2話 幽霊は踊る 【フリガナ版】
~登場人物~
主人公~~ベル
貴族の息子~~ルイ
_「・・・」
問いかけに答えない私を無視して、死体の服を剝ぎ取り始めた。
四肢を一本、一本、切り落とし、麻袋に詰め込んでゆく。
最後に、頭の付いた胴体を、麻袋の横に並べ、
上から返り血の付いたコートを被せる。
シュッ。シュッ、ボワッ
ルイは、コートに火を点け、何気ない笑顔でこちらに話しかけてきた。
_「まだいたの?帰りなよ。自分の居場所へ」
_「あ・・くっ」
バッ
火事の灯りが広がる路地を、全力で走る。ルイの姿が見えなくなるまで…
_「わたしに、帰る場所なんて無いのに…」
_「ルイに殺された。だから、姿が見えていたんだ」
_「ルイに殺されたことを恨んでる。いいえ、そうは思わない」
_「ルイを殺したい。出来ることなら、この手で…」
ピタ。
_「わたしが幽霊になった理由・・・殺人鬼を止めるため!」
火が上がる路地に戻り、ルイを探した。
_「流石にもういないか。逃げた…屋敷?あの家!」
消火活動で人が集まりだした路地を通り、ぼろぼろの家に向かうベル。
_「おじゃまします」
空き家だと思われた家の中は、立派な家具が揃い、
外見とはかけ離れた豪華な内装が施されていた。
_「ここ、空き家じゃない。ふつうに住みたい」
_「まだ付いて来ていたのか」
返り血を洗い流したルイが出て来る。
_「また、そんな姿で。風邪ひくよ」
_「・・・悪いが、俺の前から消えろ。
無害とは言え、周りをうろつかれると迷惑だ」
_「いいえ。消えない。わたしが、あなたを止とめると決めたから」
_「・・・その様子だと、消えるつもりは無い様だな」
_「ならせめて、名を付けないと不便だ」
_「名前…どう伝えればいいかな」
_「丸顔だから、パフィーでいいか」
_「はっ?あなた、そんなに死にたいの」
_「だめか…」
_「あ!ベットの上でキル(死んだふり)でベル。これでどう?」
_「・・・もう寝るのか」
_「伝わらない」
_「では、俺も休むとしよう」
_「えっ!」
ゴソゴソ
ルイは、向かい合った形でベットに眠る。
_「別に二人で寝なくても…わたしは、存在しないんだから…」
窓から零れた朝日が、顔を照らす。
_「う~ん」
_「今日も花を売らなきゃ。お腹がすい…て無い」
_「そうだ。幽霊なのに、寝てた…あれ?ルイは」
家の中を捜すが、ルイの姿は見当たらない。
_「・・・逃げた⁉」
_「ふふふ。既に、屋敷の場所は把握していると言うのに」
_「遅かったな。もう昼だぞ」
_「はあ、はあ、はあ。街から歩いて来たんだから、時間は掛かるでしょ」
_「悪いが、遊んでいる時間は無い」
_「あそ…」
_「これから、商会の集まりに参加しなければいけない」
_「そ、それは…パーティー!」
_「一度、行ってみたかったの。
上流階級の人間だけが参加を許される、憧れの場所」
_「その顔…楽しいものでは無いぞ」
_「幽霊になって夢が叶うとは」
_「付いて来るつもりか」
_「はい!」
_「はー。来るなと言っても聞かないだろ。余計なことだけはするなよ」
_「それは・・・どうしょう?」
_「おい。何を企んでいる」
_「そろそろお時間です」
_「わかりました」
_「・・・」
_「これがパーティー?イメージと違って小さい」
_「主催の商会は、歴史が浅く、商いも小さい。この規模が妥当だろう」
_「あの人物が・・・」
ルイは、目の前を通った来賓者の娘を目で追う。
その目は、どこか悲しげで鋭い、複雑な感情を物語っていた。
_「ルイ?」
_「いや、なんでも無い」
私たちは、パーティーを楽しんでいた。尚、わたしは見ているだけ。
_「つまらない。ルイは、ずっと作り笑いだし…」
_「ベル。時間だ、帰るぞ」
_「あ、うん・・・うん‼」
_「今、わたしの名前を…」
_「ああ。それがどうした?」
_「・・・会話、してる」
_「声は、昨夜から聞こえていた」
_「聞こえないふりをしてたの…」
_「…そうだな」
_「最低」
_「もういい。あなたとは、口きかないから!」
_「それは、駄目だ!」
_「お前は、今日から俺の話し相手になるんだ。いいな?」
グイ
_「うっ。な、なんでそんなに」
_「それは・・・!」
_「すまん。先に帰っていてくれ」
_「ちょっと」
少し離れた所で、ルイは、楽しそうに談笑をしている。
_「あの娘は…」
_「それでは、また」
_「ルイ。今の人は?」
_「・・・」
_「次の”標的”なんでしょ…」
_「今夜、彼女は死ぬ」
_「今夜…あの時、会う約束を」
_「説得…は、出来ないと思う」
_「でも…物理的には、止められない」
_「あ~もう」
_「わかりました。お任せください」
_「あれは…!」
日が暮れ始め、刻一刻と、夜が迫っていた。
_「ルイ、屋敷の人が探していたよ」
_「誰が探していた?」
_「こっち。案内してあげる」
_「・・・そうか」
外にある物置小屋に案内する、ベル。
_「この中に、入って行ったと思う」
_「ここは、物置だ。使用人は出入りしないと思うが」
_「ぎくっ。いや、ここだよ。この目で見たもん」
_「そうか…」
_「誰も居ないようだが」
バタンッ。ガチャ
_「ふふふ、残念でした。あなた、ここに閉じ込められたの!」
_「・・・執事を利用したのかな?」
_「そう。この時間に、ここから物を運びだすと聞いて、
あなたを閉じ込る作戦を思いついた」
_「やられたよ。これでは、今日の待ち合わせに、間に合わない」
_「ベル。僕の代わりに、”行けない”と、彼女へ伝えて来てくれないかい?」
_「いいわよ。わたしが伝えに行ってあげる」
ベルは、浮かれて待ち合わせ場所へと向かった。
_「やった。これであの娘は、殺されずに済む」
_「あれ?でも、わたしの姿は見えないはず…」
_「声も…聞こえないから伝えられない。騙された!」
ベルは、目的地へ走りだす。
_「人影…が二つ‼」
ドサ。
人影が一つ、倒れる。
昼間より美しくなった彼女の顔は、目を大きく開き、天を仰いでいた。




