トーマス
村人~~キャシー
村人~~ヘレン
壁を抜けて、外に出る。
_「くー、むかつく。あいつ!」
証拠を集めろって…
わたしが、物に触れられないこと分かって、言ってるでしょ!
月が昇り、家の灯りは消え、人は静まる時間。
どうしよう…
村を照らす火が、星空を消す。
_「・・・眩しい」
家を一軒、一軒、覗くベル。
明るい外、暗い家、明るい外、暗い家、明るい外、暗い家。
光と闇の繰り返しで、頭がおかしくなるわよ、これ…
_「あれ?」
上を見上げたベルは、村の外れに建てられた、家を見つける。
_「あんな所に…行ってみよう」
_「おじゃましまっ!」
家の中は、暗くて、よく見えなかった。
しかし、一面が、同じ色に染まっていることは、暗闇でもわかる。
_「まさか…ね」
月の光が、家を照らす。
ベルの目の前に、真っ赤に染まった部屋が、浮かび上がった。
滅多に当たらない、ベルの予想が的中する。
村はずれにある家、血の色に染まった部屋、
ここが…殺害現場だ
ガサッ
_「だれ!」
部屋の影から、物音が聞こえる。
よく見えない…
物音のした奥の方までは、月の光が届いていない。
多分、犯人が戻って来たんだ!近づいて、顔を見ておかないと…
ベルは、音が鳴る方へ、ゆっくりと近づく。
_「!」
そこには、蠟燭を片手に、何かを探す”村長”の姿があった。
_「あ、あったぞ」
村長は、地面に空いた、隠し扉を開き、中から紙を取り出す。
辺りを見回し、燭台を見つけると、紙に火を点けた。
_「あーちょっと!」
あっという間に、燭台の紙は、燃え尽きてしまう。
どうしよう…
見えなかった、何が書いてあったのかな?
いや、そもそも字は読めないし!
だけど、もしあれが大事な証拠だったとしたら…
_「そんなわけ無いか!村長が居たのも、偶然…偶然だよ」
日が昇り、家々から、生活音が聞こえ始める。
_「ただいま~」
_「駄目だったか~」
_「どうして、決めつけるの?」
_「証拠は、見つかった?」
_「…駄目だった」
_「犯人は、この狭い村で、正体を隠し続けているからね。
証拠なんて、残していないか~」
_「じゃあ、なんのために、わたしは…」
_「ベルには、ベルにしか、出来ないことがある」
_「でも…」
_「今から僕は、村人たちに、話しを聞きに行くけど…」
_「ベル。付いて来てくれる?」
_「うん…」
早速、私たちは、村長の家へと向かった。
_「おい。これ…」
_「やっぱり、あの女が…」
村長の家の前では、村人たちが集まり、壁を見て語り合っていた。
_「村長が、死んだのかな?」
_「それは無いよ。昨夜、村はずれの家で、村長に会ったから…」
_「へぇ~」
_「ベル。ちょっと、見て来てよ」
_「え、この人混みの中を?」
_「ベルにしか、出来ないことだよ?」
_「う、うん」
・・・何か違う気がする。これが、私にしか出来ないこと⁇
ベルは、人混みをすり抜けると、壁に書かれた文字を見つける。
_「こ、これって…」
_「どうだった?」
_「壁に、文字が書いてあった」
_「なんと?」
_「わたし、字が読めないから、わからなかった」
_「・・・そう」
_「で、でも!村はずれの家と、同じ赤色だったと思う」
_「赤?なんの話?」
_「あれ、言ってなかった?」
呆れた顔で、こちらを見る、ルイ。
その時、家の中から、村長が出て来る。
_「な、なんだこれは⁈」
〖次はお前だ‼〗
_「だ、誰だ。こんな悪戯をしたのは!」
_「村長」
_「お前か!」
_「僕ではありませんよ」
_「あ、や…これは、失礼しました。なんでしょうか」
_「この場に居る村の者に、事件について、聞き取りをしたいのですが」
_「は、はい。分かりました。でしたら、私の家をお使いください」
_「では、部屋を一室、お借りして、一人ずつ、話しを聞いていきましょう」
_「皆の者。犯人を捕まえるため、協力してほしい」
_「まあ、解決できるなら…」
_「協力ぐらいなら…」
村長の家に、列を成す村人。
ルイが一人ずつ話を聞いていく。
_「入れ!」
_「名前は?」
_「トーマスです」
_「この村には、何時から?」
_「生まれた時から…です」
_「事件について知っていることは?」
_「う~ん。
夜は、交代で見張りを立てているけど、犯人の姿を、誰も見ていないんだよ。
不自然だよな?あ、です」
_「犯人に心当たりは?」
_「俺は、父も母も人狼に殺された。犯人がわかっていたら、殺してる!」
_「・・・そうだね」
_「つぎ」
_「名前は?」
_「グスッ。キャシーです」
_「この村には、何時から?」
_「5~6年前。隣村から、仕事を求めて、家族と一緒に…」
_「被…彼とは、何時から?」
_「2年前に、この村で出会いました。夫も、別の村から移住者でした」
_「事件について知っていることは?」
_「・・・私のせいなんです。
グスン。私が、欲しいって言ったから。ウゥ~」
_「ちょっと!この人は、大切な人を亡くしたばかりなんだから、
事件のこと、思い出させないであげてよ」
_「あなたにとっては、辛い記憶かもしれない。
でも、犯人を捕まえるために聞くよ?犯人に心当たりは?」
_「そうですよね…あ、そういえば!
最初に亡くなった、ヘレンさんの夫も、身体が二つになっていて…」
_「なっていて?」
_「ちょっと!また」
_「誰がこんな事を!って、私は思ったんですけど、
村長が、『人狼だ!人狼の仕業だ』って言い出したんです」
_「・・・なるほどね」
_「つぎ」
_「お名前は?」
_「カールです。村長をしています」
_「事件について知っていることは?」
_「何も知りません。調べてもいません」
_「犯人に心当たりは?」
_「…ありません」
_「最初の事件を見て、犯人は人狼だと、村長が…」
_「あ、それは…その…し、死体を見て、そう思ったんですよ」
_「怪しい…」
_「18年前の事件についてお話を…」
_「18年前の話は、しないでくれ!」
_「あ。わ、私は、妻を亡くしました。
当時を思い出したくても、思い出せません」
_「そうですか」
_「つぎ」
_「お名前は?」
_「ヘレンです」
_「何時から、この村に?」
_「ずっとです」
_「事件について知っていることは?」
_「何も知りません」
_「18年前の事件については?」
_「それは、知っています」
_「お話し頂けますか」
_「はい。まず、トーマス君の母親が亡くなりました。
落石に巻き込まれて、顔が潰れていました」
_「つぎに、私の姉が亡くなりました。
川に流され、死体は残っていませんでした」
_「最後は、ルイン君の母親が亡くなりました。
死体は、ばらばらになっていました。
人狼の仕業だと、村長が…」
_「ルイン?」
_「ルインとは?」
_「聞いていませんか?村長のご子息ですよ」
_「ルインは、今どこに?」
_「村を出て、都へ。それ以来、村には、帰って来ていないと…」
_「そうですか」
その後、村人たちの話しを聞いたが、有力な情報は出てこなかった。
_「手掛かりは…」
_「犯人は、村長だよ!」
_「なぜ?」
_「怪しかったから」
_「殺害した方法は?動機は何。村長は、何か得をしたの?」
_「・・・」
_「まだ、確信は無いか…」
_「いいよ。ベルは、村長を見張っていても」
_「ルイは?」
_「僕は、赤い家を見てくるから」
_「わたしに、聞けばいいでしょ?」
_「自分で見たほうが、早いよ」
_「あっそう。わたしが見た村長の話も、聞かなくていいんだ?」
_「うん」
_「は?」
_「あ。一つだけ、お願いが」
_「なに!」
_「村長の息子を捜しておいてよ」
_「自分で捜したほうが、早いんじゃないの!」
_「お願い。僕が頼れるのは、君だけなんだ」
_「・・・嫌」
_「任せたよ~」
_「ちょっと!」
私を置いて、ルイは、行ってしまった。




